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ほんの数分…いや数秒だったかもしれない、沈黙を破ったのはアークフリードだった。
「義母上を…パメラを知っていたのか…」声が掠れていた。
ミーナは、それまで下を向いていたが、アークフリードの問いに、顔を上げ
「いいえ、存じません。」と顔色は悪かったが、はっきりと答えた。
ー嘘だ。
眼を閉じ…しばらく黙っていたアークフリードだったが、屋敷に戻るのだろう 「そうか」とひとこと言って、ミーナに背を向ければ
「アークフリード様、明日の晩餐会で婚約の発表は、待って頂けませんか。」とミーナの声が背中に刺さってきた。
―なぜ?
”ヒーンカラカラ ヒーンカラカラ”
コマドリの囀りに、アークフリードの眼がコマドリを探しているかのように、庭の木々へと動いたが、軽く頭を横に振り、ミーナへと振り向こうとした。だが振り向くことは出来ず、背中を向けたまま、(なぜ。)という言葉を押し殺し、「…わかった。明日の晩餐会で婚約の発表は中止だ。」と言った。
―また嘘をつかれるのは辛いから、もういい。でも…。
「だが、晩餐会はいまさら取りやめられない、出席はしてくれ。」
そういうと、歩き始めた。
―パメラが微笑みながら、あの赤い髪に口づけをしたところを俺に見られたと、気づいているくせにミーナはパメラを知らないと言い切る。どうして嘘をつく?
何を隠すためにあんな見え透いた嘘をつくのだ。それほど俺は頼りないのか?
…それとも…
アークフリードの心に、小さな小さな黒い染みができた。
去って行く、アークフリードの背中を見つめていたミーナは、ようやく屋敷に入ってゆくその後ろ姿を確認したところで座り込んだ。
ー彼から放たれる気配は、恐ろしいほど鋭かった。あんな見え透いた嘘をついたのだもの。きっと、アークは私に不信感をもっただろう。でもアークのあの眼にあの声に、これ以上の嘘はつけなかった。
嘘をつくなら、嘘をついた自分でさえも騙されてしまいそうなくらい、真実にほんの少しの嘘を混ぜて使え。
コンウォールの父にそう言われていたが…父のようにはいかない。
今更だ。それよりパメラ叔母様のあの自信…なにかある。なにか仕掛けてくる。その仕掛けを見るまで、うかつに動くのは危険だ…アークに危険が及んだら…私がここに来た意味がない。
コンウォール男爵と共に、パメラ叔母様とバクルー王を断罪するために13年待った。
積み重ねた時間は今回のためだ。
その為に私は…。
エリザベスは《王華》をすべて解放しその身に纏った。光と共にエリザベスの赤い髪は紫へと変わり、風の流れ沿って大きくなびき、緑の瞳は紫の瞳となって冷たく光った。
その頃、バクルー王はノーフォーク王国と旧マールバラ王国との国境にいた。
いつもなら、王らしからぬ出で立ちで、馬にまたがり他国を訪問する男だったが、 今回は馬車でノーフォーク王国へ向かっていた。
馬車から流れていく景色を、退屈そうに見ていたバクルー王に、
「明日の晩餐会には、間に合うのですか?」と少女のか細い声が聞こえた。
「間に合わないなぁ…」と平然と答えると、
「よろしいのですか?」と聞いてくる。
ー俺と二人で乗る馬車での沈黙が嫌なのか、さっきから…話しかけてくる。あぁめんどくさい。
そう思いながら、バクルー王はあくびをすると
「さぁ、いいんじゃないか、明日の晩餐会に間に合わなくても、 翌日の王宮主催の俺の歓迎会に間に合えば…」と言ってまた大きなあくびをした。だが、バクルー王はその少女をチラリと見て、何か思い出したのかニンマリと笑うと
「あぁ、でも惜しいなぁ、明後日までパメラからの聞いた話を確かめられないのは…よし、決めた!おまえは馬車でゆっくりやって来い。俺は先に行く!」
そう言うと、窓から顔を出し併走していた兵に、「おい、俺の馬を持ってこい」と命令した。
少女は慌てて「陛下!」と声を上げれば、バクルー王は少女の頭を撫で
「おまえはメーンディッシュだ、最後に…ゆっくりと出て来い。俺は先に本物のエリザベスを見に行ってくる。未来の賢王と言われた王女が…どんな策を講じてくのか、お手並みを拝見だ。」と言うとくせのある笑みを浮かべ、馬車の扉を開けた。
少女は白く細い腕を伸ばし、バクルー王に縋ろうとしたが、その手をすり抜け、馬車を飛び降ると兵が連れてきた自分の馬に乗って走っていった。
「そ、そんな…陛下!!!」と馬車の窓から身を乗り出し、少女は叫んでいた。
バクルー王を掴みそこなった白い腕には、彼女の金色の長い髪が風に靡いて絡まっていた。
「義母上を…パメラを知っていたのか…」声が掠れていた。
ミーナは、それまで下を向いていたが、アークフリードの問いに、顔を上げ
「いいえ、存じません。」と顔色は悪かったが、はっきりと答えた。
ー嘘だ。
眼を閉じ…しばらく黙っていたアークフリードだったが、屋敷に戻るのだろう 「そうか」とひとこと言って、ミーナに背を向ければ
「アークフリード様、明日の晩餐会で婚約の発表は、待って頂けませんか。」とミーナの声が背中に刺さってきた。
―なぜ?
