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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子
112.少しだけ、本音
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「……そういや、葡萄酒。少しだけ飲んでみるか?」
大分腹もこなれてきたところで、瓶を片手に聞くとレイヴンはゆるく首を振る。
「いえ、この前酔ってやらかしたばかりですし。さっきので何となく味は分かりましたから……」
そういってスプーンを一旦置いて、逆に瓶を手にとって俺のグラスへと注いでいく。
「酌、してくれるのか? こりゃまたどういう風の吹き回しだよ」
「まぁ……お祭り前ですからね。師匠も度を越えて飲んでませんし」
「コレはコレは。明日の天気は荒れそうだなァ」
「……一言余計です」
「そりゃあ、コッチの台詞だ」
まさかレイヴンが酌までしてくれるとはな。
素直に喜んじまうよなぁ。
俺と目が合うと、レイヴンも優しく笑いかけてきた。
その割に少し寂しそうにしやがるから、どうせまた余計なことでも考えてるんだろうな。
「……何だよ、また静かになって」
「その、こうやって一緒にご飯を食べる時間もいいなと、思いまして。別に特別なことをしている訳じゃないですけど、師匠は飲みに行くことが多いし。俺は俺で、何となく簡単に済ませていたことが多いから……」
結局、寂しがりなんだよな。
レイヴンは。
今日は本当に素直だ。
もっと我儘言えばいいのによ。
「気にしないでください」
なんて、慌てて取り繕ってるが、本当はそうじゃねぇんだよな。
全く……これくらいのことならいつでも付き合ってやるのに。
食事に没頭しているレイヴンを見つめていると、俺の視線に気づいて顔をそっとあげる。
こっちの言葉を待つように静かに見つめ返してきた。
「な、何ですか? 押し黙って」
「いや、そんなに楽しいなら別に毎日一緒に食えば良くねぇか?」
「別にそういうつもりで言った訳じゃないですから。師匠には師匠の都合があるし、確かに飲みに行くなとは言ってますけど外出しなければ息も詰まると思いますから、気にしなくても……」
慌てて手を振って何事もなかったようにするレイヴンの手を軽く掴んで動きを止める。
ズイと身を乗り出して、さらに距離を縮めるとレイヴンが困り顔で視線を漂わせる。
「ホント、素直じゃねぇなぁ。俺は好き勝手するだけだから、飲みに行きたいと思ったら遠慮しねぇし。だが、寂しがってるにゃんこを無視するほど無神経でもねぇぞ?」
「にゃんこじゃないですけど、何となく……意味は分かります。でも、そんな家族みたいな。師匠と血が繋がっているわけでもないし……」
軽くデコピンし、間髪入れずにくしゃりとレイヴンの髪をかき混ぜる。
ここまで育ててきてるんだから情が湧くし、それ以上に俺にとって大切な存在だって言ってるつもりなんだがなぁ。
大分腹もこなれてきたところで、瓶を片手に聞くとレイヴンはゆるく首を振る。
「いえ、この前酔ってやらかしたばかりですし。さっきので何となく味は分かりましたから……」
そういってスプーンを一旦置いて、逆に瓶を手にとって俺のグラスへと注いでいく。
「酌、してくれるのか? こりゃまたどういう風の吹き回しだよ」
「まぁ……お祭り前ですからね。師匠も度を越えて飲んでませんし」
「コレはコレは。明日の天気は荒れそうだなァ」
「……一言余計です」
「そりゃあ、コッチの台詞だ」
まさかレイヴンが酌までしてくれるとはな。
素直に喜んじまうよなぁ。
俺と目が合うと、レイヴンも優しく笑いかけてきた。
その割に少し寂しそうにしやがるから、どうせまた余計なことでも考えてるんだろうな。
「……何だよ、また静かになって」
「その、こうやって一緒にご飯を食べる時間もいいなと、思いまして。別に特別なことをしている訳じゃないですけど、師匠は飲みに行くことが多いし。俺は俺で、何となく簡単に済ませていたことが多いから……」
結局、寂しがりなんだよな。
レイヴンは。
今日は本当に素直だ。
もっと我儘言えばいいのによ。
「気にしないでください」
なんて、慌てて取り繕ってるが、本当はそうじゃねぇんだよな。
全く……これくらいのことならいつでも付き合ってやるのに。
食事に没頭しているレイヴンを見つめていると、俺の視線に気づいて顔をそっとあげる。
こっちの言葉を待つように静かに見つめ返してきた。
「な、何ですか? 押し黙って」
「いや、そんなに楽しいなら別に毎日一緒に食えば良くねぇか?」
「別にそういうつもりで言った訳じゃないですから。師匠には師匠の都合があるし、確かに飲みに行くなとは言ってますけど外出しなければ息も詰まると思いますから、気にしなくても……」
慌てて手を振って何事もなかったようにするレイヴンの手を軽く掴んで動きを止める。
ズイと身を乗り出して、さらに距離を縮めるとレイヴンが困り顔で視線を漂わせる。
「ホント、素直じゃねぇなぁ。俺は好き勝手するだけだから、飲みに行きたいと思ったら遠慮しねぇし。だが、寂しがってるにゃんこを無視するほど無神経でもねぇぞ?」
「にゃんこじゃないですけど、何となく……意味は分かります。でも、そんな家族みたいな。師匠と血が繋がっているわけでもないし……」
軽くデコピンし、間髪入れずにくしゃりとレイヴンの髪をかき混ぜる。
ここまで育ててきてるんだから情が湧くし、それ以上に俺にとって大切な存在だって言ってるつもりなんだがなぁ。
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