【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

文字の大きさ
上 下
42 / 483
第二章 様子見の魔塔主と距離を置く弟子

41.再びの魔獣討伐

しおりを挟む
 次の日、アレーシュ王国の主な職に着くものたちが集まり、王を中心とした魔獣討伐のための対策会議が始まった。

 面倒だが、魔塔と騎士団も例外なく出席だ。
 レイヴンは特に前回の討伐を指揮した者の一人として出席が義務付けられていたし、騎士団も団長のディートリッヒ、それと副団長たちも顔を揃えてむさ苦しいもんだ。

 面倒臭い口だけの文官も含めたらかなりの人数だ。
 最近魔獣が出没することが増えてきて、国としても放っておけない問題になってきたんだろう。

「以前討伐した魔獣の生き残りと報告を受けたが、間違いないか?」

 威厳を帯びた声色で話しているのがこの国を治める国王、エルミュートス三世だ。

 一代前の王は国の統治よりも権力を振りかざし肉欲に溺れる自堕落なヤツで、正直国を腐らせていた元凶だった。

 そこで王族の血筋の中でも文武両道の力を正当に身に着けたエル、つまり、今の陛下が俺とディーにこの国を変えようと持ちかけてきた。
 勿論俺たちだけじゃなくて、優秀な文官や腐っていない貴族たちも味方につけてな。

 見事前王を引きずり下ろして、自分がその座に着いたってとこだ。
 俺たちとも五歳しか歳も変わらねぇし、国王って言うには若造にも見えるがここ数年で乱れた法を少しずつ改正して、この国の平和と安らぎを導いた若き賢王、と民たちから慕われている。

 まぁ……腹黒で食えねぇがな。
 王族なんてそんなもんだ。

「はい、間違いありません。以前討伐したのが魔獣の雄だったのですが、どうやら番だったようで。現在西の森に現れたとの報告を受けております」
「レイヴン、前回の魔獣は獣型だったな?」
「はい。ブラックウルフです。ウルフと言えど、通常よりも大型だったため、前回も討伐に成功はしたものの、幾人かの負傷者が出ております」

 前回の討伐のことを改めて思い出しながら淡々と事実だけを述べているレイヴンだが、よく見ると顔色も良くねぇ。
 負傷者を出したことをまだ引きずっているのが丸分かりだ。
 俺が目線で気にするなとレイヴンを横目で見ると、気付いたレイヴンも目線で、大丈夫、と返してくる。

 こういう時も甘えていいと思うんだが、しっかりとしたいという思いも尊重してやらねぇといけないか。

 レイヴンは出自の知れない自分がこの国で役職についているということも、ずっと気にしているからな。
 できるヤツだということを、こういう場では見せつけた方がいい。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

手紙

ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。 そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

処理中です...