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「そう……じゃあ、マルネが私を階段から突き落としたのね?」

マルネは涙ながらに頷いた。
本当は頷いてなど欲しくなかったのに。
私は涙をぐっと堪え、アデル様に顔を向けた。

「アデル様。ロザーナ様を離してあげてください。彼女の言っていることが正しいのですから」

「……え?」
「……はい?」
「……は?」

一同が同時に驚きの声を出した。
私は息をはくと、マルネに言う。

「ごめんねマルネ。階段から落とされたあの時、私は犯人をちらっと見ていたの。顔までは分からなかったけれど、体格からしてそれがあなたではないことは分かった。だってあなたの親友だもの、そのくらい気が付くわ」

マルネは何も言わない。
ただ口を閉じ、無表情で私を見ていた。
アデル様がロザーナ様を離すと、彼女は高らかに叫んだ。

「そうよ!全部この女が悪いのよ!この女が……」

「黙れ」

凍り付くような冷たい声は、マルネのものだった。
彼女は鬼の形相でロザーナ様を睨みつける。

「ロザーナ、アデルのストーカーをしている奴がよく言えたな。挙句の果てにはアデルの物まで盗んでコレクションしていたのでしょう?そんな奴に私を罰する権利はない」

「なんだって!?確かに少し前からよく物が無くなっていたとは思ったが……本当なのかロザーナ!!」

ロザーナ様は俯いて唇を噛みしめた。
程なくして消え入りそうな声で「本当よ」と声がした。
アデル様がショックを受けたように頭を手で押さえる。
それを見たマルネが不気味に笑う。

「ほらね。これが彼女の正体よ。醜くて傲慢で汚くて、人間のゴミのような……」

「マルネ」

私は堪らず口を開いた。

「今度はあなたの番よ。察するにロザーナ様がアデル様の物を盗んでいる所を目撃でもしたのかしら?そして脅して私を襲わせた。違う?」

「ふふっ、さすがシャル。その通りよ。頭が良くて助かるわ」

そう言って微笑むのは、私の知っているマルネではなかった。
悲しさが込み上げるが、涙は出なかった。

「どうして!?どうしてそんなことをしたの?」

マルネは昔を懐かしむような目をした後、堂々と言い放つ。

「あなたが好きだからよ」
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