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あれから、どう部屋を出たのか覚えていない。気がついたら、庭にいた。
ただ…
彼女がすでに侯爵家にいないだろうとは思っていた。
その予想はあたった。執事のエパードが庭にいた俺に、彼女の伝言を持ってきたからだ。
=今夜の王宮の舞踏会の為、コンウォールの家に戻り準備をしてまいります。=
その伝言を聞きながら、俺は別のことを考えていた。
彼女が、何かやろうとしていることは、おそらくバクルー王に関することだ、
この庭での昨日のふたりを思い出し…頭を振った。
君は、なにをしようとしているんだ。
「旦那様?」エパードの心配する声に、
「いや、なんでもない。すまない…エパード」
エパードは微笑み、封筒を差し出した。
「コンウォール男爵夫人から、お手紙が届いております。」
「男爵夫人から?」
………
アークフリード様
娘は、心からあなた様をお慕いしております、どうぞ、それを信じてから、この先を読んでいただきたく存じます。 娘は、この度のことで、あなた様の為にすべてを掛けるつもりです。
そのひとつが、バクルー王との婚姻を…
…………
その先が、読めなかった。
俺はすぐにコンウォール邸に行くつもりで、エパードの止める声を振り切り、庭を走り出したら
「アークフリード!!」突然、庭の大きな楠の影から、出てきたライドに手を捕まれた。
「悪い、あとから…」と手を振りほどこうとしたが…ライドはその手を離さず
「わかっている。ミーナ嬢とバクルー王の婚姻の話だろう。」
「ど、どうして知っている…。」震える声でたずねた。
「…おい、本当なのか?。昨夜、ひとりでやってきたバクルー王に、俺は護衛と言う名目でついたのだが…早朝、バクルー王と義母殿が王宮に上がったんだ。そこで、ノーフォーク王に会うなりバクルー王がミーナ嬢との婚約という爆弾発言したのさ。王宮内は右往左往だ。驚くことに…どうやら義母殿も知らなかったみたいだ…彼女の顔が、 赤くなったり青くなったりしていたぞ。
アークフリード…どうなってるんだ?あれから…おまえはミーナ嬢のところに行ったんだろう。
ずっと一緒だったんだろう…朝まで…。それがなぜ?こんな話が出てくるんだ?!」
「……」言葉がでなかった。
手元から、コンウォール男爵夫人からの手紙が落ちていった。
コンウォール夫人は、夫とこれからのことを話す娘…いやエリザベスを隣の部屋から見ていた。たとえ、愛する人を守る為とはいえ…その方に疎まれるのを承知で、他の方のもとに嫁ぐなんて…エリザベス様は、おそらくアークフリード様に真実を言われないで、消えていくおつもりだ。
マールバラ王国のエリザベスと言うことも…。
そしてアークフリード様を守る為に嫁ぐことも…。
そう思うと、堪らなかった。
せめてアークフリード様には、エリザベス様が愛していらっしゃるのは、あなた様だけだと知っていただきたかった。このまま終わってしまうことだけは、どうしても…嫌だった。
あまりにも辛すぎる……。
エリザベス様、申し訳ありません。
涙を流して書いた手紙は、読み返すことができなかった。
………
娘は、この婚姻を受けることになるでしょう。
隣国の王からの結婚の申し出を下位貴族だから、断れなかったという理由ではありません。私の夫、コンウォールは、この大陸で一番の商人であると自負しております。バクルー王からの申し出を断る術、いや申し出をださせない術を持っております。その夫の力を借りず結婚の申し出を受けたのは…おそらくあなた様のため…そうでなければ、あなた様以外の方と婚姻などするわけはありません。
あなた様を守る為…娘はすべてを懸けております。
強い娘です。でも愛する人がいるのに、他の方と結婚をすることは、どんなに強い女性でも死ぬほど辛いことです。 娘はなにもを言わずに、あなた様のもとを離れたことと思います。
娘が初めて愛したあなた様に、このまま疎まれていくのはあまりにも可哀想で どうか娘の気持ちをわかってやってください。
