378 / 483
第十五章 自信満々な魔塔主と更に強くなった弟子
376.迎え
しおりを挟む
イライラしながら魔塔に戻り、一旦レイヴンと別れて準備を始める。
大体の準備はしておいたが、真面目なレイヴンは詳細な指示を最後に確認しておきたいらしい。
俺は自室に戻ってから回復系のビンを取り付けたベルトを付け直し、魔道具各種を装備する。
身に着ける装飾品も合わせると、かなりの重量になっちまうんだよなァ。
回復系は聖女がいれば量は多くなくてもいいが、今回は慎重にならざるを得ない。
「あー……面倒臭ぇ。魔族野郎ごと一気にぶっ潰すしかねぇな」
速攻で終わらせて、レイヴンとだらだらしねぇとな。
後は愛用の煙草を懐に忍ばせて、エルフの里で手に入れたローブを羽織る。
このローブは炎や氷への耐性魔法がかかったローブだ。
深い緑はエルフたちの色を彷彿とさせるが、能力値は悪くない。
「レイヴンと一緒に買った腕輪に、クレインからもらったサラマンダーの指輪もあるし。後は大体魔力増幅系だから問題ねぇな」
身支度を整えて、一度自身の部屋を振り返る。
やり残したことはねぇし、どうせすぐ帰ってくるから適当でいいだろ。
最後にベッドを一瞥してから部屋を出て扉を閉めた。
+++
レイヴンと合流し、待ち合わせ場所の城門前へ向かう。
城門前にはディーとウルガーがいた。俺らが合流したところで、小走りの聖女が追い付いてやってくる。
「ごめんなさいね。神官たちの話が長くて。巻いてくるのに時間がかかってしまったわ」
「聖女様までいらっしゃるとは。昔を思い出します」
「ディーちゃんもいつも元気そうね。ウルガーちゃんも今日も可愛らしいわ」
「え、俺ですか? ありがとうございます。聖女様も今日もお美しいですね」
ウルガーの誉め言葉に、あらありがとうとかぬかしやがって。
ウルガーもコイツの中身が男ってことを知ってる癖に、相変わらず口が上手いヤツだ。
俺らは頷き合って、招待状を手に歩き始めた。
だが、少し歩いたところで予想通り迎えが来る気配を察知する。
目の前の景色が急に一部分だけ仄暗くなり、不自然にじわじわと歪んでいく。
「この気配は……みんな下がって! 来るわよ!」
「邪悪への察知力は俺らより早いってか。さすがは聖女様だな。心配しなくても、どうせただの使いだろ。俺らはご招待されてる訳だしな」
鼻で笑い飛ばしてやると、歪んだ空間からスゥっと一匹の黒猫が姿を現した。
黒猫は首輪に着いた鈴をチリンチリンと鳴らしながら、ゆったりとした足取りで俺らの方へ歩み寄ってくる。
『どうやら準備ができたみたいだな。待った甲斐があったというものだ』
「うわ! 黒猫が喋った!」
「ウルガー! しーっ!」
ウルガーとレイヴンのやり取りは可愛いもんだが、コイツの中身は全く可愛くねぇからな。
猫の姿を借りようと、聖女みたいに警戒しておくのが正解だな。
俺も念のため警戒しながら、目線で話の先を促す。
「御託はいいから、さっさと待ち構えてるところへ連れてけ。俺らも暇じゃねぇんだよ。さっさと終わらせてやる」
「そうだな。その意見には同意する。我々は事態を収拾させる義務がある。迅速に事を進めて行かなくてはならない」
「同感だわ。穢らわしい魔族たちの言葉に耳を傾ける必要はないし、女神ミネルファリア様の命で悪しき者は滅するべしとお告げがあったのよ」
俺らが敵意をむき出しにしてやると、黒猫の姿に似つかわしくない嘲笑が聞こえてきた。
魔族ってヤツは鼻につく野郎だ。自分たち以外の種族を見下し、愉しむために色々と小細工しやがるからな。
『ほう、女神の力を授かった者まで参加してくれるとは。これは面白くなってきたな。期待させてもらおう。では、我らの麗しき舞台へ案内しよう。ついてこい』
黒猫はひとしきり笑った後で俺らに背を向けてゆっくりと歩きだす。
その先には先ほど開いた歪んだ空間がぽっかり空いている。
俺とレイヴンも視線を軽く交わして頷き合い、黒猫の後に続いて歪んだ空間へ足を踏み出した。
大体の準備はしておいたが、真面目なレイヴンは詳細な指示を最後に確認しておきたいらしい。
俺は自室に戻ってから回復系のビンを取り付けたベルトを付け直し、魔道具各種を装備する。
