不老不死と拾われ弟子

シーカピ

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旅の準備

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 私とノアは旅に行くことが決定した。と言っても突然行けるものでは無いので、ある程度の下準備が必要となる。
    まずはお金だ。積極的に使おうとは思わないが食事の面などを思うと持っていて損は無い。
 次に野宿に使う物だが、正直必要かと言われると微妙な所ではある。寝所は自然から作れるし、なんなら魔法で作ることも出来るから保留。
 食事に関しては火は魔法で出せるし、材料さえあれば時間はかかるが作ることが出来るので、調理器具や食器、調味料などを持っていけばいいだろう。水はそこそこで確保するために水筒なんかを持っていけばいいだろう。
 衣服に関しては何枚か替えがあればいいだろう。一応雨が降ってきた時用のローブも持っていくか。他には薬や包帯だな。
 あとは地図と…あぁ、あれもしとかないとな。

 必要な物のリストを作ると、ある程度の量となった。普通に全部持っていくと大変だが、闇魔法をかけたリュックで収納できるので心配はない。

「ノア、街に行こうか」
「街ですか?分かりました!すぐ準備します!」

 そう言うとすぐさま準備しだすノアを横目に、久しぶりの旅に少し期待していた。

「今回はノアが一緒か…楽しみだ」

 噛み締めるように自然と口角が上がる。

「師匠~準備終わりましたよ…って、何か言いました?」
「ん?お前と旅が出来るなんて楽しみだって言っただけだ」

 そう言うとキョトンとした顔になったが、すぐに満面の笑みで「俺もです!」と返した。

「ほら、師匠も準備してください!」

 急かされるように促され、髪をひと括りし、外出用のローブをコートのように羽織る。街に行く時は必ずこの格好だ。ちなみにノアも同じような格好をしている。

「じゃあ行くか」
「はい!」

 基本的に街までの道のりは徒歩である。特に話すことがない時は無言で歩いているが、ふと会話したり、行きから帰りまでずっと話していることもある。しかしどちらの時もノアは楽しそうに歩くので気まずくなることは無い。
  今日はちょこちょこ話して30分程歩き、街へとつく。そして色んな物が売ってある市場へと向かうと、途中で声をかけられた。

「お、お嬢さん久しぶりだね!元気にしてたかい?」
「お久しぶりです、リンダさん」

 リンダと呼ばれるこの女性は商人でいつも珍しいものを売っている。肌は健康的な小麦色に焼け、赤い髪は短髪にしておりパッとみると少年風で声も少し低いため、男とよく間違われるらしい。しかし、商人をしていると女性的なのは危ないためわざとそういう格好をしているのだそうだ。

「今日はどうしたんだい?」
「色々必要なものがありましてね、ここならある程度は揃えられるかと思い立ち寄ったんです」
「嬉しいこと言ってくれるね!どんなのが欲しい?」

 彼女に欲しいものを言うとほとんどを揃えることが出来た。買ったものを収納リュックへと入れていると、ふいにリンダの視線が私の後ろへと移る。

「あんたも久しぶりだね、元気にしてたかい?」
「えぇ、まぁ」

 街に行くようになってから気づいたが、ノアは人間という種族に対してのみ無関心となる。ヴァルケンドのような人型と人間は全く別らしい。なので街に行ってもこの反応がほとんどだ。まぁ昔のこともあるし無理もあるまい。

「相変わらずだね!せっかく新しい洗髪剤手に入れたってのに…」
「…新しい洗髪剤?どんなのですか?」
「ふふふ…食いついたね、実は…」

 そう言って新しい商品の説明を始める彼女に対してノアも聞き逃さないよう真剣に聞く。こうなったらこの二人の会話は長いのだ。私は他の買い物を済ませることにしてその場から離れた。