ただ…
彼女がすでに侯爵家にいないだろうとは思っていた。
その予想はあたった。執事のエパードが庭にいた俺に、彼女の伝言を持ってきたからだ。
=今夜の王宮の舞踏会の為、コンウォールの家に戻り準備をしてまいります。=
その伝言を聞きながら、俺は別のことを考えていた。
彼女が、何かやろうとしていることは、おそらくバクルー王に関することだ、
この庭での昨日のふたりを思い出し…頭を振った。
君は、なにをしようとしているんだ。
「旦那様?」エパードの心配する声に、
「いや、なんでもない。すまない…エパード」
エパードは微笑み、封筒を差し出した。
「コンウォール男爵夫人から、お手紙が届いております。」
「男爵夫人から?」
………
アークフリード様
娘は、心からあなた様をお慕いしております、どうぞ、それを信じてから、この先を読んでいただきたく存じます。 娘は、この度のことで、あなた様の為にすべてを掛けるつもりです。
そのひとつが、バクルー王との婚姻を…
…………
その先が、読めなかった。
俺はすぐにコンウォール邸に行くつもりで、エパードの止める声を振り切り、庭を走り出したら
「アークフリード!!」突然、庭の大きな楠の影から、出てきたライドに手を捕まれた。
「悪い、あとから…」と手を振りほどこうとしたが…ライドはその手を離さず
「わかっている。ミーナ嬢とバクルー王の婚姻の話だろう。」
「ど、どうして知っている…。」震える声でたずねた。
「…おい、本当なのか?。昨夜、ひとりでやってきたバクルー王に、俺は護衛と言う名目でついたのだが…早朝、バクルー王と義母殿が王宮に上がったんだ。そこで、ノーフォーク王に会うなりバクルー王がミーナ嬢との婚約という爆弾発言したのさ。王宮内は右往左往だ。驚くことに…どうやら義母殿も知らなかったみたいだ…彼女の顔が、 赤くなったり青くなったりしていたぞ。
アークフリード…どうなってるんだ?あれから…おまえはミーナ嬢のところに行ったんだろう。
ずっと一緒だったんだろう…朝まで…。それがなぜ?こんな話が出てくるんだ?!」
「……」言葉がでなかった。
手元から、コンウォール男爵夫人からの手紙が落ちていった。
コンウォール夫人は、夫とこれからのことを話す娘…いやエリザベスを隣の部屋から見ていた。たとえ、愛する人を守る為とはいえ…その方に疎まれるのを承知で、他の方のもとに嫁ぐなんて…エリザベス様は、おそらくアークフリード様に真実を言われないで、消えていくおつもりだ。
マールバラ王国のエリザベスと言うことも…。
そしてアークフリード様を守る為に嫁ぐことも…。
そう思うと、堪らなかった。
せめてアークフリード様には、エリザベス様が愛していらっしゃるのは、あなた様だけだと知っていただきたかった。このまま終わってしまうことだけは、どうしても…嫌だった。
あまりにも辛すぎる……。
エリザベス様、申し訳ありません。
涙を流して書いた手紙は、読み返すことができなかった。
………
娘は、この婚姻を受けることになるでしょう。
隣国の王からの結婚の申し出を下位貴族だから、断れなかったという理由ではありません。私の夫、コンウォールは、この大陸で一番の商人であると自負しております。バクルー王からの申し出を断る術、いや申し出をださせない術を持っております。その夫の力を借りず結婚の申し出を受けたのは…おそらくあなた様のため…そうでなければ、あなた様以外の方と婚姻などするわけはありません。
あなた様を守る為…娘はすべてを懸けております。
強い娘です。でも愛する人がいるのに、他の方と結婚をすることは、どんなに強い女性でも死ぬほど辛いことです。 娘はなにもを言わずに、あなた様のもとを離れたことと思います。
娘が初めて愛したあなた様に、このまま疎まれていくのはあまりにも可哀想で どうか娘の気持ちをわかってやってください。
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