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宮殿の外へ
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「物理的な攻撃が通用しないのには幾つか理由がある。その対象が霊体であったり透過する性質を持っていたりなど、そもそも実体が無いケース。簡単に言うと水や空気を捕らえようとしたり殴ろうとするには、物理的な接触だけでは不可能。魔法やスキルによる何らかの補助が必要になるわ」
霊体との戦闘はシンも経験した事がある。記憶に新しいところで言うと、現実世界ではアイドルであるユッキーこと“岡垣友紀“と親友であった片桐なぎさをたぶらかしていた、異世界からやって来たというイーラ・ノマドの“イル“と言う男。
彼は自身をデータ化する事ができ、他人の身体に自分自身のアバターをコピーし、あたかも実在するかのように存在自体装っていた。だが本質がデータということもあり、ハッキングによる攻撃で彼を追い詰めることができた。
そしてWoFの世界では、大海原を様々な方法で横断する大規模レースにて、極めて残忍な海賊であった“フランソワ・ロロネー“という、無数の霊体生物や霊体の海賊船であるゴーストシップなど、まさにニノンが言ったような性質を持った人物。
霊体であるが故に、聖なる攻撃に弱く所謂属性という関係性の中で闇属性と対を成す聖属性や、アンデッドの性質を持った者達は炎属性にも弱かったりした。そう言った者達への攻撃は、基本魔法を用いるかエンチャントという武器に属性や魔法、スキルを付与することで攻撃を当てることができた。
それらの記憶とニノンの話を照らし合わせ、彼女がどのような組織に所属しているのかを思い出したシン。彼女は教団の護衛隊で、他の信者達と同じように神を信仰する者。
と、なれば一般的に聖職者とも呼ばれることから、聖なる属性に長けているのではと行き着くのは自然な事だった。
「それはつまりアンタも・・・?」
ニノンは小さく首を縦に振る。シンの読み通り、ニノンは聖属性の攻撃を得意とする人物だったようだ。だがそうなると、宮殿で謎の人物達を退けてみせたバルトロメオも、その類のクラスである事になる。
ニノンやオイゲンは、事前の調査により音楽家達についている護衛のクラスについても把握しているはず。それにあれだけ注目を集めていた人物であれば、特に用心していたに違いない。
そこでシンは、宮殿内で何故バルトロメオが謎の人物達を退けられたのかに関して問いかけた。
「そういえばあの時、バルトロメオも侵入者達に攻撃できていたように見えたが・・・あれも属性による攻撃だったのか?」
「アイツは、あぁ見えてブルース・ワルターに憧れて音楽の道へと進んだ音楽家でもあるらしい。そしてそれ以前は、意外にも破戒僧として各地を巡っていたと資料で見たな」
「破戒僧・・・だからか」
バルトロメオの背後から現れていた大きな腕は、彼の能力で作り出した何らかの聖なる者の腕なのだろう。だが如何にも不良といった見た目や行動、言葉からはとても想像がつかないようなクラスであった事をシンは知ることになった。
しかし、聖なる攻撃でしか対抗できないのだとすると、着いてきたのは良いがとても戦闘では役に立てそうにはなかった。それでもシンのスキルは、直接相手と戦えなくとも、ニノンをサポートすることはできる。
まして夜という時間帯は、彼にとって通常以上の力を与える環境にある。それに影を使ったスキルは何も攻撃メインのスキルではない。相手の不意を突いたり拘束したり、或いは過去の強敵達から学んだ応用スキルを用いることで、以前WoFというゲームでは使用できなかった技を使えるようになった。
当時覚えていたスキルや魔法を、全て元通りに思い出せるのかは分からないが、以前よりもより仲間をアシストするようなスキルが増えたようにシンは感じていた。
あの時のシンは、一人WoFの世界に没頭し様々なプレイヤーと僅かながら交流をとっていた。しかし、彼の求める友情や仲間と呼べるような深い関係があったかというと、数える程度にしかなかった。