「…というわけでこの洗髪剤とこの香油の組み合わせがオススメだよ!」
「なるほど…話を聞く限り以前のものよりも性能が良さそうですね…ぜひ購入させていただきます」
「まいど!…お客さんに対して普段は聞かないけどさ…あんたって髪が性癖なのかい?」
「…?」
「あのお嬢さんの髪に対してこだわりが凄いじゃないか、なんというか髪しか見てないというか…」
「あぁ…そういう訳では無いんですが」
「じゃあなんで髪に?」
「うーん、一部でも師匠に触れたいんですよ。それに私が手をかけた分だけ師匠はさらに美しくなる…いえ元から美しいのですが。最近は師匠から髪をしてくれと言われるのです、求められるこの幸せ!」

うっとりと顔を緩め、至福と言わんばかりの笑顔で語る。内容はなかなか聞かせられないものだが、いつもは無愛想な整った顔がこうなると流石のリンダもドキッとする。

「それにあの方の髪は今、私以外は誰も掴めないのです」
「…は?」
「だって素敵な師匠のことを触ろうとするやつはいるでしょう?一部でも触れたいと思うのが普通です。まぁ触ろうとする害虫だけならまだしも、その髪を取ろうとするやつだっているでしょうし…俺しか触れないようにしてるんです。今は髪だけですがいつかは…」
「あ、うん。もういいかな…」
「そうですか、では先程言ったものをください」

師匠語りをやめた瞬間スンっといつもの真顔に戻るのを見て思わずため息がもれる。お嬢さんは苦労するだろうな。
 金貨数十枚を躊躇いもなく支払う姿にこちらがおかしいのかと錯覚してしまいそうになる。
 しかもこれを買うためにお金を稼いでいる 。仕事は依頼を受けると、コース料理を提供するが、依頼は1度しか受け付けないもの。要するに人生で1度きりの料理で値段も恐ろしいほど高いが、頼む人は多い。なかなか依頼を受けない上に未だに人前で姿を見せないので幻の料理人とも言われている。

「そーいえば依頼入ってるけどどうする?」
「断ってください」
「あーらら、今回もか。まぁ受けない可能性大って説明してるからいいけどさ」

 そうこうしてるうちに師匠が帰ってきた。そしてノアの手荷物をチラッと見る。

「いつものように洗髪剤買うのはいいが、旅にはそこまで必要ないものじゃないか?」

 つい思ったことを言ってしまったが、すぐにやらかしたと思った。チラッとノアを見ると、とてつもなく満面の笑みだった。そう、清々しいほどの満面の笑みだ。

 これは…長くなるな…

 そこからリンダさんと別れたが、帰り際に「お嬢さんも大変だな…」と言われたな。ちなみに帰り道も家でも永遠と説教じみた話を聞かされ、旅に洗髪剤も持っていくこととなった。

 朝になり、ノアに起こされる。後ろで髪をとかれながら、朝食を食べ終わり旅に必要な物を次々とバッグへと入れ込む。もちろん昨日散々言い聞かされた洗髪剤も少し悩んで入れた。そうして荷造りしていると重要なことに気づく。

「しまった」
「どうしたんですか?」
「忘れ物だ、昨日終わらせるつもりだったんだが」
「じゃあ今日も街へ?」
「はぁ…そうだな」

 そうしてまた街へと向かい、目的の場所へとついた。

「ここですか?」
「そうだ」

 木造の建物でドアの左上に小さい看板が下がっている。中に入ると一気に視線を感じたが、特に気にせず奥のカウンターへと進む。すると「いらっしゃいませ」と丁寧に礼をする女性がいた。

「本日はどのような内容でしょうか?」
「冒険者として登録しにきました」
「そうなのですね、ではこちらの書類へのご記入と登録料を頂いてもよろしいでしょうか?」
「分かりました。では向こうの席をお借りして書類に記入してきます」
「はい、お手数お掛け致します。」

 2人分の書類を受け取り、ペンも借りて室内の角近くにある席へと座る。内容を読み、記入していると突然一人の男がドスンと隣に座った。

「ねぇーちゃぁん、偉くべっぴんさんじゃねぇーか、ちょっと接待してくれよぉ」

 隣に座られたので酒の匂いがプンプンと漂っていた。ノアにいたっては顔をしかめて悪意を隠そうともしていない。むしろ椅子から立ち上がろうとする動作で今にも襲い掛かりそうな雰囲気だが、目配せして首を横に振ると不機嫌そうに座り直す。

