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お姉様攻略編
第9話 それからのこと
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七歳の頃にお姉様との問題を解決!
そのあと残りの難題もてきぱきと消化完了!
――と言いたかったのだけれど、やっぱりそう上手くはいかなかった。
なにせお祖父様もお父様も表向きは私につらく当たることはなく、お父様に至っては他の貴族や親類にも広く伝わるほどの親バカだったからだ。
そんな探りを入れづらい状況の中でも時間は進み、私は十一歳の終わりを迎えようとしていた。
お姉様も十四歳になり、燃える炎のような髪色はそのままに可愛らしさにも更なる磨きがかかっている。要するに毎日目にしていても見惚れるほどの美少女だった。
それに加えて大人の階段を上り始め、淑女のような美しさも纏い始めている。
完璧だわ。良いとこ取りの最高のお姉様ね!
……と本人に伝えると、俊敏な動きでメイドたちの目を盗みクッキーを口に突っ込まれるので、最近は心の中で復唱していた。
迷惑そうにしながらも頬が赤いのがとても可愛い。
あれから私たち姉妹にはそれぞれ専属の家庭教師が付けられるようになった。
私の家庭教師はドロテーア・ケラーという名前の女性で、黒髪に赤い目をしたクールな人だった。
でも緊張するとポーカーフェイスでドジを踏むお茶目なところもある。
授業に関しては指示が的確で、覚えるまで何度もチャレンジさせてくれるので安心して学ぶことができた。良い先生だわ。
お姉様の家庭教師はペトラ・アードラースヘルムという女性。
薄茶の髪をポニーテールにしていて、ぱっちりした薄緑色の目を持つ姿はお姉様とはまた違った種類の美人だった。
ペトラはバイオリンがびっくりするほど上手く、お姉様も彼女から習っていたけれど今のところ成果は芳しくないらしい。
でも上手く弾けなくても演奏している時のお姉様はとても楽しそうだから、それだけで価値があると思う。
……私の死亡フラグの回避に関しても芳しくない。
でもこうやって様々な知識を身に着けることは回避だけでなく、回避した『その後』を生きていくためにも役立つものだわ。
前世での勉強は正直言うと煩わしかったのだけれど、今は命がかかっていることもあって意欲的だった。
ちなみにお父様にも褒められたけど打ち込んでいる理由は説明できそうにない。
そんな中、私は魔法の勉強も続けていた。
お父様の家系魔法である影の動物を操ったり、そこへ自分の意識を移す魔法。
これは自分の意識を保つことが一番の課題になってくる。
そこでお父様から教えてもらった訓練法を七歳から続けていた。
その訓練法っていうのは……ずばり!
よく使う影の形を決め、それを常に顕現させてペットのように扱うことよ。
これは『自分とは別の存在だ』と無意識に刷り込むためのものらしい。
かといって完全に切り離すと意識を収めた時に違和感が出るから、自分に近しい存在、つまりペットにするってことね。
お父様も昔はこうやって訓練し、ある時から動物の形が異なっていても自由に使えるようになったそうだ。
今、お父様のその魔法は封じられている。
だからペットともお別れしたっていうことなんだと思うと少し切ない。
私のペットになる動物は初めて作り出した時と同じ影の鳥にした。
名前を付けるとより効率良く刷り込めるそうなので、ここはお姉様に頼んでヘラという名前をこの子に貰い、以降ずっとヘラと呼び続けている。
お姉様も名付け親になるのはまんざらでもなかったようで、時々腕にとまらせては微笑んでいた。
毎回「今ここで意識を移したら怒られるかな」と思っては我慢している。
こうして上手く訓練しているつもりだけれど、時々それを見るお父様の目が不安で翳るのが気になった。
玄人から見れば不安定なのか、それとも他に不安があるのか。
――お父様の家系魔法ってことは、これはヘーゼロッテ家に復讐をしようとしている一族由来の魔法ってことになる。
(もしかしてそこにお父様にとって不安な要素があるのかしら……?)
今のところお父様の家系魔法が『影で動物を作り、意識を移すことで操れるもの』だということは公然の事実だ。国にもそれで届け出ている。
この状況で「これはヘーゼロッテ家が恨みを買っている一族の家系魔法じゃないか!」と第三者から指摘されていないのは、各一族の家系魔法には似たものが多いせいなのかも。
っと思っていたのだけれど。
……もしかしてお父様、家系魔法の届け出を偽ったりした?
だから遺伝した私の影魔法を見てソワソワしているのかしら。
疑問は尽きないものの、さすがに直接訊ねるわけにはいかない。
またあのひきだしを調べてみようかと画策もしているけれど、たまにうっかり者なお父様だってそう何度も鍵をかけ忘れるはずがなく、確認できても半年に一度くらいだった。
――ん? わりと多いかも。やっぱりお父様は素で抜けてる。
手紙の内容は半年前もその前も更にその前もずっと同じで、お父様の当たり障りないと思われる報告に対する反応と『ヘーゼロッテ家に絶望を』としつこいくらい言い聞かせるものだった。
お父様はこれになんて返してるんだろう。
返事はすぐに出しているのか、書きかけの手紙を見かけたことはない。
変化はあるけれど進展はない。
そんな日々に新たな風が吹いたのは、十二歳の誕生日パーティーでのことだった。
そのあと残りの難題もてきぱきと消化完了!