”ヒーンカラカラ ヒーンカラカラ”
コマドリの囀りに、アークフリードの眼がコマドリを探しているかのように、庭の木々へと動いたが、軽く頭を横に振り、ミーナへと振り向こうとした。だが振り向くことは出来ず、背中を向けたまま、(なぜ。)という言葉を押し殺し、「…わかった。明日の晩餐会で婚約の発表は中止だ。」と言った。
―また嘘をつかれるのは辛いから、もういい。でも…。
「だが、晩餐会はいまさら取りやめられない、出席はしてくれ。」
そういうと、歩き始めた。
―パメラが微笑みながら、あの赤い髪に口づけをしたところを俺に見られたと、気づいているくせにミーナはパメラを知らないと言い切る。どうして嘘をつく?
何を隠すためにあんな見え透いた嘘をつくのだ。それほど俺は頼りないのか?
…それとも…
アークフリードの心に、小さな小さな黒い染みができた。
去って行く、アークフリードの背中を見つめていたミーナは、ようやく屋敷に入ってゆくその後ろ姿を確認したところで座り込んだ。
ー彼から放たれる気配は、恐ろしいほど鋭かった。あんな見え透いた嘘をついたのだもの。きっと、アークは私に不信感をもっただろう。でもアークのあの眼にあの声に、これ以上の嘘はつけなかった。
嘘をつくなら、嘘をついた自分でさえも騙されてしまいそうなくらい、真実にほんの少しの嘘を混ぜて使え。
コンウォールの父にそう言われていたが…父のようにはいかない。
今更だ。それよりパメラ叔母様のあの自信…なにかある。なにか仕掛けてくる。その仕掛けを見るまで、うかつに動くのは危険だ…アークに危険が及んだら…私がここに来た意味がない。
コンウォール男爵と共に、パメラ叔母様とバクルー王を断罪するために13年待った。
積み重ねた時間は今回のためだ。
その為に私は…。
エリザベスは《王華》をすべて解放しその身に纏った。光と共にエリザベスの赤い髪は紫へと変わり、風の流れ沿って大きくなびき、緑の瞳は紫の瞳となって冷たく光った。
その頃、バクルー王はノーフォーク王国と旧マールバラ王国との国境にいた。
いつもなら、王らしからぬ出で立ちで、馬にまたがり他国を訪問する男だったが、 今回は馬車でノーフォーク王国へ向かっていた。
馬車から流れていく景色を、退屈そうに見ていたバクルー王に、
「明日の晩餐会には、間に合うのですか?」と少女のか細い声が聞こえた。
「間に合わないなぁ…」と平然と答えると、
「よろしいのですか?」と聞いてくる。
ー俺と二人で乗る馬車での沈黙が嫌なのか、さっきから…話しかけてくる。あぁめんどくさい。
そう思いながら、バクルー王はあくびをすると
「さぁ、いいんじゃないか、明日の晩餐会に間に合わなくても、 翌日の王宮主催の俺の歓迎会に間に合えば…」と言ってまた大きなあくびをした。だが、バクルー王はその少女をチラリと見て、何か思い出したのかニンマリと笑うと
「あぁ、でも惜しいなぁ、明後日までパメラからの聞いた話を確かめられないのは…よし、決めた!おまえは馬車でゆっくりやって来い。俺は先に行く!」
そう言うと、窓から顔を出し併走していた兵に、「おい、俺の馬を持ってこい」と命令した。
少女は慌てて「陛下!」と声を上げれば、バクルー王は少女の頭を撫で
「おまえはメーンディッシュだ、最後に…ゆっくりと出て来い。俺は先に本物のエリザベスを見に行ってくる。未来の賢王と言われた王女が…どんな策を講じてくのか、お手並みを拝見だ。」と言うとくせのある笑みを浮かべ、馬車の扉を開けた。
少女は白く細い腕を伸ばし、バクルー王に縋ろうとしたが、その手をすり抜け、馬車を飛び降ると兵が連れてきた自分の馬に乗って走っていった。
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