「結構飲んでるな。何かあったのか?」
「あ?別になんもねぇが、どうでもいいだろそんなの。ねーちゃんには関係ねぇ話だ」
「そうか?それはすまない。お兄さんに嫌な顔させてしまったな、可愛い顔なのに勿体ない」

 カミラがそう言った瞬間、周りはシンっと静まり返る。ノアはフリーズし、周りの者達も似たような反応を見せる。それもそうかもしれない。この話しかけてきた男は身長が高く、ガタイもいい。しかも所々に冒険者ゆえの傷が見られる。顔も全く手入れされてないのがわかるほど無精髭のおっさんだ。一般的なかわいいとはかけ離れている。

「は?バカにしてんのか?」

 一番最初に声を出したのは男だった。椅子から勢い良く立った瞬間わなわなと震え、怒りが今にも爆発しそうである。

「いや?…悪いがどこの部分がバカにしたような発言に聞こえたのか聞いてもいいか?」

 こちらはこちらで本当のことを言っただけなのにというように困惑気味で聞き返す。

「そんなの俺を…!」
「あ!お兄さんと呼んでしまったことか、見た目で勝手に年齢を決めて呼んでしまったんだな、なるべくそういうことには気にかけていたんだが…難しいな。本当にすまない…えっと、名前は?」
「え?あ、あぁ…ルド」
「ルドさん、怒らせてしまって申し訳ない。今後は気をつけよう」

 椅子から立ち上がると、ルドの前に片膝をつけて右手で彼の手を取る。その手に額をくっつけて、目を閉じた。まるで騎士と姫のような光景だが、周りどころか本人ですらポカンと呆気にとられている。

「もういい…恥ずかしいから早く立ってくれ」

 カミラがそろっと立ち上がると、男の顔からは怒りは抜け落ち、疲れきったようにポスンと後ろにあった椅子へと腰を下ろした。

「書類…書くんだろ…」
「あ、そういえばそうだったな」

 するとカミラも席に座り、再びペンを手に取った。書類は質問式で文で書き込む欄や選択する欄で分かれている。簡単なものもあるが、なかなか難しい内容もあり、頭を悩ませるものであった。

「師匠、これどう書き込めばいいですか?」
「どこだ?…これは、どう書けばいいんだ?」

 呟くように言うと、ボーッと書き込む場面を見ていたルドが口を開く。

「ここは役職を書き込めばその役職に関連した項目へと変わる。あんた達、役職は?」
「冒険者じゃだめなのか?」
「それでもいいが…冒険者よりは他の役職も示した方がいいだろな。今どき冒険者のみを役職としてるやつは少ない。誰もが、ハンターとかけ持ちしてる」
「なるほど…でもなんでかけ持ちしてるんだ?」
「冒険者として登録すると、もし宝を見つけた場合最高5割はギルドに収めないといけねぇんだ。だけどまず宝なんてそんなにホイホイ見つかるわけじゃねぇし、こっちに損しかない。だから金を稼ぐために副職でハンターをするわけよ」
「それなら冒険者として登録しなかったら全てこちらの物なのか」
「それはやめといたほうがいい。最悪、指名手配されて捕まる」
「ふむ、めんどくさいな。だが、ハンターとして登録してもそれはそれで何かあるんだろ?」
「まぁな。一応どの国に入る時も入国料っていうのがかかるんだけどよ、ハンターにはかかんねぇのよ。その代わり最低1回はその国その国でギルドの依頼を受けないといけねぇんだ」
「受けられない場合は?」 
「その国を出る時に出国料がかかる。これが中々高くてなぁ…入国料の5倍かかる所もあんのよ。あん時は参ったぜ…」

