151 / 214
結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
5日目④
しおりを挟む
「うん、よし!髪はサラサラ、肌はスベスベ。」
キャロルさんの満足気な声に、ようやく終わったと力のない笑みを浮かべた私に
「綺麗になるのも、日々のお手入れ。剣の修行と同じでございます。毎日やる事が大事なのでございますよ。ロザリー様。」
「…はい。」
クスクスと笑ったキャロルさんは、使ったタオル数枚を手に取ると
「片付けて参りますので、しばらくお待ちくださいませ。」
本来なら、私の身のまわりの世話は、数人の侍女がやってくれているが、今回はウェディングドレスの手直しの件もあって、キャロルさんがひとりでやってくれていた。
「キャロルさん、ありがとう。」
「いいえ。」
にっこり笑ったキャロルさんに、私は礼を何度言っても足りないなぁと、自分の姿を鏡に映しながら、夕餉の為に、また化粧をしてもらい、髪を結ってもらっている自分に
「感謝しないとだめだぞ。ロザリー。」
そう口にした時だった。
キャロルさんの押し殺した声が聞こえた。
私はドレスの裾を持ち、外へと出たキャロルさんを追いかけようと、扉を開けると
「…ぁ…ダメです。来ないでください。ロザリー様。」
背中を向けたまま、キャロルさんはそう言って私が来るのを拒み
「な、なんでもありませんから…。お部屋に…お戻りください。」
キャロルさんの視線の先に、何かある事はわかる。
危険な事ではないようだけど…でも、それを私に隠す理由は何だろう。
私はゆっくり足を進めると、キャロルさんがまた小さな声だったが…
「ロザリー様…。」と言って私を見た。
キャロルさんの視線の先には…抱きあう男女の姿。
男性の広い背中に回された細い腕と、女性の泣き声。
「…ぁ…あのロザリー様。きっとなにか事情があるはず、ルシアン殿下に…あのように抱き合う相手は…」
と言って、泣きそうな顔で私を見ていた。
黒い髪。
高い身長。
そして…
背中にある広背筋を鍛えていると思われるその男性の背中は、広くたくましくがっしりとしている。
私はキャロルさんの肩に手を置き、にっこり微笑むと、その男女に向かった歩き出した。
そして…
「ジャスミンさん…」と声を掛けると
その女性は…いや、ジャスミンさんはキョトンとした顔で私を見ているだけで、声が出てこないようだったので、その男性に
「初めまして、ロザリーと申します。」
私の声に、その男性はゆっくりと振り向くと跪き
「ロザリー様。この度は…」
「どうか顔をお上げください。お願いします。」
その方は躊躇いながら、面を上げた…
やはり…違う。
広背筋を鍛えていると思われるその男性の体型は鍛えた体だが、この方の剣の腕は、まだまだなのだと思う筋肉の付き方だったから、その後ろ姿を見た瞬間、ルシアン殿下ではではないと思ったが、顔を見てその違いは明らかだと思った。
この方は恐らく…
ルシアン殿下の祖父のあたる先々代の子供で、ルシアン殿下の叔父になる方…ロイさんだ。
赤い瞳に黒い髪、ローラン国の王家の印を身に纏われた方ではあったが、その色は…ルシアン殿下より薄く、寧ろ…その顔立ちは前ローラン王と似ていらっしゃるような気がする。
赤い瞳。
その色は力強さと、情熱の色だからだろうか、その赤い瞳に見つめられたら、ひれ伏したくなるような力がある。
でも、この方の赤い瞳は…少し違う。
この方が持つ空気にカリスマ性がないと言うのではない、この方の赤い瞳にも、体が震えるくらいの空気を感じる。
だが、ルシアン殿下が纏う空気はもっと熱く、すべてのものを焼き付くほどの熱と、そしてまったく裏腹に、清冽な空気の流れの中に体を浸しているように、爽やかな風を感じる。
この方には…柔らかい空気は感じるが、すべてのものを焼き付くほどの熱は感じられない。
その違いは王となる方との差だろうか…。
王になる方は…
すべてのものを焼き付くほどの熱という非情さと、清冽な空気の流れの中に体を浸しているように、爽やかな風のような優しさを持たなければならないという事なのだろうか…。
『王は優しさと、そして相反する非情さを持たなければならない。だが、王とて人だ。人だからその優しさと非情さの間で心が揺れ動く。その思いはきっと一生付きまとうものだと思っている。
一時の感情に左右されるな…強くなれと、王家に生まれた者はそう育てられるが…心はそう簡単に強くならないと俺は思っていた、でもおまえを知って俺は知ったんだ。
おまえが俺を愛してくれるその愛は…俺の心を強くしてくれるという事に。
ロザリー…俺をもっと愛してくれ。
俺が優しさと非情さのどちらにも傾き過ぎないように、俺の心を…おまえの愛で守ってくれないか。』
