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しおりを挟むそれから2年後、娘が誕生した。
バーティと同じ、髪と瞳の色はドリュー似で顔立ちはロレーヌ似のきれいな女の子。
やばいなぁ。嫁に出したくないよ。
ドリューとロレーヌの年の差婚は、婚約解消された令嬢たちに希望を与えたらしい。
なぜなら、子爵・男爵家の次男や三男には独身も多いから。
修道院に行くくらいなら、爵位を継げない令息でも幸せに暮らせたらいい。
10歳くらい上の令息なら、もう生活基盤ができているので安心だ。
ということで、結婚の打診が増えたらしい。
非のない令嬢が修道院に行かずに済むことは、いいことだと思う。
ロレーヌの母は、子爵領に遊びに来てはドリューの母と孫の世話をして楽しんでいる。
王都の生活に向かない夫人も結構いるのではないか。
ロレーヌがこの子爵領での生活を気に入ってくれてよかった。
ある夜、寝ようとベッドに入った時にロレーヌがいきなり聞いてきた。
「ねぇ、ドリュー様。前の奥様ってどんな方だったの?」
………結婚してもう5年。今更どうしてそんな話が出るのか。
「あのね、使っていない部屋で前の奥様が使ってたっていう物を見たの。
そう言えば、全く聞いたことがなかったと思って。」
………なるほどね。彼女の痕跡はそこにしかない。
「彼女とは分かり合えなかった。
婚約の時から打ち解けてくれなかったけれど、結婚後もそうだったんだ。
結婚してひと月経った頃、そこで理由を聞いた。
私の2歳下だったんだけど、学生時代に好きな人がいたらしい。
恋人だったって。純潔もその男に捧げたって。
初夜で純潔じゃないことには気づいたけどね。
それを結婚後に言うんだ。今更どうしたいんだって思ったよ。
相手も婚約者がいたらしく、その人と結婚したらしい。
だけど、前の妻はなかなか割り切れなかった。
元恋人が結婚して幸せで子供ができて………
自分を愛しているはずなのに、嫌々結婚したはずなのにって。
結婚して2年経った頃かな。
夜会で元恋人と奥さんとの仲睦まじい姿を目の当たりにしてショックを受けた。
泣き暮らしていたよ。
何年も閨を共にしていないから、離婚を切り出した。
自分の今後を決めるから待ってくれと言われてしばらく待った。
結婚して5年後かな?彼女は王都で亡くなった。
死因は知らない。彼女の父親から連絡があった。葬儀も終わってた。」
「え?夫だったのに?」
「そう。まだ離婚はしていなかったのに。でも正直、肩の荷が下りた気分だった。
泣き暮らす彼女に闘病していた父もそれを助けていた母も困っていたから。」
「だからすぐに再婚はしなかったの?」
「父が亡くなって、爵位を継いで忙しかったんだ。独り身が気楽だったし。
でも、ロレーヌと結婚できたから独り身でいた甲斐があったよ。」
「私ね、あなたに初めてあった時『この人がいい』って思ったの。
父や元婚約者と違う優しい雰囲気にホッとして。
即結婚って言った父には驚いたけど、あなたに連れて帰ってほしかったから感謝したわ。
私、本当に幸せよ。ここが大好き。居場所ができたって思った。
最初からずっと思ってたけれど、あの頃はまだ頭で考えることが多くて。
いろんなことを言葉にすると、あなたは喜んで叶えてくれたわ。
こうやって思いを伝えるって大事なことよね。
愛してるわ、ドリュー様。」
「愛してるよ、ロレーヌ。今夜もいいかな?」
12歳も年下の侯爵令嬢との結婚なんて、普通の子爵にはあり得ない。
何人もの間を介して紹介された、そんな奇跡で幸せになれたことに感謝した。
<終わり>
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