 何かを思い出すように天井を見上げ、遠い目をしているのを見るとハンターも中々大変なものだと思い知る。

「他にハンターで何かあるか?そこらへん疎くてな…」
「そうだな…ハンターつっても雑用もこなすんだわ。それこそ薬草を採取したり、雑草むしったりな。要するに戦うだけが ハンターじゃないってことだ。だから戦えない非戦闘員でもハンターとして登録できる。もし戦闘員だったらそういうのもできるが、お貴族様の護衛や商人から頼まれた材料の調達、あとは魔獣の討伐も入ってくるか?」
「なるほど…勉強になる」

 役職によって受けれる依頼の幅が広がるのか…。悪くない。

「戦闘員の場合、強制的に参加させられるものとかあるのか?」
「あるにはあるけどよ、ランクによるな」
「ランク?」
「ありゃ、これも知らねぇのかい。ランクは色によって分けられててな、最低ランクがグリーン、その上はブルー、次はレッド。ここまではハンターであれば誰でも取ることができる。ここから上になると特殊依頼ってな、ちょいと難易度が跳ね上がんのよ。ランクもブロンズ、シルバー、ゴールドの順に上がる。まれにブラックがいるが、世界に数人しかいないエリートだな」
「ほぉ…ちなみにルドさんは?」
「俺はシルバーだ、まだまだだよ」
「そうなのか。ランクの上げ方は?」
「上げ方はシンプルだな、最初の3ランクは指定の数依頼をこなせば上がる。ブロンズから後は現在のランクより上のランクに設定された依頼をこなせればあがる。ちなみにさっき言ってた強制参加の対象になるランクはゴールドだ」
「そういうシステムなのか、だったらブロンズかシルバーを目指したい所だ」
「ははっ簡単に言ってくれるな、俺がシルバーになるまで15年かかったからあんたたちはどれくらいかかるのかねぇ」
「そうなのか、楽しみだ」

挑発的にニヤッとすると、一瞬ぽかんとしたかと思えば突然大笑いし始めた。ひとしきり笑うと一息つく。

「はぁ…俺はとんでもないやつと知り合ってしまったみてぇだな。何で悩んでたのかもう忘れちまったよ。…旅は気をつけて行きな、応援してるぜ」
「ふふ、ありがとう。親切な人に会えてよかったよ」

ルドの協力もあって書類が書き終わり、受付に提出する。

「…はい!書類は大丈夫です。念の為、冒険者とハンターの両立での登録でお間違いないですか?」
「はい、間違いありません」
「確認ありがとうございます。では今から手続きに移ります。まずは注意点から説明させていただきますね」

注意点は要約するとこんな感じだ。
まずは冒険者について。
・ランクが上がるごとに宝を見つけた場合の収める割合が高くなり、最高は5割
・交通費や必需品など全て自己負担
・怪我をしても自己責任
次はハンターについての説明を受ける。
・ランクによるが月に最低限受ける依頼の数が違う
・入国費はかからないが、特にその国のギルドで依頼を一度も受けてない場合は出国する際に入国費に加え、30%上乗せで支払う
・5年に1度の更新を行なわない場合は死亡とみなす

「と、このようなシステムとなっております。分からない点などございましたらお尋ねください。注意点に同意して頂けましたら、登録に移ります」
「はい、お願いします」
「かしこまりました。では登録費として銅貨5枚、もしくは銀貨1枚となります。銅貨の場合は1番下のグリーンランクから始めていただきます。銀貨の場合はブルーランクからですね」
「では銀貨でお支払いします」
「…はい!お二人様合わせての銀貨2枚ちょうどお預かりします。」

銀貨をしまい込むと、下から登録物であるカード、腕輪、指輪、首飾りを出してきた。登録はこの3つから選べるらしい。また登録物は何度でも変更可能とのことだ。

「ではカードでお願いします」
「僕も同じので」

2枚分を机の上に置かれる。カードの右側にある白の紋章に指先を置いて、青色に光れば登録完了。カードをなおして建物をあとにした。

「はぁ…これで終わったなぁ、二度手間だ」
「あの…師匠…」
「なんだ?疲れた顔してるな」
「…ルドさんのことかわいいとか言ってましたけど、ああいう方が…好みなんですか」
「好み…?さぁ…?」
「さぁ…って…」
「好みと言われても特にないからなぁ…」
「で、でも…膝ついて手を握ってたじゃないですか!」
「あぁ…あれか。今でも通じるんだな、ああいうの」

