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 会場である王宮の大広間につくと、多くの人が既に集まっていた。
 予選が始まる一時間前に来たのだが、どうやら私は遅い方だったらしい。
 参加者の気合が感じられて、私はぶるっと武者震いをした。

 ……街で一番の女性を決める大会があると知った私は、ライトの薦めの元、それに応募した。
 予選が行われるのは三か月後で、私が病院を退院するのが一か月後なので、出られないということはなさそうだった。

 一か月後に退院をした私は、久しぶりに剣を握った。
 昔の感覚を掴むのには最初苦労したが、数日をかけて感覚を取り戻し、基本的な動作はできるようになった。

 大会の詳細を見ても一番の女性を決めるとしか書かれていなくて、何を競うのかについては何も書いてなかった。
 だから私は予選までの残りの日は、あらゆる分野に挑戦し、何が来ても対応できるように準備をしていた。

 ……会場に集まった令嬢たちを見つめて、私は小さく息をはく。
 今日は予選だが、いずれはこの中からたった一人の女性が選ばれる。
 やるからには一番を目指したい性分なので、私は静かな闘志を燃やしていた。

「あれ? お姉様?」

 だが、その声に集中力が一気に切れた。
 声のした背後を振り返ると、そこには成長した妹リリアナの姿があった。
 彼女は婚約者のメビウスの家に嫁いだので、もう実家にはいなくて、見舞いにも一回も来なかったので姿を見たのは久しぶりだ。

「リリアナ!」

 妹は私の元まで駆け寄ってくると、嬉しそうに私を見上げる。

「お姉様もこの大会に参加するなんて意外ですぅ……病院で寝ていた方がいいんじゃありませんか? だってあんな大事故にあったんですもの」

 私はニッコリと笑って言葉を返す。

「別に心配してくれなくても大丈夫よ。あなたよりも優秀な順位になれるように努力してきたから。あなたはまた卑劣な手を使って、優勝を狙うのかしら? 例えば……背中を押したりして……」

 動じない私の態度に、リリアナは嫌悪感で顔をいっぱいにした。
 そして先ほどよりも冷たい声で告げる。

「落とされる方が悪いと思いますよ? 人生はそんなに甘くはないですから」

「そうねぇ……落とそうとした人に逆に反撃されることもあるものね」

「ふふふっ」

「ふふふっ」

 私たちは顔を見合わせ不気味に笑う。
 近くにいた令嬢がぞっとした顔つきになって、離れていくのが視界の隅に映った。
 これ以上悪い評判を立てても損なので、私は真面目な顔をした。

「……リリアナ。あなたのことは正直許せない。でも、いつまでも憎んでいたって何も変わらないわ。この大会では正々堂々勝負しましょう」

 そう言って私は手を差し出す。
 しかしリリアナはその手を取らずに、代わりに獣のような眼光を返してきた。

「私は私のやり方で優勝します。少なくともお姉様よりも上位になります」

 そして私に背中を向けて、その場を去ろうとする。
 しかし何かを思い出したようにピタリと止まると、私に意地の悪そうな顔を向ける。

「そういえば私……メビウスさんと結婚したんです。お姉様の縁談を引き継がせてもらってごめんなさいねぇ……」

 最後にそれだけ言うと、妹は去っていった。
 昔の私ならそれに目くじらを立てて悔しがっていたかもしれないが、生憎今は違う。
 私にはライトがいてくれる。
 それだけで十分だ。

 脳裏にライトの笑顔を思い浮かべて、私は決意を固めた。
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