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35.もうちょっとお話

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 ギルドマスターさんは、改めて逃げてきたみんなを保護する手続きをしてくれた。
 みんなゆっくりと休んでから、元居た場所へ帰れることになったみたい。

「まだ名乗っていませんでしたね。私はノイオゾの街を担当しているギルドマスター、エイナク・クナイです」
「そうか。私たちは冒険者として活動させてもらってるからな。自己紹介はこのカードを見せればいいだろう」

 ラグお姉さんがギルドでもらったカードをギルドマスターさんのエイナクさんに見せてるから、僕とルナちゃんももらったカードを出した。
 オルお兄さんは少し考えていたみたいだけど、ギルドマスターさんを見てお話を始めた。

「俺も捕えられていた者だが、この者たちと同じように冒険者になることはできるだろうか。できれば一緒に行きたいと思っている」
「冒険者でパーティを組む場合は、こちらの皆さんが受け入れても良いということであれば可能です。あなたは……ふむ。十分に資格はありそうだ」

 エイナクさんはじっとオルお兄さんを見つめてから、小さく頷いた。
 じっと見つめると何か分かるのかな?

「僕はオルお兄さんも一緒に来てくれたら嬉しいな」
「そうね。あたしは元々賛成だし。ラグも強いけど、オルは特に力が強いみたいだし」
「ルナは魔法、私は一応どちらもできるが、オルが力に特化しているのならフィロをより守ることができるしな」

 僕たちみんな、オルお兄さんにも来て欲しいって思っていて良かった。
 これで僕たちはパーティーになれるんだ。
 ポケットの中からポイも飛び出してきて、オルお兄さんの肩に止まってよろしくのあいさつをする。
 エイナクさんが、ポイを見てクイっとメガネをあげた。

「その子は?」
「僕の友だちのポイです。赤い鳥さんは珍しいからって、いつもは僕のポケットの中にいるんですけど。嬉しくなって出てきちゃったみたい」
「可愛いお友だちがいるのね。ポイちゃんもフィロくんたちのパーティーの一員なんだ?」

 ギルドのお姉さんがポイをなでなでしてくれると、ポイも喜んでピィってお返事をする。

「こちらのアルミーヌもあなたたちには感謝していると言っていたので、また改めて来ていただけるとありがたい」
「よくあることですけど、あの人たちはしつこかったから本当に助かりました。いつもマスターがいない時を狙って絡んできていたからスカっとしちゃいましたよ」

 街に来てから、たくさんの人たちとお話できて嬉しいな。
 でも、頑張ったから少し眠くなってきちゃったかもしれない。
 お話の途中なのに、あくびをしちゃった。

「フィロもよく頑張っていたから疲れたようだな。すまないが、今日は失礼しよう」
「そうねー。ごほうびに期待しましょ」
「俺の手続きもその時に頼む」

 今日のお話はここまでになった。
 僕は歩けるって言ったんだけど、オルお兄さんがおんぶしてくれるって言ってくれたから甘えておんぶしてもらう。
 僕は子どもだけど、ちっちゃい子じゃないから少し恥ずかしい。
 でも、お兄さんの背中はあたたかくてなんだか眠くなってきちゃいそうな気がした。
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