【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子

259.真面目にやればできる師匠

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 見張ってるつもりなんだか、よく分からねぇアスシオは放っておいて、俺たちは本棚の前へと向かう。
 俺がそれっぽい本を適当に流し読みしていく傍で、レイヴンも積極的に本を手に取り、斜め読みで内容を必死に頭の中へと叩き込んでいるのが分かる。
 持ち出したいところだが、たぶんバレたら面倒だしな。
 そうなりゃ、記憶するしかねぇし。

 貴重な魔法や薬草、魔道具についてなど、魔法使いに関係のある本から世界の歴史についてなど、読み始めればキリがねぇ。
 まぁ陛下にお願いすれば、そこまで苦労せずに入れそうだから俺は気楽なもんだがな。

「……相手を呪う方法、か。こういうのを使われると厄介だ。祓うことができるのは聖女様くらいだろうから。うん……昔から合成獣キメラについては研究している集団が……」

 レイヴンが独り言も含めて本の内容に没頭しているのを見ると、からかってやりたくなってくる。
 本の上に影が差し込んだことに気付いたレイヴンが顔をあげる。
 
 ニヤリと笑った俺と目が合って驚いて、反射的に飛び退いた。

「人の顔を見て飛び退くとか、何を驚いてんだ?」
「驚くでしょう! 声をかけてくださいよ。それで、テオは何か見つけたんですか?」
「あぁ。ちょっとイイもんも見つけたしな。あの召喚陣については、この本に似たようなのが書いてあったな」
「イイもんって……まぁ、いいです。それより、召喚陣が?」

 俺が開いた本をレイヴンも覗き込む。
 この本にはこの前、エルフの森で発見した召喚陣に似通った図が書かれていた。

「この辺りの文言、で、この形ときた。まぁ、異形の物を連続で呼び出すっていうのはこの形が元なんだろうなァ。ただ、その種類については独自の研究成果ってとこか」
「確かに。古代魔法の一種なのではと思っていましたけど……昔の文献でも手に入れたのでしょうか。それとも、そういった組織と関係が?」
「この基本の形だけは覚えておいて、後は自分で考えたんじゃねぇか? 自分の力を見せびらかしたいっていう臭いだけはプンプンさせてたからよ」
「性格悪くてやることが厄介って……最悪じゃないですか」

 禁書に書かれているような召喚陣を使いこなすとなると、研究熱心かソイツの裏に知識を持ったヤツが隠れているか、どちらかだろうな。
 レイヴンは難しい顔をして考え込む。
 色々考えちまうのも分かるが、気にするなの意味を含めて、頭の上にポンと手のひらを乗せる。
 不安げな瞳を向けるレイヴンを安心させるためにも口元で笑んで、置いた手のひらで優しく撫でた。

「まぁ、次にしでかしそうなことは何となく予想がついたし。収穫はあったからいいだろ」
「本当はこの本を持ち出して詳しく調べられたらいいんですけど、そういう訳にはいかないですし。何回も入ることができる場所ではありませんからね」
「心配するなって。この本の内容は大体頭に入ったからよ。同じもの作れって言われたらたぶん作れるんじゃねぇか?」
「え……この短時間で記憶したんですか」

 レイヴンが驚きに満ちた表情で固まる。
 俺はポンポンと頭をまた撫ぜて、手のひらで感触を楽しむ。
 一通り楽しんでから、ゆっくりと手を離した。

「まぁな」

 言い切って、得意げに口端をあげて見せる。
 元々召喚陣自体は理解できているし、そこから何をどうやって召喚するのかを組み合わせていけばいい。
 この文字列が読めなかったとしても、大体は何とかなるもんだ。
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