処刑されるくらいなら、平民になって自由に生きる!~最強聖女は女神として降臨する~

あおくん

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赤髪の女神

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家から手紙が来た。

もうクソみたいな内容だった。

要約すると【聖女をどうにかして、殿下を手中に収めろ】と書いてある。

聖女をどうにかって意味がわからない。

だいたい”どうにか”してしまったら、私”だけ”が咎めを受けるだろう。

神殿派はそれほどに聖女の存在に賑わっているのだから。


殿下を手中に収める?まだ12歳になったばかりの私になにを求めているの?

5年間なんの音沙汰もなかったからそれなりに快適に過ごしていた私に、いきなりこんな手紙を送るなんて。

あの男、私に暴力を振るってからもう遠慮なしにクズな男として豹変したわね。

なんで私はあの男の事を”お父様”といっていたのか、今ではわからないわ。

まぁとりあえずこんな手紙は見なかったことにして、ボッと一瞬で燃やしてあげた。

この手紙の内容を見た人物が、ありもしないデタラメな事を言いふらしかねないからね。

そして後日、殿下として、そして婚約者としてコンラッドから私に話があるといわれた。









◇◆◇









「話ってなに?」



そう切り出すと、言いづらいことなのかコンラッドが目線を右へ左へと泳がせる。

いつもはっきりとものをいうコンラッドからは考えられなかった。



「もしかして……婚約に関すること?」



そう問うとびくりと体を跳ねらせる。



「エレン……」

「私だって学園でのんびり暮らしているわけじゃないわ。
実家に帰らなくても情報は入ってくるもの」



だから気にせず話して頂戴と、コンラッドに促すと渋々ながらも話してくれた。



「実は…だいぶ前からエレンとの婚約を見直すという話が出てるんだ」



その話ならば少し前から学園でも噂されるようになっていることだと、私は頷いた。



ん?だいぶ前?



「聖女だけが理由じゃない。
いや、それがきっかけなのだが君の…、ペイジー公爵が不当な取引を行っていると陛下の耳に入り、そして調査が行われたんだ」

「不当な取引…?」



それは初めて聞いた。

まぁあの男のことなんて興味もないし、平民になる為の準備を今も行っているから公爵家の事情を把握することもなかった。

でも確かに殿下の婚約者の座を手に入れるために、”色々”したという事を言っていたことを思い出す。

それももしかしたら犯罪的な事を含んでいるかもしれない。



「あの男…いえ、お父様はどんなことをしていたんですか?」

「……奴隷商売への投資だ」

「!」



奴隷制度はかなり昔に廃止されているのに、それの投資!?


愕然としている私に悲しそうに微笑むコンラッド。



「知らないようで安心したよ…、だけれどこの事実があったことで僕とエレンの婚約関係が解消されようとしているんだ。
君はなにも悪くない。だがそのような悪事を行う家と王族が縁を結ぶことは……」



ぎゅうと力いっぱいに手を握りしめる。

ぶるぶると震えるコンラッドの手に私は自分の手を重ねた。



「コンラッド」



俯いていたコンラッドが私を見上げる。



「婚約解消しましょう」

「!?エレン!?なにをいってるんだ!?」

「そんな悪事を行う家と王家が縁を結んだら、王家も加担していると思われてしまうわ。
それに今回は当てはまらないけど、”好きな人が出来たら婚約解消する”を条件に付けたのは、気軽に解消できるようにと思っての事よ。
私の事でコンラッドが気に病むことはないわ」

「待ってくれ!僕は!」

「殿下!!!」



ガラリと扉が開けられて話は中断する。



「申し訳ございません。今すぐ王城にとの仰せです!」

「ッ……、エレン、この件はもう少し待っててくれ」

「しかし…!」

「お願いだ」



まるで今にも泣きだしそうな目で見つめられたら、私もそれ以上は言えなくなった。



「わかった」



と頷くと、コンラッドはそのまま迎えに来た従者と共に部屋を出ていく。



(婚約解消かぁ…)



あれほどに自由を求めていたが、いざ婚約解消という言葉を聞くと、婚約者として共に過ごしてきたコンラッドと別れるのがさみしく感じる。

コンラッドは待っててといっていたが、あの男がクズな行為をしてしまった以上、解消は免れないだろう。


手紙を送ってきたのに、まさか送った本人の所為で解消することになるとは。

目の前で指を突き付けて大笑いしたいくらいだ。

…今の気分的には笑えないけれど。


それにしても休日の度に王城に出向いていたと思ってはいたが、まさかこういうことだったなんて思わなかったな。


学園卒業まであと6年はあると思っていたが、あの男が罪に問われてしまったら、最悪の場合爵位返上という事もある。

そうなった場合私は一気に貴族令嬢ではなくなるのだ。



(魔物討伐が出来るランクまであと一つなのに…)



もう暢気にしている場合ではないと悟った私は、週1、2くらいの活動を毎日に変更し、さっそく出かけたのだった。











フードを目深にかぶった私は依頼内容が掛かれているボードの前に立っていた。

今までは適当なものに手を出して、素早く受付に持っていっていたのだが、なんだかギルド内の様子がいつもと違う気がして周囲を見渡したのだ。



(そっか、なんか違うと思ったら女性の冒険者が増えたのね)



