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積み重なった過ち
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次に彼は黒い人物が語る新たな世界や、正史の事について尋ねてみた。すると気分がいいのか、黒い人物は躊躇うことなく自らの思惑について語り始めた。
「貴方は先程、“新しい世界”や“正史”と言っていましたが、それは我々の今まで培って来た歴史や知識に、何かしらの誤りがあると言う事でしょうか?」
「御名答。この世界は間違った歴史を正史として、歴史を積み重ねて来てしまったのです・・・。それをただ言葉や物で説明しようと正すことは出来なくなってしまった。過ちとは積み重ねるほど、取り返しがつかなくなるもの・・・。最早誰の言葉でも、どんな歴史ある物でも覆す事は出来ません」
この様子だと、黒い人物はケヴィンやオイゲンらのいた現実の世界で歴史が間違っている事を知り、それを正そうとしていたのかも知れない。だがケヴィンが事前に調べていた資料には、そのような働きをしている人物は見当たらなかった。
もしかすると表立って動けぬ理由があったのか。或いは黒い人物が正そうとしている本当の歴史そのものが、そもそも間違っているのか。物的証拠さえあれば、有無を言わさずそれこそが本当の真実、本当の歴史になるだろう。
黒い人物はそれを用意することが出来なかったのだろうか。故に今回のような強硬手段に出たとも考えられる。証拠もなくして何が正しい歴史だというのか。ケヴィンはその根拠を探り出そうとする。
「しかし正しい歴史を証明する品物、遺物が残っていれば歴史は正しく修正されるものでは?」
「そこがそもそもの間違いなのです」
「間違い?」
「正しい歴史・・・正しい力は奪われてしまった。本来それを扱うべき家系からそれを盗んだ者は、その力を使い一躍界隈で頭角を表し、みるみる内に力を付けると誰もが認める巨匠となった・・・」
巨匠という事は、彼の言うその界隈で有名な人物であることが窺える。アルバの街で事に及んだと言う事は、音楽に関係のある有名な人物で見て間違い無いだろう。
それを踏まえた上で、ケヴィンは黒い人物の語るその正史を奪い取り新たな歴史として塗り替えたと言う人物が、音楽の父と言われる“バッハ”であると推理した。
アルバで最も有名な音楽家で、宮殿で暴れていた謎の人物達を従える霊体がそれぞれ、バッハの家系図に関係のある人物であることから導き出されたものだ。
「それがかの有名な音楽家で、音楽に父として知られるあのバッハだと・・・」
「・・・・・」
その名前を出した途端、黒い人物は暫くの間口を止めた。それがケヴィンの推理が正しかった事を証明する事にもなった。だが時間稼ぎを目的とするならば、相手の憎むその名を出したのは悪手だったのかも知れない。
「そう、バッハ・・・。正確には“ヨルダン・クリスティアン・バッハ”だ。彼は世に月光写譜という物を残しました。しかし写譜という通り、それは別の物を模写して書かれた物に過ぎません。月光写譜の元になった楽譜、それには音楽としての楽譜の意味の他に、特別な力も眠っていました」
「特別な力・・・?それはあの厄介なバフ効果のことか?」
戦闘を行うものであれば、アンナやベルンハルトの月光写譜を演奏する効果に苦しめられた経験がある。それにケヴィンやカルロスらのように戦えない者でも、肉体の機能が強制的に活性化され呼吸が乱れたりもした。
「それは戦闘における能力に他なりません。月光写譜が本来の楽譜から奪い取ったのは、人々の心に影響を及ぼす音楽の力・・・。元より音楽とは、聴く人の心や意志に強い影響を与えるもの。しかしその楽譜に込められていた力は、それを増幅しコントロールする事が出来る能力。彼はそれを利用し世に名を残した偽りの音楽家に過ぎないッ・・・!」
バッハの事を語る黒い人物の口調は、憎き人物を語る時のように強いものへと変わった。実際彼はそのバッハを強く憎んでいるようだ。奪われたという表現を用いていることから、黒い人物は月光写譜の元となった楽譜の作者に肩入れしているようだ。
今WoFの世界で有名になっているバッハは、その能力を奪い取ることで音楽の力を利用し、歴史に名を刻んだと黒い人物は語る。だがそんなバッハを偉人として認識して来た者達にとっては、到底信じられるような話ではない。
