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第十九章 旅に出る弟子と騎士
438.熱い祝福
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テオの気配が感じられたのは、俺の身体が回復してきてからということか。
サラマンダー様がテオへ意識を向けたときに、テオがちょうどサラマンダー様の指輪を身に着けていたんだろう。
父さんからもらった指輪は魔道具としても優秀だから、身に着けていても無駄にはならないはずだ。
「これでレイヴンとの旅も意味があるってもんだよな。必ずテオドール様を連れて帰らないと」
「だね。無事だの一言も伝えてこない辺りが本当に腹立つけど……無事に王命も果たせそうで良かった」
シルフィード様も俺とウルガーのやり取りを聞きながら笑っていてくれたけど、そうだ! と急に思い出したように声をあげる。
サラマンダー様が、なんだ? と少し嫌そうにおっしゃっていて、お互いに気心が知れた仲なのだろうなと逆に想像させた。
「レイヴンもこうして前向きに頑張るんだって宣言してる訳だし、サラマンダーも祝福してあげたらどう? 強い者が好きっていうのも分かるけどさ。レイヴンも強い子だよ」
「以前の戦いで十分見せてもらった。テオドールは戦い慣れているのもあるし、人間の癖に魔力の量が破格だ。アレは別格としても十分に資格はありそうだ」
「え……? 本当ですか?」
シルフィード様からのまさかのご提案だったけど、サラマンダー様まで?
急な話に自然と背筋が伸びる。
「良かったじゃねぇか、坊主。サラマンダー様から認められるほど強そうには見えねぇが、シルフィード様は認めてるんだもんな?」
「僕だけじゃないよ。ウンディーネもね。まあ、ウンディーネはレイヴンの母親だから余計にね」
ブロさんにまたバシバシと叩かれていたんだけど、シルフィード様がサラッと言っちゃうからドワーフの皆さんから驚きの声があがる。
母さんは……前のウンディーネ様から力を引き継いで精霊となった元人間な訳なんだけど……そこを話してないと、エルフのハーフだし精霊王のハーフみたいなことになっちゃうよな。
「へえ! 綺麗な顔をしてるとは思ったけど、あんたすごいじゃないか!」
ここまで案内してくれたグリさんまで俺のことをバシバシと叩いてくる。
ドワーフの人が喜んでくれるときはバシバシ叩くのが普通なのかな?
それなりに痛い洗礼なんだけど……悪気はないしむしろ褒めてもらってる感じだから何も言えない。
「親父、レイヴンさんが困ってる。今、少し黙って作業しよう」
「ったく、お前はノリが悪いんだってんだ。でもまあ、精霊王様たちの話の邪魔をしちゃいけねぇ。わしらは作業に戻るからゆっくりと話してくんな!」
「ありがとうございます」
マグさんは気遣いまでできる人らしい。ブロさんと他の皆さんも鍛冶作業に戻っていく。
残された俺たちは、サラマンダー様の言葉を待つ。
「レイヴン、祝福する前に一つだけ確認しよう。お前は私の力を使ってどうしたい?」
「そうですね……俺は、まだまだ未熟だと思っています。特に魔法以外の戦闘になると皆の足を引っ張ってしまいます。なので、お力をお借りできるのならば戦術の幅を広げたいです」
俺は思うままをそのままサラマンダー様に伝える。シルフィード様も、真面目な子なんだよ。とにこやかに俺のことを褒めてくれる。
でも……俺はテオのように特化した強さはないと思う。
だから、正直サラマンダー様の祝福を受ける権利があるかどうかは分からない。
「確かに、私の力はシルフィードと比べてもより実践的かもしれないな。いいだろう、強くなりたいというその純粋な気持ちに免じて祝福を与えよう」
サラマンダー様は俺の頭上に手をかざすと、熱くみなぎるような力を送ってくれる。
これが祝福なのだとすぐに理解した。
「……ありがとうございます。これからも精進します」
「シルフィードの言う通り、とても勤勉な性格のようだ。あのテオドールとは大違いだな」
「サラマンダー様、テオドール様はある意味人間離れしている人ですので。あの人は人間じゃないと思っていただいた方がいいと思いますよ」
