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しおりを挟む3か月後、ミーシャは妊娠した。
悪阻がひどく、研究所は退職することにした。
おそらく、出産後は子供のそばにいたいと思うだろうから。
目が良くなる薬を作りたくて研究員になった。
子供を預けてまでどうしても続けたいと思うほど熱意もなかった。
子供が大きくなったら、また薬師として働いたりするかもしれないけれど。
産まれたのは、女の子だった。エレーナと名付けられた。
びっくりするくらいキレイな子で、みんなから可愛がられた。
特にお義母様とお義姉様は自分が産みたかった女の子の代わりに、エレーナを着飾らせて楽しんでいた。
ミーシャ自身は流行に疎いし、あまり服装に興味もないのでお任せ状態。
結局、侯爵邸と街の家を行ったり来たりと半々くらいで暮らす状態になっていた。
結婚後も出産後も、侯爵家の護衛は派遣されたままで乳母までいる。
「あの子、平民の生活なんて無理よね。」
「そうだなぁ。侯爵家に慣らされすぎたな。
だけど、無防備な状態で2人を家に置いておくのは不安過ぎて実家に甘えたままだ。
兄上は侯爵家の養女にしてもいいと言うし、俺が子爵位を貰うなら子爵令嬢だ。
俺たちが社交嫌いだからといってエレーナを平民にはできない。」
「攫われて娼館や愛人は絶対ダメよ!」
「ははっ。ミーシャはよほど自分がそう言われたのが怖かったんだな。
うん。とりあえず、貴族の教育は受けさせて、学園入学前にどうするか決めるか。
難しいな。侯爵令嬢だと相手を選べるかもしれないけれど、高位貴族になる。
子爵令嬢だと政略結婚で断れないかもしれない。
あぁ、親バカだとは思うが、エレーナの可愛さは最強だろ?」
しかし、6歳になる頃からエレーナへの婚約申し込みが増えてくることを、カーティスとミーシャはまだ知らなかった。
その原因が、侯爵位を継いだ兄の2人の息子のせいだとも。
あちらこちらでエレーナの可愛さを語った2人が、侯爵邸に友人を招いたことが原因だということを。
大好きな従兄弟2人に連れられてエレーナが顔を見せてしまい、息子に付き添ってきた母親たちが一目でエレーナを気に入ってしまうことになろうとは思いもしない。それはまだ少し先のこと。
エレーナが誰を選ぶか、あるいは侯爵とカーティスが誰をエレーナの相手に選ぶかはまだわからないけれど、エレーナにも幸せな結婚をしてほしい。
ミーシャは、アロイスと出会う前までの、誰とも話さない寂しさを今では全く感じることはない。
カーティスとエレーナが、侯爵家のみんながそばにいてくれるから。
自分と同じように、エレーナも良い出会いに恵まれて幸せな結婚をしてほしいと願う。
「どうかしたか?」
「ううん。カーティス様と結婚して、エレーナが生まれて、幸せだなぁって思ってたの。」
「俺もこんな幸せがあるなんて思いもしなかった。じー様に感謝だな。」
笑い合って、顔を寄せてキスをした。
<終わり>
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