誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん

文字の大きさ
8 / 18

8.

しおりを挟む
 
 
ただよくわからないのが、マーキュリーの目的だ。

マーキュリーが、僕が娼館に出入りするところをアイリーンに見せるために手紙を送った人物だったとする。
不貞を疑われた僕はアイリーンと離婚するかもしれないと考えるだろう。

だが、離婚したとしても僕がサドルデン伯爵令嬢と再婚するとは限らないのだ。
というか、彼女との結婚は絶対にないと言ってもいいだろう。
彼女は僕にとって、言葉の通じない苦手意識のある令嬢なのだから。
 
断っても断っても自分に都合の悪いことは受け入れない。そんな令嬢だから。


マーキュリーの利益になるようなことは何もない。
彼は純粋に噂を信じて、僕を心配して、協力しようとしてくれていただけなのか?

そう信じたい気持ちもあるが、どこか、サドルデン伯爵令嬢と繋がっているような気がして信じきれなかった。

直接会って確かめるしかない。

『マーキュリーが小耳に挟んだというお茶会での僕らの閨事情の話は誰から聞いたんだ?』と。



マーキュリーに連絡を取り、誰から聞いたのかを問い詰めた。


「ええっと、誰だったかな。カールだったか?サンドルだったか?忘れたよ。」

「カールとサンドルか。わかった。彼らが誰から聞いたのか確かめてみるよ。」

「あっ!違うかもしれない。特定の知り合いじゃない。
 喫茶店かどこかで近くの席から聞こえてきたんだったと思う。」

「盗み聞きした内容で僕たちの話だとわかったのか?
 話をしていたのは男か?女か?どっちだ?」

「ええっと、女が男に話してたんだ。そうだ。お茶会の参加者じゃないか?」

「そのお茶会、お前の従妹のお茶会だったようだな。
 参加者のリストを手に入れてくれないか。その中の誰かが噂をしているんだから。」

「え……参加者を知ってどうするんだ?」

「どうもこうも。誰がどんな目的で嘘の噂を流したのか突き止める必要がある。
 お前は従妹から噂話を聞いたんじゃないんだろう?協力してくれるよな?
 じゃないと、サドルデン伯爵家にも悪影響だぞ?
 悪意のある嘘の噂を流すような令嬢をお茶会に招待したんだからな。」

「……どうして悪意のある嘘の噂だったと思うんだ?」

「アイリーンが僕との閨事情などお茶会で語っていないからだ。」


アイリーンに確かめてはいない。
だが、そんなことをアイリーンが言うはずがないということは確信している。


「どこの誰がどういう目的で嘘の噂を流しているのかは知らないが、絶対許さない。」

「ええっと、多分、噂はそんなに広がってないよ?
 俺もあれ以来聞いていないし。心配ないんじゃないか?」

「そういう問題じゃない。実際お前は耳にして僕に言ってきたんだ。
 同じように喫茶店で聞いていた人がどれだけいるかもわからない。
 お茶会の参加者のどの女性が悪意があるのかを探し出して、親あるいは夫に伝える必要がある。」

「そ、そこまでするのか?」

「当然だろう?アイリーンはそんな噂が社交界で出回っていると知って寝込んでいる。
 愛する妻に危害を加えたんだ。絶対に許さない。」


僕はあたかも目の前にいるマーキュリーが犯人の一人であるかのように睨みつけた。
マーキュリーは怯むような戸惑いを見せたが、誤魔化すように話題を変えた。


「大丈夫だ。お前たちが仲の良い姿を見せたらそのうち忘れるような噂だ。
 それよりも、覗いた男の性技は勉強になったか?」

「あぁ、あの男か。あれはお前が選んだ男じゃないんだよな。男娼じゃなくて客だよな?」

「あ、ああ。そうだ。」

「申し訳ないんだが、全く勉強にならなかった。
 女性が不満に思っていることも気づいていないし、それこそ演技しているのにも気づかない。
 挿入時間に関しては、あの男が短いのか僕が長いのかはわからないが女性は不満そうだった。
 動きに関しても単調だったな。まぁ、それを女性が不満に感じるということが勉強になった。」

「……は?時間が短いって、早いってことか?動きが単調?女性が……演技?」

「まぁ、当たった男が悪かったんだろうな。あの男が勉強するべきだよ。
 もう二度といいからな。人の行為を見ても楽しくもない。途中で帰ったよ。」

「……へ?最後まで見なかったのか?」

「ああ。見る価値もないものだった。予約までしてくれたのに悪かったな。」 


じゃあ、リストが手に入ったら頼む。そう言って別れた。


なぜか呆然としたままのマーキュリーを残して。
 





 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。 その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。 スティーブはアルク国に留学してしまった。 セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。 本人は全く気がついていないが騎士団員の間では 『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。 そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。 お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。 本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。 そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度…… 始めの数話は幼い頃の出会い。 そして結婚1年間の話。 再会と続きます。

【完結】愛してました、たぶん   

たろ
恋愛
「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。 「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

【完結】わたしが嫌いな幼馴染の執着から逃げたい。

たろ
恋愛
今まで何とかぶち壊してきた婚約話。 だけど今回は無理だった。 突然の婚約。 え?なんで?嫌だよ。 幼馴染のリヴィ・アルゼン。 ずっとずっと友達だと思ってたのに魔法が使えなくて嫌われてしまった。意地悪ばかりされて嫌われているから避けていたのに、それなのになんで婚約しなきゃいけないの? 好き過ぎてリヴィはミルヒーナに意地悪したり冷たくしたり。おかげでミルヒーナはリヴィが苦手になりとにかく逃げてしまう。 なのに気がつけば結婚させられて…… 意地悪なのか優しいのかわからないリヴィ。 戸惑いながらも少しずつリヴィと幸せな結婚生活を送ろうと頑張り始めたミルヒーナ。 なのにマルシアというリヴィの元恋人が現れて…… 「離縁したい」と思い始めリヴィから逃げようと頑張るミルヒーナ。 リヴィは、ミルヒーナを逃したくないのでなんとか関係を修復しようとするのだけど…… ◆ 短編予定でしたがやはり長編になってしまいそうです。 申し訳ありません。

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

処理中です...