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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子
258.扉の奥には
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相変わらず不機嫌な顔しかしてねぇアスシオの野郎に、手をヒラっとして声をかける。
「ちょうどいいところに来たな。禁書を見たかったんだよ。お前なら許可出せるよな?」
「いきなり何を仰っているのか分かりませんが、ご説明頂けますか? 補佐官殿」
「不躾な対応で申し訳ありません。現在調査中の件に関して、参考になる魔法書があるかと探していたのですが。魔法についてのより詳しい書があればと思い、禁書を閲覧する許可を頂きたく存じます」
なんで俺の説明で伝わらねぇみたいな顔するのか、意味が分からねぇな。
普通に言ってやったのに、俺の言うことは全部耳を通り抜けてんのかぁ?
レイヴンがクソ丁寧に改めて願い出ると、アスシオも瞬時に思案して俺のことは一瞥もせずに、レイヴンへと向き直る。
俺が仕方なく二人のやりとりを見ながら黙ると、アスシオが小さく頷いた。
「分かりました。魔法に関して我が国では魔塔のお二人に並ぶ者はいませんし、そのお二人がそう仰るのならば。図書館の管理者には私から伝えておきますので、どうぞご覧ください。分かっていらっしゃると思いますが、持ち出しについては許可はできませんので」
「ありがとうございます」
言葉だけで俺を含めやがって。
ホント、ムカつく野郎だよな。
アスシオから正式に許可を取ってやると、禁書が揃う部屋の扉まで三人で向かう。
コイツもなんやかんやでまとめ役みたいなもんだからな。
許可って意味では、権力はあるから問題ねぇんだよな。
扉は年季の入った木製の扉だが、結界は厳重に張られている。
近くまで来ると、薄く透明な赤い円状の文字の羅列が、目の前を阻んでいるのが見える。
魔法に精通してない普通のヤツには、見えない代物だがな。
勘が鋭いヤツなら、違和感として感じることができる。
ぶっちゃけ無理やり外せるんだが、レイヴンが文句を言うからなぁ。
それに、同じように張り直すのも面倒臭ぇし。
たぶん、俺の方が無意識で頑丈な結界を貼れちまうんだよな。
「さぁて。勿論、今、結界を外してくれるんだよな」
「私でも外せますが、本来は管理者が外すものであって……」
「すみません、後ほど全ての申請をさせて頂きますので。お願いします」
「……仕方ありませんね。補佐官殿がそう仰るならば」
俺を一瞥してから、アスシオは近くの本棚から一冊の本を取り出した。
見たからって、なんだってんだよな。
覚えたっていちいちくだらねぇことで、悪用したりしねぇってのによ。
取り出した本は、一見何の変哲もない本だ。
その本を開くと中がくり抜かれており、鈍く光る赤い珠が入っている。
アスシオはそれを手に取り、結界へと触れさせる。
すると、赤色の結界がサラと消え去った。
「魔道具で消せるのか。そりゃ楽だな」
「ただ、偽物がたくさん紛れていますので。間違えますと警告音が鳴り響き、結界はさらに強固なものになります。禁書は大変貴重であり、一歩間違えれば大変なことになるものもありますから」
「確かに。悪用されることは避けなくてはいけませんからね」
遠慮なく扉に手を掛けると、グッと押し開く。
部屋の中は、目の前が見えないほどでもねぇが、薄暗い。
掃除は行き届いているみてぇだが、奥まった場所でもあるせいか表の図書館より静かで、静寂に包まれている。
静寂は行き過ぎると何となく落ち着かねぇし、多少の重苦しさまで感じる。
全員が中へと入ると、結界はまたすぐに作動して扉を覆っていった。
「なかなか良くできてる結界じゃねぇか。さぁて、折角頂いた機会ってヤツだ。真面目に読ませてもらうとするか」
「……いつも真面目にしていてください。だから勘違いされるんですよ」
俺らのやり取りを聞いているかいないのか、アスシオは俺らから離れ、扉の近くにあった椅子を引いて腰掛けた。
「ちょうどいいところに来たな。禁書を見たかったんだよ。お前なら許可出せるよな?」
「いきなり何を仰っているのか分かりませんが、ご説明頂けますか? 補佐官殿」
「不躾な対応で申し訳ありません。現在調査中の件に関して、参考になる魔法書があるかと探していたのですが。魔法についてのより詳しい書があればと思い、禁書を閲覧する許可を頂きたく存じます」
なんで俺の説明で伝わらねぇみたいな顔するのか、意味が分からねぇな。
普通に言ってやったのに、俺の言うことは全部耳を通り抜けてんのかぁ?
