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しおりを挟む1年半ぶりに王都にやって来たロレーヌはどこか緊張しているように見えた。
そんなロレーヌの手を握り、ドリューがそばにいることを思い出させる。
ホッとしたように表情を和らげる妻は本当にかわいい。
エントス侯爵家に宿泊させてもらうことになっており、夜会は明日だった。
息子のバーティは今回はお留守番だ。
ロレーヌは連れてきたがったが、道中の宿で泣かれると迷惑をかけることになる。
もう少し成長してから、侯爵はともかく夫人には会わせてあげたいものだ。
夜会が始まる少し前にロレーヌの兄が話をしたいとやってきた。
ちなみに、まともに挨拶をしたのは初めてだった。
「時間があまりないので、手早く話します。
父が申し訳ありませんでした。
ロレーヌの再婚話は諦めさせましたので、もうご迷惑をお掛けすることもありません。」
「そうですか。では領地への嫌がらせも?」
「……はい。もう取り下げています。捕らえていますか?」
「ええ。放火に器物破損に盗賊紛いに、といろいろとありました。
幸い、警戒しておりましたので軽い物の被害で済んでます。
領民に被害が出なくて良かったですよ。
大きな被害になると、詳しく調査を依頼しなければならないところでしたからね。」
「……被害を受けた方々に迷惑料をお支払いします。
金で片付けようなどと不誠実なことはわかっていますが、大事にはしないでいただきたく。」
「わかっています。あの者たちを引き取っていただけますか?
依頼を取り下げたと納得させた後のことはお任せしますので。」
「わかりました。ありがとうございます。
それから、ロレーヌが婚約破棄された慰謝料をお渡しします。今更ですが持参金代わりに。」
「わかりました。受け取ります。」
慰謝料なら拒否することもないしな。このロレーヌの兄はまだ話がわかる。
今後、長く付き合うのは親より兄の方なのだから。
「ロレーヌは元気ですか?」
「ええ。息子の成長を毎日楽しんでいますよ。
この後の夜会で少し会ってやってください。おそらく、驚きますよ。」
この兄も明るいロレーヌを子供のころ以来見ていないのではないかと思う。
夜会が始まり、ホイラン子爵夫妻として参加する。
ロレーヌ自身は夜会に出席した回数は少ないらしい。
それもそうか。16歳で結婚したんだ。
あまり夜会に参加しないドリューもロレーヌに会ったことがなかったのだから。
そのロレーヌも来月には18歳になる。
結婚した頃よりも美しくなったロレーヌを見る者も多く、私の妻だと主張したくなる。
サイモン夫妻に会って話をしていた時、ロレーヌの兄がこちらを見て驚いていた。
「ロレーヌ、兄上があちらにいる。少しだけ会おう。」
「……はい。」
「固くならなくていい。兄上は侯爵を止めてくれたんだから。」
「そうね。」
ロレーヌの兄の元へ行くと、二人とも気まずい雰囲気になる。
「ロレーヌ、久しぶりだな。元気そうだ。」
「はい。お兄様も。」
「……幸せか?」
「ええ。とても。」
ロレーヌの表情で嘘ではないとわかるはずだ。
「ならいい。たまには母に顔を見せてやれ。」
「はい。」
……まあ、なんと淡泊な兄妹の会話なのか。こんなものか?いや、私と妹はもっと話している。
やっぱり、この兄妹の育った環境のせいだろうなぁ。
目的の夫婦仲は問題がないというところを見せつけて、夜会は無事終わった。
ロレーヌの兄のおかげで、離婚・再婚問題も領地の嫌がらせ問題も片付いた。
ようやく、ロレーヌとの結婚がいろんな人に認められた気がした。
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