カミラは意外とでも言わんばかりに目を開いてわざとらしく表情を作る。それを聞いたノアはキョトンとしていた。

「なんというか…彼の予想してないような行動を取れば一旦止まるかと思ったんだ。空気を読まない行動をしたらより怒るか放心するかのどっちかが多いからな」
「じゃあ…可愛いって言ったのは嘘なんですね!」
「別に嘘では無い。私は予想にない行動をしただけで嘘はついてない」
「え、本気でかわいいと思ったんですか…?嘘ですよね?」
「…ノア、その質問はお前の押しつけか?」

やらかした。声色が違うし、さっきよりも周囲が寒い。これは…ちょっとキレてる。

「そんなつもりじゃ…」
「じゃあどんなつもりかな?私にはあの人をかわいいと思うなんておかしいって意味に聞こえたが?」

図星だった。人の美的感覚をどうこう言えないが、自分はかわいいとは思えなかった。どちらかというとかっこいいとかたくましいの方が合っている。

「俺にはあまりかわいいと思えなくて…どちらかというとかっこいいとかの方が似合うかなって…」
「美的感覚なんて皆違うだろ?別にそう思ったならそれでいい、だが相手の感じたものを否定することだけはするな」
「…はい」
「ちなみにかっこいいと思ったのは?」
「え?」
「私はあの丸っこい感じがかわいいと思ったんだ。私がこう思ったようにお前もかっこいいと思った理由があるんだろ?」
「…特にどこがかっこいいと思ったわけでは無いですがあえていうなら体格ですかね」

直感でついかっこいいと言ってしまったが、後々考えてみると自分には無い体格や筋肉が羨ましかったのかもしれない。

「ほぉ…なるほどな、確かに筋肉がよくついていたな」

否定はせず、ただ相手の意見を善し悪しつけずに聞く姿勢に先程の話の内容が少しだけわかったような気がした。話をしているといつの間にか家に着き、扉を開けてふと思う。

どうして師匠は人の心のようなものに敏感なんだろうか…。人との関わりがほとんど無いと言う割にはとても慣れている。

どうしてかと聞きたくなったが、なんとなく今聞いても答えてくれない気がして言葉を飲み込む。その日はそのまま疑問を抱えたままベッドへと入った。

ノアがベッドで睡魔が来た頃、カミラはリビングの椅子に座り、窓から差し込む月の光を見て物思いにふけていた。

あれがかっこいいという部類なのか。多分ノアの方が一般的な反応に近いんだろうな…。
正直私にとってはあの場にいた者全てかわいいだのかっこいいだの本気で思えなかった。あの者達への感じ方はそこらへんの石への感じ方と一緒だ。特に魅力を感じることも無く注意して見なければ目にもとまらない程度。注意して見たとしても例えばその丸さや滑らかさがまぁかわいいに近いんだろうなというような曖昧さ。要するにどうでもいい。

「私は薄情者ってやつかな」

他の神獣共は同族を見守り、慈しんでいる。あの蛇ですらだ。それに比べて私はどうだろうか。ノアに対して成長して欲しいと思う反面、人類などどうでもいいと思ってしまう自分もいる。ここ最近自分が何者なのか分からなくなってきていた。だからそれも含めて私は旅に出ることにしたのだ。
まぁどうせ私の目的はついでだから何も分からなくていい…あの子がいつか1人になっても生きていけるくらいの経験を積ませられればそれでいい。
そうだ、だからノア…その思いは一生私に告げないでくれ。

「私はもう長くないかもしれないからな…」

月が雲に隠れたのか窓からの光が途絶える。カミラの声にもならないような呟きは途絶えた光と共に消えていった。
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