身に着ける装飾品も合わせると、かなりの重量になっちまうんだよなァ。
回復系は聖女がいれば量は多くなくてもいいが、今回は慎重にならざるを得ない。
「あー……面倒臭ぇ。魔族野郎ごと一気にぶっ潰すしかねぇな」
速攻で終わらせて、レイヴンとだらだらしねぇとな。
後は愛用の煙草を懐に忍ばせて、エルフの里で手に入れたローブを羽織る。
このローブは炎や氷への耐性魔法がかかったローブだ。
深い緑はエルフたちの色を彷彿とさせるが、能力値は悪くない。
「レイヴンと一緒に買った腕輪に、クレインからもらったサラマンダーの指輪もあるし。後は大体魔力増幅系だから問題ねぇな」
身支度を整えて、一度自身の部屋を振り返る。
やり残したことはねぇし、どうせすぐ帰ってくるから適当でいいだろ。
最後にベッドを一瞥してから部屋を出て扉を閉めた。
+++
レイヴンと合流し、待ち合わせ場所の城門前へ向かう。
城門前にはディーとウルガーがいた。俺らが合流したところで、小走りの聖女が追い付いてやってくる。
「ごめんなさいね。神官たちの話が長くて。巻いてくるのに時間がかかってしまったわ」
「聖女様までいらっしゃるとは。昔を思い出します」
「ディーちゃんもいつも元気そうね。ウルガーちゃんも今日も可愛らしいわ」
「え、俺ですか? ありがとうございます。聖女様も今日もお美しいですね」
ウルガーの誉め言葉に、あらありがとうとかぬかしやがって。
ウルガーもコイツの中身が男ってことを知ってる癖に、相変わらず口が上手いヤツだ。
俺らは頷き合って、招待状を手に歩き始めた。
だが、少し歩いたところで予想通り迎えが来る気配を察知する。
目の前の景色が急に一部分だけ仄暗くなり、不自然にじわじわと歪んでいく。
「この気配は……みんな下がって! 来るわよ!」
「邪悪への察知力は俺らより早いってか。さすがは聖女様だな。心配しなくても、どうせただの使いだろ。俺らはご招待されてる訳だしな」
鼻で笑い飛ばしてやると、歪んだ空間からスゥっと一匹の黒猫が姿を現した。
黒猫は首輪に着いた鈴をチリンチリンと鳴らしながら、ゆったりとした足取りで俺らの方へ歩み寄ってくる。
『どうやら準備ができたみたいだな。待った甲斐があったというものだ』
「うわ! 黒猫が喋った!」
「ウルガー! しーっ!」
ウルガーとレイヴンのやり取りは可愛いもんだが、コイツの中身は全く可愛くねぇからな。
猫の姿を借りようと、聖女みたいに警戒しておくのが正解だな。
俺も念のため警戒しながら、目線で話の先を促す。
「御託はいいから、さっさと待ち構えてるところへ連れてけ。俺らも暇じゃねぇんだよ。さっさと終わらせてやる」
「そうだな。その意見には同意する。我々は事態を収拾させる義務がある。迅速に事を進めて行かなくてはならない」
「同感だわ。穢らわしい魔族たちの言葉に耳を傾ける必要はないし、女神ミネルファリア様の命で悪しき者は滅するべしとお告げがあったのよ」
俺らが敵意をむき出しにしてやると、黒猫の姿に似つかわしくない嘲笑が聞こえてきた。
魔族ってヤツは鼻につく野郎だ。自分たち以外の種族を見下し、愉しむために色々と小細工しやがるからな。
『ほう、女神の力を授かった者まで参加してくれるとは。これは面白くなってきたな。期待させてもらおう。では、我らの麗しき舞台へ案内しよう。ついてこい』
黒猫はひとしきり笑った後で俺らに背を向けてゆっくりと歩きだす。
その先には先ほど開いた歪んだ空間がぽっかり空いている。
俺とレイヴンも視線を軽く交わして頷き合い、黒猫の後に続いて歪んだ空間へ足を踏み出した。
5
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜
ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。
恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。
※猫と話せる店主等、特殊設定あり
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる