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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子
111.一緒に夕食を
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二人で具材が煮えるのを待ちながら、他愛のない話をする。
レイヴンは、話の途中で鍋の様子を見に行くために席を立った。
出来栄えを確認すると蓋を開けて、ミルクを注ぎ入れていく。
慣れてんなぁ……なかなか手際よく調理してるように見える。
俺は作ったこともねぇし、できたモンを食うばっかりだ。
正直、料理してんなぁくらいしか分からねぇ。
「あとはもう少し温めれば……」
「おーおー。パンを食べ尽くす前にできそうだな? 葡萄酒もまだ残ってるしな」
手元の瓶には半分くらいしか残ってねぇが、しっかりともう一本予備があるからな。
気づいたレイヴンがお決まりのため息を吐く。
「ペース早くないですか? ご機嫌だし」
「ご機嫌に決まってんだろうが。可愛いレイちゃんが、俺のためにご飯を作ってくれてるってんだからよ」
「……言い方が気持ち悪いです」
「何だよ、褒めてんのによー」
くだらないやり取りを無視するように、俺を無視して味見をしにいく。
結果、問題なく出来上がったシチューを、皿に盛り付けていく。
「ほら、師匠。テーブルの上を開けてください。できましたよ、シチュー」
「おー。待ちくたびれたぜ。よし、お前も座れ」
スプーンと共にシチューを二人分運ぶ。
その間にレイヴンはカップに水を注ぎ席に着く。
「頂いたものが美味しいものなので、普段よりは美味しいはずですよ?」
「んな心配してねぇよ。じゃ、早速」
腹も減ってきたし一気に掬って口に運ぶ。
少し熱いが問題ねぇな。
美味い。
レイヴンは軽く手を合わせて、シチューを一口運ぼうとしてからやっぱり止めて、ふーふーと息を吹きかける。
「うん。普通に美味いわ。……何だよ、レイちゃん。猫舌か? にゃんこだけに」
「にゃんこじゃないですけど、さっき味見した時も熱々だったので。ん、良かった。やっぱり美味しい」
ふわ、と嬉しそうに笑うレイヴンを酒の肴にして葡萄酒を流し込む。
「俺は別に料理が得意とかではないですけど、新鮮なものを頂いたのでそのせいですよ。お祭り気分なのか、皆さんいつも以上に気前が良くて申し訳ないくらいで。買い物カゴまで頂いたくらいですからね。祭り当日もきっと盛り上がると思いますよ?」
「盛り上がるのはイイことだな。コッチは面白くも何ともねぇし、俺も街の方に行けば良かったわ。俺が歩けば酒くらいもらえたのにな」
俺の言い分に、それはないですねと、ピシャリと言い放つ。
何か冷たくねぇか?
レイヴンは俺のことなんか気にもとめずに、何か思い出したのか楽しそうに笑いかけてくる。
「ま、妙な輩が入る隙間はねぇから大丈夫だろ。後は面倒臭い神殿のヤツくらいか。アレ、お前もわざわざ衣装きて手伝うんだったよな? 絶対に事前に見せないとか、ババアが煩くて一度も見られなかったが」
「そうですね。師匠、俺がどこにいるか気づかないかもしれませんよ? 俺も自分じゃないみたいな感じでしたからね」
苦笑するレイヴンをじっと見つめる。
俺の視線に気づいて首を傾げるから、分からせるようにニヤリと笑う。
「気づかねぇことあるか。どんなになろうと、お前のことを見失う訳ないだろ」
「そう、ですか? まぁ……印付けてるとか言ってましたし、師匠ならそうかもしれませんね」
言い切られると気恥ずかしくなり、ごまかすようにシチューをもぐもぐと静かに食べ始める。
照れているレイヴンを見てると可笑しくなって、食も進むな。
自然とニヤつきながら、食事とレイヴンの両方を愉しむのは悪癖かもしれねぇが、ま、いいだろ。
レイヴンは、話の途中で鍋の様子を見に行くために席を立った。
出来栄えを確認すると蓋を開けて、ミルクを注ぎ入れていく。
慣れてんなぁ……なかなか手際よく調理してるように見える。
俺は作ったこともねぇし、できたモンを食うばっかりだ。
正直、料理してんなぁくらいしか分からねぇ。
「あとはもう少し温めれば……」
「おーおー。パンを食べ尽くす前にできそうだな? 葡萄酒もまだ残ってるしな」
手元の瓶には半分くらいしか残ってねぇが、しっかりともう一本予備があるからな。
気づいたレイヴンがお決まりのため息を吐く。
「ペース早くないですか? ご機嫌だし」
「ご機嫌に決まってんだろうが。可愛いレイちゃんが、俺のためにご飯を作ってくれてるってんだからよ」
「……言い方が気持ち悪いです」
「何だよ、褒めてんのによー」
くだらないやり取りを無視するように、俺を無視して味見をしにいく。
結果、問題なく出来上がったシチューを、皿に盛り付けていく。
「ほら、師匠。テーブルの上を開けてください。できましたよ、シチュー」
「おー。待ちくたびれたぜ。よし、お前も座れ」
スプーンと共にシチューを二人分運ぶ。
その間にレイヴンはカップに水を注ぎ席に着く。
「頂いたものが美味しいものなので、普段よりは美味しいはずですよ?」
「んな心配してねぇよ。じゃ、早速」
腹も減ってきたし一気に掬って口に運ぶ。
少し熱いが問題ねぇな。
美味い。
レイヴンは軽く手を合わせて、シチューを一口運ぼうとしてからやっぱり止めて、ふーふーと息を吹きかける。
「うん。普通に美味いわ。……何だよ、レイちゃん。猫舌か? にゃんこだけに」
「にゃんこじゃないですけど、さっき味見した時も熱々だったので。ん、良かった。やっぱり美味しい」
ふわ、と嬉しそうに笑うレイヴンを酒の肴にして葡萄酒を流し込む。
「俺は別に料理が得意とかではないですけど、新鮮なものを頂いたのでそのせいですよ。お祭り気分なのか、皆さんいつも以上に気前が良くて申し訳ないくらいで。買い物カゴまで頂いたくらいですからね。祭り当日もきっと盛り上がると思いますよ?」
「盛り上がるのはイイことだな。コッチは面白くも何ともねぇし、俺も街の方に行けば良かったわ。俺が歩けば酒くらいもらえたのにな」
俺の言い分に、それはないですねと、ピシャリと言い放つ。
何か冷たくねぇか?
レイヴンは俺のことなんか気にもとめずに、何か思い出したのか楽しそうに笑いかけてくる。
「ま、妙な輩が入る隙間はねぇから大丈夫だろ。後は面倒臭い神殿のヤツくらいか。アレ、お前もわざわざ衣装きて手伝うんだったよな? 絶対に事前に見せないとか、ババアが煩くて一度も見られなかったが」
「そうですね。師匠、俺がどこにいるか気づかないかもしれませんよ? 俺も自分じゃないみたいな感じでしたからね」
苦笑するレイヴンをじっと見つめる。
俺の視線に気づいて首を傾げるから、分からせるようにニヤリと笑う。
「気づかねぇことあるか。どんなになろうと、お前のことを見失う訳ないだろ」
「そう、ですか? まぁ……印付けてるとか言ってましたし、師匠ならそうかもしれませんね」
言い切られると気恥ずかしくなり、ごまかすようにシチューをもぐもぐと静かに食べ始める。
照れているレイヴンを見てると可笑しくなって、食も進むな。
自然とニヤつきながら、食事とレイヴンの両方を愉しむのは悪癖かもしれねぇが、ま、いいだろ。
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