ウルガーの軽口に、サラマンダー様もなるほどなと納得したみたいだ。
精霊王様にも認められる人外っぷりって……テオって本当におかしな人なんだろうな。
サラマンダー様がテオへ意識を向けたときに、テオがちょうどサラマンダー様の指輪を身に着けていたんだろう。
父さんからもらった指輪は魔道具としても優秀だから、身に着けていても無駄にはならないはずだ。
「これでレイヴンとの旅も意味があるってもんだよな。必ずテオドール様を連れて帰らないと」
「だね。無事だの一言も伝えてこない辺りが本当に腹立つけど……無事に王命も果たせそうで良かった」
シルフィード様も俺とウルガーのやり取りを聞きながら笑っていてくれたけど、そうだ! と急に思い出したように声をあげる。
サラマンダー様が、なんだ? と少し嫌そうにおっしゃっていて、お互いに気心が知れた仲なのだろうなと逆に想像させた。
「レイヴンもこうして前向きに頑張るんだって宣言してる訳だし、サラマンダーも祝福してあげたらどう? 強い者が好きっていうのも分かるけどさ。レイヴンも強い子だよ」
「以前の戦いで十分見せてもらった。テオドールは戦い慣れているのもあるし、人間の癖に魔力の量が破格だ。アレは別格としても十分に資格はありそうだ」
「え……? 本当ですか?」
シルフィード様からのまさかのご提案だったけど、サラマンダー様まで?
急な話に自然と背筋が伸びる。
「良かったじゃねぇか、坊主。サラマンダー様から認められるほど強そうには見えねぇが、シルフィード様は認めてるんだもんな?」
「僕だけじゃないよ。ウンディーネもね。まあ、ウンディーネはレイヴンの母親だから余計にね」
ブロさんにまたバシバシと叩かれていたんだけど、シルフィード様がサラッと言っちゃうからドワーフの皆さんから驚きの声があがる。
母さんは……前のウンディーネ様から力を引き継いで精霊となった元人間な訳なんだけど……そこを話してないと、エルフのハーフだし精霊王のハーフみたいなことになっちゃうよな。
「へえ! 綺麗な顔をしてるとは思ったけど、あんたすごいじゃないか!」
ここまで案内してくれたグリさんまで俺のことをバシバシと叩いてくる。
ドワーフの人が喜んでくれるときはバシバシ叩くのが普通なのかな?
それなりに痛い洗礼なんだけど……悪気はないしむしろ褒めてもらってる感じだから何も言えない。
「親父、レイヴンさんが困ってる。今、少し黙って作業しよう」
「ったく、お前はノリが悪いんだってんだ。でもまあ、精霊王様たちの話の邪魔をしちゃいけねぇ。わしらは作業に戻るからゆっくりと話してくんな!」
「ありがとうございます」
マグさんは気遣いまでできる人らしい。ブロさんと他の皆さんも鍛冶作業に戻っていく。
残された俺たちは、サラマンダー様の言葉を待つ。
「レイヴン、祝福する前に一つだけ確認しよう。お前は私の力を使ってどうしたい?」
「そうですね……俺は、まだまだ未熟だと思っています。特に魔法以外の戦闘になると皆の足を引っ張ってしまいます。なので、お力をお借りできるのならば戦術の幅を広げたいです」
俺は思うままをそのままサラマンダー様に伝える。シルフィード様も、真面目な子なんだよ。とにこやかに俺のことを褒めてくれる。
でも……俺はテオのように特化した強さはないと思う。
だから、正直サラマンダー様の祝福を受ける権利があるかどうかは分からない。
「確かに、私の力はシルフィードと比べてもより実践的かもしれないな。いいだろう、強くなりたいというその純粋な気持ちに免じて祝福を与えよう」
サラマンダー様は俺の頭上に手をかざすと、熱くみなぎるような力を送ってくれる。
これが祝福なのだとすぐに理解した。
「……ありがとうございます。これからも精進します」
「シルフィードの言う通り、とても勤勉な性格のようだ。あのテオドールとは大違いだな」
「サラマンダー様、テオドール様はある意味人間離れしている人ですので。あの人は人間じゃないと思っていただいた方がいいと思いますよ」
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