一瞬、ルシアン殿下が仰った言葉が頭を過った。
キャロルさんの満足気な声に、ようやく終わったと力のない笑みを浮かべた私に
「綺麗になるのも、日々のお手入れ。剣の修行と同じでございます。毎日やる事が大事なのでございますよ。ロザリー様。」
「…はい。」
クスクスと笑ったキャロルさんは、使ったタオル数枚を手に取ると
「片付けて参りますので、しばらくお待ちくださいませ。」
本来なら、私の身のまわりの世話は、数人の侍女がやってくれているが、今回はウェディングドレスの手直しの件もあって、キャロルさんがひとりでやってくれていた。
「キャロルさん、ありがとう。」
「いいえ。」
にっこり笑ったキャロルさんに、私は礼を何度言っても足りないなぁと、自分の姿を鏡に映しながら、夕餉の為に、また化粧をしてもらい、髪を結ってもらっている自分に
「感謝しないとだめだぞ。ロザリー。」
そう口にした時だった。
キャロルさんの押し殺した声が聞こえた。
私はドレスの裾を持ち、外へと出たキャロルさんを追いかけようと、扉を開けると
「…ぁ…ダメです。来ないでください。ロザリー様。」
背中を向けたまま、キャロルさんはそう言って私が来るのを拒み
「な、なんでもありませんから…。お部屋に…お戻りください。」
キャロルさんの視線の先に、何かある事はわかる。
危険な事ではないようだけど…でも、それを私に隠す理由は何だろう。
私はゆっくり足を進めると、キャロルさんがまた小さな声だったが…
「ロザリー様…。」と言って私を見た。
キャロルさんの視線の先には…抱きあう男女の姿。
男性の広い背中に回された細い腕と、女性の泣き声。
「…ぁ…あのロザリー様。きっとなにか事情があるはず、ルシアン殿下に…あのように抱き合う相手は…」
と言って、泣きそうな顔で私を見ていた。
黒い髪。
高い身長。
そして…
背中にある広背筋を鍛えていると思われるその男性の背中は、広くたくましくがっしりとしている。
私はキャロルさんの肩に手を置き、にっこり微笑むと、その男女に向かった歩き出した。
そして…
「ジャスミンさん…」と声を掛けると
その女性は…いや、ジャスミンさんはキョトンとした顔で私を見ているだけで、声が出てこないようだったので、その男性に
「初めまして、ロザリーと申します。」
私の声に、その男性はゆっくりと振り向くと跪き
「ロザリー様。この度は…」
「どうか顔をお上げください。お願いします。」
その方は躊躇いながら、面を上げた…
やはり…違う。
広背筋を鍛えていると思われるその男性の体型は鍛えた体だが、この方の剣の腕は、まだまだなのだと思う筋肉の付き方だったから、その後ろ姿を見た瞬間、ルシアン殿下ではではないと思ったが、顔を見てその違いは明らかだと思った。
この方は恐らく…
ルシアン殿下の祖父のあたる先々代の子供で、ルシアン殿下の叔父になる方…ロイさんだ。
赤い瞳に黒い髪、ローラン国の王家の印を身に纏われた方ではあったが、その色は…ルシアン殿下より薄く、寧ろ…その顔立ちは前ローラン王と似ていらっしゃるような気がする。
赤い瞳。
その色は力強さと、情熱の色だからだろうか、その赤い瞳に見つめられたら、ひれ伏したくなるような力がある。
でも、この方の赤い瞳は…少し違う。
この方が持つ空気にカリスマ性がないと言うのではない、この方の赤い瞳にも、体が震えるくらいの空気を感じる。
だが、ルシアン殿下が纏う空気はもっと熱く、すべてのものを焼き付くほどの熱と、そしてまったく裏腹に、清冽な空気の流れの中に体を浸しているように、爽やかな風を感じる。
この方には…柔らかい空気は感じるが、すべてのものを焼き付くほどの熱は感じられない。
その違いは王となる方との差だろうか…。
王になる方は…
すべてのものを焼き付くほどの熱という非情さと、清冽な空気の流れの中に体を浸しているように、爽やかな風のような優しさを持たなければならないという事なのだろうか…。
『王は優しさと、そして相反する非情さを持たなければならない。だが、王とて人だ。人だからその優しさと非情さの間で心が揺れ動く。その思いはきっと一生付きまとうものだと思っている。
一時の感情に左右されるな…強くなれと、王家に生まれた者はそう育てられるが…心はそう簡単に強くならないと俺は思っていた、でもおまえを知って俺は知ったんだ。
おまえが俺を愛してくれるその愛は…俺の心を強くしてくれるという事に。
ロザリー…俺をもっと愛してくれ。
俺が優しさと非情さのどちらにも傾き過ぎないように、俺の心を…おまえの愛で守ってくれないか。』
一瞬、ルシアン殿下が仰った言葉が頭を過った。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる