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忘却の……

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 次の日。

 僕は一睡もできず、朝日を浴びてしまった。
 結果、2日連続寝てないわけで……

 はぁぁと深いため息をつき、ベッドに腰掛け、火照ほてった顔を手で押さえながら、思案にくれる。

 髪飾りまほうどうぐのせいであんな状況になったとはいえ、僕が義姉さまにキスしようとした事は事実で……さすがの義姉さまも僕の気持ちに気づいたと思う。

 どう思ったんだろ……
 義姉弟きょうだいなのに気持ち悪い……脳裏によぎった言葉にズキリと胸が痛む。

 ……怖い。

 義姉さまが僕を嫌悪するかもしれない不安にゾクッと身体を震わせ、その言葉を追い出すようにブンブンと頭を左右に振った。

 義姉さまはそんな風に思う女性ひとじゃない。

 気持ちを切り替える為、思いっきり両腕を上げ、体を限界まで伸ばす。

 今更、考えても仕方ないことだ。
 いずれ義姉さまに告白するつもりだったんだから。

 よしっと気合を入れて、朝食にむかうべく部屋を出た。が、なぜか義姉さまが扉の外で待っていた事に慌ててしまい、早々に気合はどこかにいってしまう。

「……あの……えっと」
「おはよう! ミカエル。昨日はお疲れ様。ありがとう。お礼を1番に言いたくて、待ってたの」

 あ……れ……?
 いつもと変わらない?

「えっと……おはよ……あの……義姉さま? 昨夜……さ」
「ミカエルが頑張ってくれたから、楽しいパーティーだったと招待客の方々も満足してくれたみたい。本当にありがとう! 素敵な誕生日が迎えられたわ」
「あーうん……それは良かったけど……そうじゃなくてさ……」
「そうじゃなくて?」

 歯切れの悪い僕の顔を義姉さまは不思議そうに覗き込む。近い顔にボッと体温が高くなり、僕は目を逸らした。

「どうしたの? 具合悪い?」

 熱を測ろうとおでこに躊躇なく伸ばしてくる手にドギマギしてしまい、しどろもどろ返事をする。

「だ、大丈夫……早く、ご飯、食べに行こ」

 どうしても昨夜の事を意識してしまう僕は、この場にとどまっているのが耐えられず、フイッと体をひるがえした。

「う、うん……」

 腑に落ちない様子の義姉さまは大股で歩き始めた僕を慌てて追いかけてくる。

 ちょっと……これは予想外だ。
 ドキドキしているのは僕だけ? なんで義姉さまは平気なのさ……あのバルコニーでの事、なんとも思ってない?


 それって……それってさ……男として最悪じゃないかっ。
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