レイヴンがクソ丁寧に改めて願い出ると、アスシオも瞬時に思案して俺のことは一瞥もせずに、レイヴンへと向き直る。
俺が仕方なく二人のやりとりを見ながら黙ると、アスシオが小さく頷いた。
「分かりました。魔法に関して我が国では魔塔のお二人に並ぶ者はいませんし、そのお二人がそう仰るのならば。図書館の管理者には私から伝えておきますので、どうぞご覧ください。分かっていらっしゃると思いますが、持ち出しについては許可はできませんので」
「ありがとうございます」
言葉だけで俺を含めやがって。
ホント、ムカつく野郎だよな。
アスシオから正式に許可を取ってやると、禁書が揃う部屋の扉まで三人で向かう。
コイツもなんやかんやでまとめ役みたいなもんだからな。
許可って意味では、権力はあるから問題ねぇんだよな。
扉は年季の入った木製の扉だが、結界は厳重に張られている。
近くまで来ると、薄く透明な赤い円状の文字の羅列が、目の前を阻んでいるのが見える。
魔法に精通してない普通のヤツには、見えない代物だがな。
勘が鋭いヤツなら、違和感として感じることができる。
ぶっちゃけ無理やり外せるんだが、レイヴンが文句を言うからなぁ。
それに、同じように張り直すのも面倒臭ぇし。
たぶん、俺の方が無意識で頑丈な結界を貼れちまうんだよな。
「さぁて。勿論、今、結界を外してくれるんだよな」
「私でも外せますが、本来は管理者が外すものであって……」
「すみません、後ほど全ての申請をさせて頂きますので。お願いします」
「……仕方ありませんね。補佐官殿がそう仰るならば」
俺を一瞥してから、アスシオは近くの本棚から一冊の本を取り出した。
見たからって、なんだってんだよな。
覚えたっていちいちくだらねぇことで、悪用したりしねぇってのによ。
取り出した本は、一見何の変哲もない本だ。
その本を開くと中がくり抜かれており、鈍く光る赤い珠が入っている。
アスシオはそれを手に取り、結界へと触れさせる。
すると、赤色の結界がサラと消え去った。
「魔道具で消せるのか。そりゃ楽だな」
「ただ、偽物がたくさん紛れていますので。間違えますと警告音が鳴り響き、結界はさらに強固なものになります。禁書は大変貴重であり、一歩間違えれば大変なことになるものもありますから」
「確かに。悪用されることは避けなくてはいけませんからね」
遠慮なく扉に手を掛けると、グッと押し開く。
部屋の中は、目の前が見えないほどでもねぇが、薄暗い。
掃除は行き届いているみてぇだが、奥まった場所でもあるせいか表の図書館より静かで、静寂に包まれている。
静寂は行き過ぎると何となく落ち着かねぇし、多少の重苦しさまで感じる。
全員が中へと入ると、結界はまたすぐに作動して扉を覆っていった。
「なかなか良くできてる結界じゃねぇか。さぁて、折角頂いた機会ってヤツだ。真面目に読ませてもらうとするか」
「……いつも真面目にしていてください。だから勘違いされるんですよ」
俺らのやり取りを聞いているかいないのか、アスシオは俺らから離れ、扉の近くにあった椅子を引いて腰掛けた。
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