――と言いたかったのだけれど、やっぱりそう上手くはいかなかった。
なにせお祖父様もお父様も表向きは私につらく当たることはなく、お父様に至っては他の貴族や親類にも広く伝わるほどの親バカだったからだ。
そんな探りを入れづらい状況の中でも時間は進み、私は十一歳の終わりを迎えようとしていた。
お姉様も十四歳になり、燃える炎のような髪色はそのままに可愛らしさにも更なる磨きがかかっている。要するに毎日目にしていても見惚れるほどの美少女だった。
それに加えて大人の階段を上り始め、淑女のような美しさも纏い始めている。
完璧だわ。良いとこ取りの最高のお姉様ね!
……と本人に伝えると、俊敏な動きでメイドたちの目を盗みクッキーを口に突っ込まれるので、最近は心の中で復唱していた。
迷惑そうにしながらも頬が赤いのがとても可愛い。
あれから私たち姉妹にはそれぞれ専属の家庭教師が付けられるようになった。
私の家庭教師はドロテーア・ケラーという名前の女性で、黒髪に赤い目をしたクールな人だった。
でも緊張するとポーカーフェイスでドジを踏むお茶目なところもある。
授業に関しては指示が的確で、覚えるまで何度もチャレンジさせてくれるので安心して学ぶことができた。良い先生だわ。
お姉様の家庭教師はペトラ・アードラースヘルムという女性。
薄茶の髪をポニーテールにしていて、ぱっちりした薄緑色の目を持つ姿はお姉様とはまた違った種類の美人だった。
ペトラはバイオリンがびっくりするほど上手く、お姉様も彼女から習っていたけれど今のところ成果は芳しくないらしい。
でも上手く弾けなくても演奏している時のお姉様はとても楽しそうだから、それだけで価値があると思う。
……私の死亡フラグの回避に関しても芳しくない。
でもこうやって様々な知識を身に着けることは回避だけでなく、回避した『その後』を生きていくためにも役立つものだわ。
前世での勉強は正直言うと煩わしかったのだけれど、今は命がかかっていることもあって意欲的だった。
ちなみにお父様にも褒められたけど打ち込んでいる理由は説明できそうにない。
そんな中、私は魔法の勉強も続けていた。
お父様の家系魔法である影の動物を操ったり、そこへ自分の意識を移す魔法。
これは自分の意識を保つことが一番の課題になってくる。
そこでお父様から教えてもらった訓練法を七歳から続けていた。
その訓練法っていうのは……ずばり!
よく使う影の形を決め、それを常に顕現させてペットのように扱うことよ。
これは『自分とは別の存在だ』と無意識に刷り込むためのものらしい。
かといって完全に切り離すと意識を収めた時に違和感が出るから、自分に近しい存在、つまりペットにするってことね。
お父様も昔はこうやって訓練し、ある時から動物の形が異なっていても自由に使えるようになったそうだ。
今、お父様のその魔法は封じられている。
だからペットともお別れしたっていうことなんだと思うと少し切ない。
私のペットになる動物は初めて作り出した時と同じ影の鳥にした。
名前を付けるとより効率良く刷り込めるそうなので、ここはお姉様に頼んでヘラという名前をこの子に貰い、以降ずっとヘラと呼び続けている。
お姉様も名付け親になるのはまんざらでもなかったようで、時々腕にとまらせては微笑んでいた。
毎回「今ここで意識を移したら怒られるかな」と思っては我慢している。
こうして上手く訓練しているつもりだけれど、時々それを見るお父様の目が不安で翳るのが気になった。
玄人から見れば不安定なのか、それとも他に不安があるのか。
――お父様の家系魔法ってことは、これはヘーゼロッテ家に復讐をしようとしている一族由来の魔法ってことになる。
(もしかしてそこにお父様にとって不安な要素があるのかしら……?)
今のところお父様の家系魔法が『影で動物を作り、意識を移すことで操れるもの』だということは公然の事実だ。国にもそれで届け出ている。
この状況で「これはヘーゼロッテ家が恨みを買っている一族の家系魔法じゃないか!」と第三者から指摘されていないのは、各一族の家系魔法には似たものが多いせいなのかも。
っと思っていたのだけれど。
……もしかしてお父様、家系魔法の届け出を偽ったりした?
だから遺伝した私の影魔法を見てソワソワしているのかしら。
疑問は尽きないものの、さすがに直接訊ねるわけにはいかない。
またあのひきだしを調べてみようかと画策もしているけれど、たまにうっかり者なお父様だってそう何度も鍵をかけ忘れるはずがなく、確認できても半年に一度くらいだった。
――ん? わりと多いかも。やっぱりお父様は素で抜けてる。
手紙の内容は半年前もその前も更にその前もずっと同じで、お父様の当たり障りないと思われる報告に対する反応と『ヘーゼロッテ家に絶望を』としつこいくらい言い聞かせるものだった。
お父様はこれになんて返してるんだろう。
返事はすぐに出しているのか、書きかけの手紙を見かけたことはない。
変化はあるけれど進展はない。
そんな日々に新たな風が吹いたのは、十二歳の誕生日パーティーでのことだった。
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