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第二章 様子見の魔塔主と距離を置く弟子

42.国王からの任命

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「ふむ……今回も同種と見て良さそうか?」
「ほぼ間違いないかと。雌は子がいる場合、子を守ろうとさらに凶暴化するとは言われていますが、単体であればそこまでの驚異ではありません。ただし、前回のことを踏まえ、備えはするべきです」
「神殿側としては、聖女様をはじめ、教皇様たちも祭典準備がありまして。討伐に行くことができる人材がほぼおりません。簡単な治療のできる神官が数人程度かと」

 神殿は聖女と呼ばれる、浄化と癒やしの聖なる力である奇跡の力と呼ばれる者を筆頭に、治癒に特化している神官たちがいる施設だ。

 俺は居心地も悪ぃから好きじゃねぇ。
 聖女もウザいしな。

 国の重要な祭事は教皇が取り仕切るが、今回控えているのは一代目聖女が力を授かったという女神を祀る祭典であるために神殿側としてはできるだけ人材を派遣したくないという意思表示なんだろう。

 俺たち魔法使いは治癒魔法は使えない。
 だから討伐に行くときは神官も必要になってくる。
 ただ、この感じだと今回は大した人材を送って来ねぇつもりだろうな。
 まあ、聖女以外は大したことねぇから回復薬と解毒薬があれば大抵は何とかなるが。
 油断大敵って言うからな。

 最初から素直に行かせたくねぇって言えよな。
 神殿側の人間に睨みをきかせてやると、聖女すら出して来ない神殿側はそれ以上何も言わずにだんまりを決め込んだ。

「報告通りの魔獣一匹って言うなら、魔塔はレイヴンと数人で事足りるだろ。今回はその代わり戦闘に慣れてるヤツに行かせる。前回は修行も兼ねてたが、外での訓練はウルフだと残念ながら厳しかったみてぇだからな」
「同じく、騎士団もウルガーを含む、他数名の騎士を派遣致します。総指揮はレイヴンが良いかと」

 俺とディーの言葉を聞いた陛下が同意の頷きを示し、あいわかった、と述べる。
 正式に任命されたレイヴンが再度討伐に赴くことになり、会議は終了した。

 +++

「ったく、神殿のヤツら。面倒事はコッチにやらせようって魂胆だろ。どうせあのババアは暇してんだからよー。いつも張り切ってんのは食えねぇ教皇のジジイだけじゃねぇか」
「……師匠、ここ、まだ王宮内ですから。それに、聖女様と教皇様を侮辱して天罰が下ってもしりませんからね」

 魔塔への帰り道、俺は思ったままを口にしたんだが、レイヴンがやたらと溜め息混じりで宥めてくる。
 平静を装ってはいるが、まだ顔色が白い。

 緊張してんだろうなぁ。
 もっと自信を持てといつも言ってんのによ。

 頻発している魔獣問題は、最初は町民たちが襲われたことから始まった。
 最初は俺が出向いて、魔獣ごと森の三分の一くらいを吹き飛ばしてやった。
 それなのに、これまでも何匹も出現している。

 ウルフであったり、ゴブリンであったりと、そこまで大型種ではないのが幸いだがどこから現れているのか調査中だ。

 調査にはまだご指名が入ってねぇし、俺たちは待機中だ。
 こういうところが面倒なんだよな。
 魔力マナの流れを探るとか、やり方はいくらでもあるのによ。
 会議、会議でなかなか動こうとしねぇ。

 城下町は守りも鉄壁だし、街中に被害が出てねぇから街の連中はあまり怖がったりはしてねぇが、城壁外の村々はまだ統治の及んでない地域もある。
 戦争は今落ち着いているが、城の外はまだまだ問題だらけだ。
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