【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第六章 我が道を行く魔塔主と献身的に支える弟子(と騎士二人)

180.野営地での朝は<レイヴン視点>

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 明朝――

 意識が少しずつ覚醒してくる。

 昨日、師匠と喋っていたはずなのに記憶が途切れている。
 起きていると訴えていたのに、確か眠りスリープをかけられたような……。
 瞼を開くと朝の鍛錬なのか剣の素振りに精を出すディートリッヒ様が遠目に見えた。
 
 さすがディートリッヒ様。
 どんな状況でも鍛錬を怠らず、朝は一番に目覚めている。
 本当に尊敬すべきお方だ。

 自分の今の状況を改めて確認しようと目線を落とすと、座ったまま眠っていたことに気がつく。
 同時に自分のお腹側には両腕が回されていて、背中は暖かい。

 この状況……師匠に抱きしめられていて、更にこの状態を確実にディートリッヒ様にも見られていた?

 な、何してくれてんだよ! この人は……っ!

 慌てて拘束から抜け出そうとジタバタし始めるのに、一向に離してもらえない。
 俺の動きで漸く目を覚ました師匠が欠伸をしながら、俺を見遣る。

「んー……? 何だぁ? どうした」
「どうした? じゃ、ありません! 信じられない! 師匠、俺に眠りスリープかけたでしょう? それに、何でこんな……」
「いや、テントまで戻るの面倒だったし。何かレイちゃん抱きしめてたら俺も眠くなったから寝てたわ」
「起きたなら離してください! 俺、顔洗いに行ってくるので!」

 何とか振り解き、未だ納得がいっていない顔をしている師匠を無視して立ち上がる。

 俺に気づいたディートリッヒ様が額の汗を拭って俺の方に歩み寄り、爽やかに笑いかけてくれた。

「おはよう」
「おはようございます。ディートリッヒ様。何だか、すみません。顔を洗ってきますね。出発までまだ時間はありますか?」
「まだ大丈夫だ。ウルガーのヤツは起きていると言ったくせに、また一眠りすると言って寝ているくらいだしな」
「ディートリッヒ様は朝から鍛錬をなさっていて、どこかの師匠とは全く違いますよね。たゆまぬ努力がディートリッヒ様の強さに繋がるというのが良く分かります。俺も見習わないと」
「鍛錬はやらないと身体が訛ってしまうのでな。習慣のようなものだが、レイヴンはいつも俺を褒めてくれるな。ありがとう。周囲はもう安全だと思うが、気をつけてな」

 笑顔で挨拶を交わし、軽く頭を下げてから足早に水場へと向かって歩きだす。

 本当に師匠ときたら。
 俺の話も訴えも聞かずに眠らせるなんて。

 火の番だってしないでディートリッヒ様に押し付けてたのかもしれない。
 後でディートリッヒ様に確認しないといけないな。
 もしそうだったら、俺からきちんと謝ろう。

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