これが彼の言う積み重ねられた過ちというものなのだろう。
「貴方は先程、“新しい世界”や“正史”と言っていましたが、それは我々の今まで培って来た歴史や知識に、何かしらの誤りがあると言う事でしょうか?」
「御名答。この世界は間違った歴史を正史として、歴史を積み重ねて来てしまったのです・・・。それをただ言葉や物で説明しようと正すことは出来なくなってしまった。過ちとは積み重ねるほど、取り返しがつかなくなるもの・・・。最早誰の言葉でも、どんな歴史ある物でも覆す事は出来ません」
この様子だと、黒い人物はケヴィンやオイゲンらのいた現実の世界で歴史が間違っている事を知り、それを正そうとしていたのかも知れない。だがケヴィンが事前に調べていた資料には、そのような働きをしている人物は見当たらなかった。
もしかすると表立って動けぬ理由があったのか。或いは黒い人物が正そうとしている本当の歴史そのものが、そもそも間違っているのか。物的証拠さえあれば、有無を言わさずそれこそが本当の真実、本当の歴史になるだろう。
黒い人物はそれを用意することが出来なかったのだろうか。故に今回のような強硬手段に出たとも考えられる。証拠もなくして何が正しい歴史だというのか。ケヴィンはその根拠を探り出そうとする。
「しかし正しい歴史を証明する品物、遺物が残っていれば歴史は正しく修正されるものでは?」
「そこがそもそもの間違いなのです」
「間違い?」
「正しい歴史・・・正しい力は奪われてしまった。本来それを扱うべき家系からそれを盗んだ者は、その力を使い一躍界隈で頭角を表し、みるみる内に力を付けると誰もが認める巨匠となった・・・」
巨匠という事は、彼の言うその界隈で有名な人物であることが窺える。アルバの街で事に及んだと言う事は、音楽に関係のある有名な人物で見て間違い無いだろう。
それを踏まえた上で、ケヴィンは黒い人物の語るその正史を奪い取り新たな歴史として塗り替えたと言う人物が、音楽の父と言われる“バッハ”であると推理した。
アルバで最も有名な音楽家で、宮殿で暴れていた謎の人物達を従える霊体がそれぞれ、バッハの家系図に関係のある人物であることから導き出されたものだ。
「それがかの有名な音楽家で、音楽に父として知られるあのバッハだと・・・」
「・・・・・」
その名前を出した途端、黒い人物は暫くの間口を止めた。それがケヴィンの推理が正しかった事を証明する事にもなった。だが時間稼ぎを目的とするならば、相手の憎むその名を出したのは悪手だったのかも知れない。
「そう、バッハ・・・。正確には“ヨルダン・クリスティアン・バッハ”だ。彼は世に月光写譜という物を残しました。しかし写譜という通り、それは別の物を模写して書かれた物に過ぎません。月光写譜の元になった楽譜、それには音楽としての楽譜の意味の他に、特別な力も眠っていました」
「特別な力・・・?それはあの厄介なバフ効果のことか?」
戦闘を行うものであれば、アンナやベルンハルトの月光写譜を演奏する効果に苦しめられた経験がある。それにケヴィンやカルロスらのように戦えない者でも、肉体の機能が強制的に活性化され呼吸が乱れたりもした。
「それは戦闘における能力に他なりません。月光写譜が本来の楽譜から奪い取ったのは、人々の心に影響を及ぼす音楽の力・・・。元より音楽とは、聴く人の心や意志に強い影響を与えるもの。しかしその楽譜に込められていた力は、それを増幅しコントロールする事が出来る能力。彼はそれを利用し世に名を残した偽りの音楽家に過ぎないッ・・・!」
バッハの事を語る黒い人物の口調は、憎き人物を語る時のように強いものへと変わった。実際彼はそのバッハを強く憎んでいるようだ。奪われたという表現を用いていることから、黒い人物は月光写譜の元となった楽譜の作者に肩入れしているようだ。
今WoFの世界で有名になっているバッハは、その能力を奪い取ることで音楽の力を利用し、歴史に名を刻んだと黒い人物は語る。だがそんなバッハを偉人として認識して来た者達にとっては、到底信じられるような話ではない。
これが彼の言う積み重ねられた過ちというものなのだろう。
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