あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

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部隊長であるデュール伯爵は、消沈したブレイズが出て行った後、ドッと疲れが押し寄せた。

今回のことは自分の失態でもあると認識している。

第三部隊長となって三年、隊員のことを把握しきれていなかった。
いや、除け者にされていたと言うべきか。
 
アイリーンのことは、前任者から腫れ物に触るような扱いでいいと言われていた。
彼女の扱いに悩み、騎士団ではある程度は彼女の自由にさせているのだ、と。

彼女は囮捜査を打診されて一度断った。
しかし、『やはり女は使えない』と誰かが言ったのを聞いたらしく、やはり囮を引き受けて手柄を立てようと指示を無視した。
そのため、ある部隊が掴まったアイリーンが犯されるのを待ってから突入をしたのだ。

犯罪組織の罪を重くするためと、アイリーンに騎士を辞めさせるために。

だが、アイリーンは騎士を辞めなかった。

騎士団では厄介者となった。


そんなアイリーンのいる部隊の隊長となったが、特別扱いをする気はなかった。

しかし、仕事以外のこと、つまり、酔うとキスをすることは知らされていなかった。

おそらく、『その場にいればわかる』ということだったのだろう。

親睦会にも何度か最後の方まで参加したことはあるが、彼女に乱れた様子はなかった。

要するに、アイリーンは相手を見て行動していたのだろう。
咎められそうな相手の前では、醜態を晒さないようにしていたのだ。

確信犯である。

隊員を困らせて、遊んでいたのだ。 

しかし、ブレイズが入隊して彼女のキスを引き受ける役割になった。
他の隊員がブレイズに押しつけたのだが、ブレイズが道徳観のない男だったからでもあった。
 
部隊を移りたいと言ってきた騎士がいた。
第三部隊は合わない、と。
その男がアイリーンにキスをされて拒絶した男だったらしい。

その時、彼からもっと詳しく聞いておくべきだったのだ。
彼が理由を話さなかったのは、私も知っていて放置していると思っていたに違いない。

部隊長としてちゃんと把握できておらず、情けなく思った。

 

数日前、イーサンから驚くべきことを聞かされた。

ブレイズの妻メルリーが、お茶会で倒れたが容体はどうなのか?と。

妻からは、何の報告も受けていなかった。

  
イーサンは、自身の妻ナディアから、メルリーが『流産』したのではないかと聞かされたらしい。
メルリーは精神的ショックを受けるようなことを言われた後、倒れた、と。

ブレイズに直接聞ける内容ではなく、それにあのお茶会を問題視する意味でも、イーサンは部隊長に聞いたのだ。

しかし、自分は何も知らなかった。そのことが問題だった。

 


屋敷に帰り、妻に問い質す前に侍女長を呼んだ。


「隊員の妻を呼んだお茶会で何があった?」


侍女長はギクッとした顔をした。


「お前の主人は誰だ?」

「デュール伯爵です。」

「なら、話せ。」


妻から口止めされていたようだが、侍女長は前回のお茶会のことだけでなく以前にも遡って話をした。


「つまり、ここ一年以上はそのメルリー夫人をやり玉にあげていたということだな?」

「はい。」
 

自分の妻が、そんな陰湿なことをしているとは思いもしていなかった。


 
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