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アイラと廉
その1-03
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アイラがアメリカにやって来て、2~3度アイラに寄ってくる男達とデートをしたことはある。
廉もアイラがアメリカに来る前から――本人の気分次第なのか――デートしている女達がいるので、二人の彼女や彼氏の話は珍しいものではなかった。
「何となく、このうずくのが気になって。気になるから、それが何なのか、俺も知りたくなってきた」
「ただの興味じゃないの?」
「そうかもしれないし、そうでないかもしれない。でも、あやふやなまま延ばしておくのも、もうやめようかな、と思ってね」
「それで、どうするのよ」
「俺ときちんとデートして?」
「デート?」
「そう。“デート”って、二人の人間が決められた場所で会って、ディナーをして、お酒を飲んだり、そう言った場で知り合いになる機会のこと」
「そんなことは知ってるわよ」
アイラをからかっているのか、ふざけているのか、アイラが冷たい顔をしてその廉を睨め付けた。
廉は気にした様子もなく、そのアイラを眺めながら、
「明日の晩、俺とデートして。7時に迎えに行くから」
アイラはちょっと眉間を寄せたまま、その返事をしない。
「デートだから、普段着じゃないね」
「そんなことは判ってるわよ。でも、行くとは言ってないじゃない」
「そうだね。俺は一緒に来て欲しいけど」
怯んだ様子もなく、諦める様子もない廉に、アイラはちょっと溜め息をついてみせた。
「出会いはどうあれ、レンのことは6年も知ってるのよ」
「そうだね」
「今更、友達から彼氏に変更――だなんて、考えたこともないわ」
「そうだね。だから、これが機会なのかもしれない」
「なんでよ」
「このうずいてるのが、気になるからね」
その答えを聞いて、更にアイラが少し溜め息をこぼすようにした。
「――その動じない性格と言い、未だに胡散臭さが抜けないところいい、若い癖に妙に落ち着きまくってる態度といい――そういう欠点を抜かしても、レンは――友達になったから」
「アイラは俺のことを良く判っているから」
アイラが貶している言葉をものともせず、廉はおかしそうにアイラに笑って、自分のコーヒーをすすっている。
「だから、今更――それを壊すのも、ね」
「そうだね。アイラの言っていることは、俺も良く判っている。でも、こうやって考え出した今、後戻りはできないだろうな。だから、それを確かめることにしたんだ」
「それで、上手く行かなかった場合はどうするのよ。友達も終わりになるわ」
「そうだね。それは、仕方のないことだろう。俺は、アイラを一人の女性として抱きたいから。その衝動がある限り、友達には戻れない」
「――抱くだけなら、いつでもできるじゃない」
「でも、ただのセックスだけに興味があったんなら、俺はいつでもアイラを抱けていたと思う」
アイラが片眉だけを上げてみせる。
廉がくすっと笑んで、
「アイラが抱かせない、と言っているのだろう?それはあるけど、ただセックスだけに興味があるなら、もっと以前に、俺も行動してたはずだ。その機会はいつでもあった。だから、セックスだけじゃないのか、そろそろ、それをきちんと確かめたくなった」
廉はコーヒーカップをテーブルに置いて、スッと、立ち上がった。
「俺はそろそろ仕事に戻らなければならないんだ。ショッピング、楽しんでおいで。――明日、7時に迎えに行くから」
それだけを言い残して、廉が静かにその場を去っていく。
アイラはフォークを、カツン、カツンと、皿の端に当てながら、その小さくなっていく後ろ姿を、ただ静かに見送っていた。
廉もアイラがアメリカに来る前から――本人の気分次第なのか――デートしている女達がいるので、二人の彼女や彼氏の話は珍しいものではなかった。
「何となく、このうずくのが気になって。気になるから、それが何なのか、俺も知りたくなってきた」
「ただの興味じゃないの?」
「そうかもしれないし、そうでないかもしれない。でも、あやふやなまま延ばしておくのも、もうやめようかな、と思ってね」
「それで、どうするのよ」
「俺ときちんとデートして?」
「デート?」
「そう。“デート”って、二人の人間が決められた場所で会って、ディナーをして、お酒を飲んだり、そう言った場で知り合いになる機会のこと」
「そんなことは知ってるわよ」
アイラをからかっているのか、ふざけているのか、アイラが冷たい顔をしてその廉を睨め付けた。
廉は気にした様子もなく、そのアイラを眺めながら、
「明日の晩、俺とデートして。7時に迎えに行くから」
アイラはちょっと眉間を寄せたまま、その返事をしない。
「デートだから、普段着じゃないね」
「そんなことは判ってるわよ。でも、行くとは言ってないじゃない」
「そうだね。俺は一緒に来て欲しいけど」
怯んだ様子もなく、諦める様子もない廉に、アイラはちょっと溜め息をついてみせた。
「出会いはどうあれ、レンのことは6年も知ってるのよ」
「そうだね」
「今更、友達から彼氏に変更――だなんて、考えたこともないわ」
「そうだね。だから、これが機会なのかもしれない」
「なんでよ」
「このうずいてるのが、気になるからね」
その答えを聞いて、更にアイラが少し溜め息をこぼすようにした。
「――その動じない性格と言い、未だに胡散臭さが抜けないところいい、若い癖に妙に落ち着きまくってる態度といい――そういう欠点を抜かしても、レンは――友達になったから」
「アイラは俺のことを良く判っているから」
アイラが貶している言葉をものともせず、廉はおかしそうにアイラに笑って、自分のコーヒーをすすっている。
「だから、今更――それを壊すのも、ね」
「そうだね。アイラの言っていることは、俺も良く判っている。でも、こうやって考え出した今、後戻りはできないだろうな。だから、それを確かめることにしたんだ」
「それで、上手く行かなかった場合はどうするのよ。友達も終わりになるわ」
「そうだね。それは、仕方のないことだろう。俺は、アイラを一人の女性として抱きたいから。その衝動がある限り、友達には戻れない」
「――抱くだけなら、いつでもできるじゃない」
「でも、ただのセックスだけに興味があったんなら、俺はいつでもアイラを抱けていたと思う」
アイラが片眉だけを上げてみせる。
廉がくすっと笑んで、
「アイラが抱かせない、と言っているのだろう?それはあるけど、ただセックスだけに興味があるなら、もっと以前に、俺も行動してたはずだ。その機会はいつでもあった。だから、セックスだけじゃないのか、そろそろ、それをきちんと確かめたくなった」
廉はコーヒーカップをテーブルに置いて、スッと、立ち上がった。
「俺はそろそろ仕事に戻らなければならないんだ。ショッピング、楽しんでおいで。――明日、7時に迎えに行くから」
それだけを言い残して、廉が静かにその場を去っていく。
アイラはフォークを、カツン、カツンと、皿の端に当てながら、その小さくなっていく後ろ姿を、ただ静かに見送っていた。
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