あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん

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学園を卒業後、俺はシーラとの結婚に向けて進んでいる今の状況が嬉しくてたまらなかった。

しかし、それはいいことばかりではないとすぐに気づいた。

まず、王太子の役割が外されても王子である俺には公務がある。
学生であった時には免除されていたこともしなければならなくなり、時間に追われた。

学んだはずのことができていなくてやり直しさせられたり、訳の分からない仕事を与えられて放置していたら怒りを露わにされたり、『王子に不敬だぞ!』と告げても『こんなことで不敬だと処罰していたら誰もいなくなる』と言われた。

父に報告しても『教えてもらっている立場のお前の態度が悪い』と言う始末。

王族にこんな無礼を働いてもいいのだと思わせている父上が国王として情けないせいだと思った。

俺が国王になれば、こんな態度は絶対に許さない。俺を馬鹿扱いなどさせるものか。

そう思いつつも、毎日失敗しては呆れられる日々が続いた。




そしてシーラはというと、彼女は教育のために王城で暮らしていた。
全額ではないが、費用負担は俺だ。俺のために必要な教育だからと強制された。

淑女教育、王子妃教育を受けているという彼女はいつも疲れていた。

こっそりと部屋を訪れても、盛り上がらない。

そして俺はふと思い出した。

『俺は癒しが欲しくてシーラを選んだんじゃなかったか?』と。

シーラはこれからも王太子妃教育、王妃教育と続く。
学ぶことばかりで疲れているシーラに俺が癒されるはずがないじゃないか。

教育はもう少し減らすべきだ。そう言おう。


あれから1年半が経った今でも教育が終わっていないから俺たちは結婚できていない。
しかも、シーラの子爵家を伯爵家にしてからでないと結婚はできないのではないか?

そう思い、父にシーラの実家を伯爵家にするように頼んだ。


「……お前は何を馬鹿なことを言っているのだ?」

「あの時、言っていたではないですか。教育と爵位って。教育は頑張っています。疲れているので少し量を減らすべきだと教育係に伝えてください。
爵位は伯爵家でないと私と結婚できませんよね?王太子妃の条件を満たすために伯爵家にしないと。」

「お前は勘違いしているようだな。確かに子爵家では条件を満たさない。だがそれは条件を満たすためにノンブレイン子爵家を伯爵家にするという意味ではない。彼女が優秀であった場合、王太子妃に相応しいと認められることが万が一にもあった場合には、養女にしようと言ってくる貴族家もあるかもしれないな、程度の意味あいだ。 
どういうことかわかるか?お前の婚約解消を認めた時点で、お前は今後も王太子には戻れないということなんだ。彼女は王太子妃の器ではない。だからお前は王太子に戻れない。」

「っそんな………」

「あの場でそのことを理解できていなかったのはお前くらいだろうよ。彼女は王子妃としての教育にも躓いている。結婚はまだまだ先になるな。」

「じゃ、じゃあ、もう一度アヴリルを正妃に戻す。シーラを側妃にするなら王太子に戻れる?」

「アヴリル嬢は先日結婚したからもう無理だ。シーラ嬢を側妃にする金は実家にないだろう?
王子妃であれば実家の負担はない。シーラ嬢を妻にしたいのであれば、大人しく教育を終えることだ。」


アヴリルが結婚した?知らなかった。俺には秘密にされたのか?
俺に祝われたくなかったのか?まだ俺に未練が残っていたってことか。

じゃあ、他の高位貴族令嬢は誰かいないのか?

調べたが、今すぐ俺と結婚できそうな令嬢は誰もいなかった。

こうなったらアヴリルを離婚させればいい。俺に未練があるなら喜ぶだろう。
どうせ仕事をさせるだけの正妃なんだ。構わない。

シーラを側妃にするか愛妾にするかは悩むな。

子供を先に作って側妃にすればいいか。アヴリルの予算をシーラに回せばいい。
アヴリルの代わりにシーラが跡継ぎを産むんだ。当然だよな。


そう目論見を立てた俺は、あの日から二年後の今日、アヴリルに離婚を命じたのだ。


 


 
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