18 / 33
18.
しおりを挟む社交を再開して、気になった貴族が三人。
ブランシェと共にいたことになっている赤子のことを詳しく聞きたがったから。
そして特に気になったのが、カールストン公爵。
ブランシェが行方不明になったあの夜会を開いていた彼が、聞いてきたからだった。
騎士団の調べでも、カールストン公爵家の名が挙がっていた。
「カールストン公爵夫人が死産?」
「はい。夫人の実家が産まれた報告がないのを不思議に思い、死産を知ったそうです。」
カールストン公爵家が知らせなかった。
何か言ってくるまで隠したかった?
それとも単に、つらくて口にできなかったからかもしれないけれど。
騎士団も面と向かって調査をしていない。
グレースの親を探していると知られたくないから。
なので、使用人からそれとなく聞くか、夫人の姿を見て出産を終えたか確認するしかないらしい。
そこに愛人調査まで加わると、人手が足りないらしい。
騎士団は、禁術を施したのは死んだカル・イーストで、依頼者は高位貴族とみている。
ブランシェが監禁されていた家には禁術の書物が見当たらなかったため、依頼者が隠し持っているはずだと思い、再びこのような事件を起こさせないために、依頼者を探しているのだ。
依頼者、つまり、グレースの両親を。
「カールストン公爵からは何を聞かれましたか?」
「……グレースの性別や髪色、目の色を。」
「公爵が依頼者であれば、引き取りたいと言ってくるかもしれませんね。」
そうかもしれない。
そうなると、ますます怪しい。
公爵という地位にある者が、どこの誰の子かもわからない赤子を引き取りたいと言うわけがない。
夫人が死産だったからといって、グレースでなくとも親戚の子を養子にする方が血筋は保てるのだから。
それでも、グレースとカールストン公爵が似ている気がしてきて、心がざわついていた。
その夜、義両親にも騎士から聞いたことを話した。
「……カールストン公爵か。」
義父は眉間に皺を寄せている。
カールストン公爵はブランシェやアンゼムよりも七歳ほど上で関わりがほとんどない。
しかも、二年ほど前にいつの間にか結婚していたといった感じで、結婚式を大々的に挙げていなかった。
前公爵夫妻は十年前に息子に爵位を渡してから領地で暮らしていて王都には来ないらしい。
そのため、ブランシェが行方不明になったあの夜会はカールストン公爵家で久しぶりに開催されたものだった。
「夫人は、伯爵家から嫁がれた方でしたよね?」
なんだか、影の薄い公爵夫人だった覚えがある。
「なかなか結婚しなかった公爵が、婚約発表もなく結婚していた。十歳下の令嬢とな。」
「本当かはわからないけれど、お金で妻を買ったんじゃないかって噂もあったわ。」
あ、そんな感じの噂を聞いたかも。
パッティを産んだ頃だったから、あまり情報を仕入れてなかったときだわ。
なんでだか、義両親の空気も口も重くなった気がする……
「公爵様にはずっと婚約者がいなかったのですか?珍しいですよね、独身で三十近くまでって。」
ブランシェの問いに、義母は一旦目を閉じ、ため息をついてから目を開けて言った。
「王太子妃殿下がカールストン公爵の婚約者だったの。」
……なるほど。口が重くなったわけだわ。
1,534
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。
夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。
ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。
一方夫のランスロットは……。
作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。
ご都合主義です。
以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。
【完結】巻き戻したのだから何がなんでも幸せになる! 姉弟、母のために頑張ります!
金峯蓮華
恋愛
愛する人と引き離され、政略結婚で好きでもない人と結婚した。
夫になった男に人としての尊厳を踏みじにられても愛する子供達の為に頑張った。
なのに私は夫に殺された。
神様、こんど生まれ変わったら愛するあの人と結婚させて下さい。
子供達もあの人との子供として生まれてきてほしい。
あの人と結婚できず、幸せになれないのならもう生まれ変わらなくていいわ。
またこんな人生なら生きる意味がないものね。
時間が巻き戻ったブランシュのやり直しの物語。
ブランシュが幸せになるように導くのは娘と息子。
この物語は息子の視点とブランシュの視点が交差します。
おかしなところがあるかもしれませんが、独自の世界の物語なのでおおらかに見守っていただけるとうれしいです。
ご都合主義の緩いお話です。
よろしくお願いします。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
夫が愛人を離れに囲っているようなので、私も念願の猫様をお迎えいたします
葉柚
恋愛
ユフィリア・マーマレード伯爵令嬢は、婚約者であるルードヴィッヒ・コンフィチュール辺境伯と無事に結婚式を挙げ、コンフィチュール伯爵夫人となったはずであった。
しかし、ユフィリアの夫となったルードヴィッヒはユフィリアと結婚する前から離れの屋敷に愛人を住まわせていたことが使用人たちの口から知らされた。
ルードヴィッヒはユフィリアには目もくれず、離れの屋敷で毎日過ごすばかり。結婚したというのにユフィリアはルードヴィッヒと簡単な挨拶は交わしてもちゃんとした言葉を交わすことはなかった。
ユフィリアは決意するのであった。
ルードヴィッヒが愛人を離れに囲うなら、自分は前々からお迎えしたかった猫様を自室に迎えて愛でると。
だが、ユフィリアの決意をルードヴィッヒに伝えると思いもよらぬ事態に……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる