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しおりを挟む国王陛下の生誕45年パーティーで、ノックス殿下はアヴリルに指差しながら告げた。
「アヴリル・サマーフィールド、お前に離婚を命ずる!」
周りからは『また始まったか』失笑されたことにノックス殿下は気づいていなかった。
勝手に離婚を命じられたスタンリーは怒りを露わにしていた。
アヴリルが離婚するということは、スタンリーも離婚するということ。
自分の離婚が他人から勝手に命令されている今の状況をスタンリーもアヴリルも受け入れるわけがない。
「ノックス殿下、私たちが離婚しなければならない理由をお聞かせ願えますか?」
スタンリーの怒りを滲ませた低い声に、ノックス殿下は少し怖気づいた後、言った。
「私が王太子になるためにはアヴリルが必要なんだ。シーラが正妃では私は王太子にはなれない。まだ教育の終わらないシーラを待ち続けていても子爵令嬢では正妃になれないし養女にしてくれる当てもない。
他の高位貴族の令嬢も探したが、まだ結婚できない年の令嬢しかいなかったんだ。それに教育を終えていたアヴリルならすぐに結婚できるだろう?仕事はアヴリルがやって、子供はシーラが産む。これで安泰だ。」
すると周りは呆気に取られた後、爆笑した。
『今更?』
『二年経ってようやく子爵令嬢が妻では王太子になれないと気づいたのか?』
『仕事だけやらせるなんて王太子妃を何だと思ってるんだ?』
『子爵令嬢に跡継ぎを産ませるの?信じられないわ』
ノックス殿下は自分が笑われたと気づいたが、的外れなことをまた言った。
「いいか?アヴリルに子供を産ませないのは純潔ではないからだ。お前と結婚したんだからそうなんだろう?純潔ではない女だというのに正妃にしてやろうと言うのは私の優しさでもある。
アヴリルは私のためにずっと王太子妃教育を頑張っていた。それは私に好意があったからだろう。お前と結婚したのは貴族令嬢だからどこかに嫁がねばならないからだ。だが、アヴリルは今でも私のことを思っている。だから、子供を産めなくても私の正妃になれることを喜んでいるはずだ。そうだろう?アヴリル。」
「私は夫を愛しています。離婚など致しません。殿下には一欠けらの気持ちも残っておりませんわ。」
アヴリルはキッパリとハッキリと告げた。あらぬ勘違いにため息が出る。
ノックス殿下は『え?え?』と狼狽えていたが、その前にスタンリーが言った。
「いくら王子殿下と言えども、愛し合っている一貴族の離婚を命ずる権限などない。しかも、あまりにも身勝手な理由にあなたが我が国の王子殿下であるということを恥ずかしく思います。
国王陛下、私を王族に対する不敬だと処罰されますか?」
「……いや、同意見だ。私も国王としてだけでなく親として恥ずかしい思いだ。申し訳ない。
どうしてこんなに愚かなのか。情けない。理解し難いほどの馬鹿としか言いようがない。」
国王陛下が淡々と息子であるノックス殿下に負の言葉を吐き続けている。こんな陛下も珍しい。
「すまないな。またもやアヴリル夫人には迷惑をかけてしまった。アレの命令は忘れてくれ。アレを王太子に戻すことは何があってもない。王子としても不適格だしな。」
「ありがとうございます。国王陛下。」
こうしていきなり始まった寸劇は以前とは違いノックス殿下の思い通りにはならなかった。
そのことに納得がいかないのは、もちろんノックス殿下だった。
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