今までは体の大きいむさくるしい男が多かったのだが、女性もそれなりに増えていることがわかった。

女性が増えるだけでこんなに居心地がよくなるとは。

いい方向に変わってくれて嬉しい限りだ。



「女性の冒険者ってこんなにいたんですね」

「最近増えたのよ」

「最近?」

「ええ、赤髪の女神様のお陰よ。あの人のお陰で女性でも冒険者を目指す人が増えたの」



ギルドに華やかさがあって受付をやっている私も嬉しいわと笑っている。



「その赤髪の女神ってよくくるんですか?」

「いいえ、私も受付をやって長年経つんだけど赤髪の冒険者は見たことないのよね。だから冒険者じゃないとは思うんだけど……
でも素晴らしい魔法であの大火事を鎮火していく姿をみて、魔力量が少ないって言われる女性でもあんなことできるなんてすごい!って憧れる女性が増えてね。
皆が女神って呼んでるのは、聖女様はもういらっしゃるらしいから、尊敬の意味を込めてあの方を”女神様”と呼ぶようになったのよ」



ふふっと微笑みながら、受付の印を手渡した依頼書に押していく受付の女性。

私の依頼達成率が高いことから、もう複数受注になにもいわなくなった。



「私も赤髪の女神様見てみたいです」

「レンちゃんもいつか見られるわよ」



レンというのは、冒険者としての私の偽名だ。エレンだから、レン。

安直だけれども覚えやすいし、反応だってしやすい。



「気を付けていってらっしゃい」



にこりと微笑まれて手を振ってもらえるようになってから、ここが私の第二の家なのだとも感じるようになった。



町の中には色んな人がいて、色んな人が色んな仕事をしている。

だからこそ毎日色んな内容の仕事がギルドに持ち込まれるのだ。



今日は運搬系の仕事を主に引き受けた。

もう12歳になった私はそれなりに体も大きくなったので、普通に魔法が使えても不思議じゃない見た目になったのだ。

元々から魔法を使える設定をしてはいたが、やはり体の大きさに伴って魔力量が備わると考えられているので、あまり多く魔法は使えなかったのだ。

それを今は見た目も大きくなったことから解禁して、もうめちゃくちゃ魔法を使っている。



依頼主の元に行くと最初は渋っていたが、空間魔法を見せつけるとあれもこれもと寄越してきて、報酬はギルド経由だから変わらないにしても、昼食代をくれたりとサービスしてくれるのだ。

公爵家の令嬢がと思われるかもしれないけれど、令嬢として贅沢をしてこなかった私は平民よりは金銭感覚が高いかもしれないが、狂っている方ではないと思っている。

それに自分で稼ぐことでお金の大切さがわかったのだ。

今はサイズが合わなく着れないだろう家にあるクローゼットのドレスで、何日…いや何カ月暮らせるだろう。

となると昼食代だけでも平民にとったらとてもありがたい金額なのだと考えるようになった。


……ん?ドレス空間魔法に入れて売り飛ばしたらいい金額になるんじゃ…。





そして事件が起こった。

いきなり町中で男が暴れだしたのだ。

近くにいた警備を担当している騎士たちが男を取り押さえる。

が、ガタイのいい男は刃物を振り回すだけではなくて、魔法を連発しだしたのだ。

刃物なら男を取り押さえるだけでなんとかなるが、魔法を放たれたら騎士たちは住民を守る方に徹してしまう。

そもそも騎士の数に住人の人数が多すぎるのだ。

小さな男の子が泣きながらギャラリーの中から飛び出す。

人混みで親とはぐれてしまったのだろう、潰されないように人混みの中を抜け出した様子だった。

そんな男の子にトチ狂った男が魔法を放つ。



(ああ!もう見てられない!)



瞬間移動で男の子の元に移動して、結界魔法を使った。

勿論結界に弾かれて魔法が飛び散らないように、結界に男の魔法を吸収させる。

泣いている男の子の頭を撫でて「大丈夫だよ」と微笑むと、男の子の涙が止まった。

私は暴れる男に近づく。



(酒くさ…)



まだ数歩分離れているのに漂う酒の匂いに私は眉をしかめた。

どうやら酒に酔って暴れている様子だった。

テロリスト疑惑がないことに安堵はしたが、こんな昼間からこんなになるほど飲むものではないだろう。


酔った焦点の合わない男のガンつけに、私は恐れることもなく男に手をかざして、魔力のリングで男を拘束した。

男は酒の影響もあり、バランスを保てずにその場に倒れ込む。

そこで騎士達が男に駆け寄った。

住民たちを守っていた騎士たちは少し火傷を負っていたため、私は治癒魔法をかけて治していく。



「めがみさまだぁ!!」



男の子がいった。

周りの人たちが騒ぎ出し私を囲む。



「ちょ!ちょっとまって!私は女神じゃないわ!」



あまり目立ちたくないからフードを目深にかぶっていたのだけれど、勘違いされても困る。

見てとばかりにフードをとり、皆に赤髪ではない銀髪を見せつけた。

騒がしさは少しだけ収まったが、男の子だけは目をキラキラさせたままだった。



「おんなじおかお!ぼくみたもん!ぼくのおうちについた火をけしてくれためがみさま!
ありがとう!きょうもたすけてくれてありがとう!!」



にこにことお礼を言われてはなにも言えなかった。

とりあえず、男の子の家の火を消したのは本当に私かはわからないが、今日男の子をあの酔っ払いから守ったのは事実だ。



「怪我がなくてよかったわ」



素直に受け止め男の子の頭を撫でていると、騎士の一人が呟きが耳に入る。



「エレン・ペイジー令嬢…」



バッと振り返ると、いつしか王城で見かけた騎士がそこにいた。

急いでフードを被って、首にぶら下げている冒険者カードを掲げる。



「わ、私は冒険者のレン!まだDランクだけれども、もっともっと頑張ります!」



ではー!依頼に来る際は指名してくれると嬉しいわ!と捨て台詞を吐いてその場から立ち去った。







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