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しおりを挟む騎士3人は再び伯爵家を訪れた。
夫人と直接会うのは三度目。
一度目は身元の確認で訪れた時。
二度目は遺体を教会で引き渡した時。
そして今回だ。
「今日は、亡くなったご主人の死に関して疑問があり、いくつか質問させていただきます。」
「あら。事故ではないとお疑いなのですか?」
「まぁ、それは疑惑が晴れるかどうかで判断させてもらうことになりますが。」
「そうですか。私だけですか?義両親もですか?」
「おひとりずつでもいいのですが、お揃いですのでここで質問させていただいても?」
「ええ。どうぞ?」
「では。夫人には愛人がいますか?」
「愛人?いえ。おりませんが。」
「そちらの護衛の方と親密に見えるとの話を耳にしたのですが。」
リラベルの後ろに立っている護衛をちらりと見ながら騎士が質問した。
「彼とは亡くなった夫との結婚前からの付き合いです。もう10年になりますね。
護衛であり侍従であり仕事も手伝ってくれています。
疑問にお答えするならば愛人ではありませんでしたが、彼と再婚はします。」
「……もう再婚をお決めになっておいて、愛人ではなかったと?」
「ええ。」
ここで義父が口を出した。
「彼はオーリスと言って、偶然うちの遠縁なんだ。
亡くなった息子のルシアスとはハトコになる。
孫たちはまだ小さいし、中継ぎが必要になるだろう?
リラベルは投げ出した息子の仕事もやっていて……
つまり、次期当主の仕事をリラベルとオーリスがやってくれていたんだ。
オーリスを養子にしてリラベルと再婚してもらう。
それが伯爵家と孫たちのためになるとお願いしたんだ。」
「そうでしたか。愛人などと失礼なことを申しました。」
「いえ、兄のような存在でしたので頼ることも多く距離が近く見えたのでしょう。」
愛人がいたのは勘違いだった。
「では、ご主人の葬儀の時に現れた妊婦の女性。会ったのは初めてですか?
ご主人から遊び相手が妊娠しているとか、あなたと離婚するというような話はありましたか?」
「あぁ、あの女性。葬儀で初めて会いました。
主人からは離婚を切り出されたことはありませんし、妊娠に関しても主人の子ではありません。」
「ですが、ご主人と体の関係があった女性なのですよね。
ご主人の子供ではないと言い切れないと思いますが。」
ここで再び義父が口を出した。
「いえ、言い切れるのです。
息子が遊び始めた数年前、私は息子に選択を迫りました。
子種を殺すか、廃嫡を選ぶか、と。
仕事をリラベルに押し付けて遊び歩く息子を追い出そうと思いました。
リラベル以外の女性との間に子供が生まれても伯爵家の子供と認めるつもりはない。
リラベルと孫たちがいれば、役立たずの息子が出て行ってもよかった。
息子は不能になる可能性もあるのに、子種を殺すことを選びました。
しかし、これは私たちにとって悪手でした。
息子の遊びはひどくなってしまった。ご存知でしょうが、所構わずといった感じで。
ですので、財産目当てで訪れたあの女性にも、息子の子種が死んでいることを話しました。
勘違いだったと逃げていきましたよ。」
「そうでしたか。そんな経緯が……失礼しました。」
「いえ。主人も妊娠しないことは女性側にも伝えていたようですが言い忘れることもあったのでしょう。」
「それに、仕事をしてくれるリラベルと離婚なんて息子が考えるわけもない。」
離婚も遊び相手の妊娠も勘違いだった。
残る質問は御者と御者の娘のことだけになってしまった。
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