【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

文字の大きさ
上 下
297 / 483
第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子

295.見回り中に

しおりを挟む
 魔塔に戻った俺たちは、陛下から下された命を遂行するために魔法使いたちを招集する。
 説明役は俺ではなくレイヴンだ。
 俺が説明すると妙に緊張しやがって青ざめるヤツもいるし、単純に嚙み砕いて分かりやすく説明するのは面倒なんだよな。
 その点、俺の弟子は優秀な真面目君だから人望も厚いし、説明役にピッタリだ。

「――以上。私と魔塔主様を含む隊を組む。今回は街中での戦闘になることも考慮し、基本は捜索サーチの精度が高い者で探索をし、怪しい物、気配、気になることを見つけたら逐次報告。戦闘に入る場合は基本補助、私と魔塔主様で攻撃魔法を使用する」

 レイヴンが俺に話を締めろと目くばせしてくる。
 たまにはちゃんと言えってことかぁ? 仕方ねぇ。
 
「……と、言うわけだ。お前ら、気合い入れろよ。怪しいヤツを見つけたらすぐに報告しろ。俺とレイヴンが攻撃を始めたら、手の空いてる者は街をうろついてる騎士を呼んでこい」
 
 説明を引き継いで追加事項を述べた後、見回りに出る隊を組む者たちを選出する。
 少人数で隊を組み、基本の戦闘は俺とレイヴンが担当する。
 街中での戦闘は、騎士が主体で動くことになってるからな。
 魔法使い隊は、補助魔法が得意な者を選抜して探索をし、結果を俺らに報告する流れだ。

「補佐官様、よろしくお願いします」
「あぁ、よろしく頼む」

 レイヴンに挨拶している若いのも、確か補助系が得意なヤツだ。
 聞いた話だと、判断能力に優れていて補助魔法をかける順番もきちんと理解しているらしい。
 補佐官殿から、将来性と伸びしろのありそうなヤツは報告を受けてるからな。
 魔法は年齢じゃねぇから、経験が浅くてもやる気があるヤツはどんどん実地に出た方がいい。
 
 魔法使いは前線に立つことが少ないし、基本は後方支援だからな。
 攻撃魔法も重要だが、いかに味方の被害を少なくする補助ができるのかってのも重要だ。
 慣れてりゃ前線で戦う騎士の後ろから攻撃魔法をぶっ放してもいいが、騎士を巻き込んだら意味がねぇ。

 ……ってのが正論だが、俺からしたら魔法が飛んで来たら避けろって話なんだよな。
 俺やレイヴンくらい上手く操ることができれば、魔法使いとしても一人前なんだが。
 最近はきな臭い召還陣のせいでバタついてるが、魔法使いが出張る事案なんてねぇのが現状だ。
 いざというときのために鍛錬するくらいしか、今はやることがねぇからな。

 +++

 俺とレイヴン、他八名の魔法使いで城下町へと向かいまずは通りを普通に歩く。
 現在の時間は夕刻すぎ。
 少しずつ暗くなる時間帯だ。

『こちらは異常ありません』
「引き続き西通りを――師匠、私たちは裏通りを……」

 レイヴンが通信用の耳飾りの魔道具で他の魔法使いと連絡を取りあっているのを聞きながら、俺も捜索サーチを広範囲にかけて異常がないか探る。
 急に足が止まったレイヴンの視線の先を見遣ると、小さな影がふっと路地裏へと消えるのが見えた。

「あれは……? おかしい、この道の先に住居なんてないはずなのに」

 言うと同時に、レイヴンは何も言わずに走り出しちまった。

 「おい、先走るんじゃねぇって。レイヴン! ――いいか? お前らはさっさと騎士を呼んでこい。この道から出て左に真っすぐ走ると、副団長のウルガーがいるはずだ」
「分かりました!」

 捜索サーチで見つけていた、この場所から一番近くて使えるヤツのところに行くように指示をだす。
 俺の後ろからついてきていた魔法使い二名は、慌てて言われた通りに背中を向けて必死に走り出す。
 確認して俺もすぐに、レイヴンの後を追いかけた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。 恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。 ※猫と話せる店主等、特殊設定あり

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

処理中です...