それがこの“異変“に巻き込まれてから、WoFの世界でも現実の世界でも、多くの者達と交流し親交を深めてきた。ミアやツクヨは勿論、WoFの世界で行動を共にするようになったツバキやアカリ。
様々な街や場所で出会った者達との繋がりや、壁として立ち塞がった強敵達との交戦により学んだことが、本来WoF上にあったシンというキャラクターデータとは別の道を歩み始めている。
時間を費やし、苦労して手に入れた装備やスキルもあったが、それ以上に今のシンはこのWoFの世界で多くを学び、様々な感情を抱くようになり、人間としてのバックボーンが当時の自分自身よりも深く大きくなりつつあった。
そんなことを考えている内に、二人は宮殿の外に繋がる大きな扉の前にまでやって来ていた。
「準備はいいか?」
「あぁ、行こう!」
扉をゆっくり肩で押して開いていくニノン。シンと共に隙間から徐々に身を乗り出し、外の様子を伺いながら宮殿の外へと足を踏み出していく。周りには警備隊や教団の護衛の姿はない。
それどころか、人の気配が全くといっていいほどしない。僅かに感じるのは宮殿で戦う者達の気配だけ。外に出た二人は周囲を見渡しながら、敷地を隔てる柵に近づいていくと、それまで何も見えなかった風景から生気を感じない不気味な格好とマスクをした謎の人物達が、二人の道を阻むように現れる。
霊体との戦闘はシンも経験した事がある。記憶に新しいところで言うと、現実世界ではアイドルであるユッキーこと“岡垣友紀“と親友であった片桐なぎさをたぶらかしていた、異世界からやって来たというイーラ・ノマドの“イル“と言う男。
彼は自身をデータ化する事ができ、他人の身体に自分自身のアバターをコピーし、あたかも実在するかのように存在自体装っていた。だが本質がデータということもあり、ハッキングによる攻撃で彼を追い詰めることができた。
そしてWoFの世界では、大海原を様々な方法で横断する大規模レースにて、極めて残忍な海賊であった“フランソワ・ロロネー“という、無数の霊体生物や霊体の海賊船であるゴーストシップなど、まさにニノンが言ったような性質を持った人物。
霊体であるが故に、聖なる攻撃に弱く所謂属性という関係性の中で闇属性と対を成す聖属性や、アンデッドの性質を持った者達は炎属性にも弱かったりした。そう言った者達への攻撃は、基本魔法を用いるかエンチャントという武器に属性や魔法、スキルを付与することで攻撃を当てることができた。
それらの記憶とニノンの話を照らし合わせ、彼女がどのような組織に所属しているのかを思い出したシン。彼女は教団の護衛隊で、他の信者達と同じように神を信仰する者。
と、なれば一般的に聖職者とも呼ばれることから、聖なる属性に長けているのではと行き着くのは自然な事だった。
「それはつまりアンタも・・・?」
ニノンは小さく首を縦に振る。シンの読み通り、ニノンは聖属性の攻撃を得意とする人物だったようだ。だがそうなると、宮殿で謎の人物達を退けてみせたバルトロメオも、その類のクラスである事になる。
ニノンやオイゲンは、事前の調査により音楽家達についている護衛のクラスについても把握しているはず。それにあれだけ注目を集めていた人物であれば、特に用心していたに違いない。
そこでシンは、宮殿内で何故バルトロメオが謎の人物達を退けられたのかに関して問いかけた。
「そういえばあの時、バルトロメオも侵入者達に攻撃できていたように見えたが・・・あれも属性による攻撃だったのか?」
「アイツは、あぁ見えてブルース・ワルターに憧れて音楽の道へと進んだ音楽家でもあるらしい。そしてそれ以前は、意外にも破戒僧として各地を巡っていたと資料で見たな」
「破戒僧・・・だからか」
バルトロメオの背後から現れていた大きな腕は、彼の能力で作り出した何らかの聖なる者の腕なのだろう。だが如何にも不良といった見た目や行動、言葉からはとても想像がつかないようなクラスであった事をシンは知ることになった。
しかし、聖なる攻撃でしか対抗できないのだとすると、着いてきたのは良いがとても戦闘では役に立てそうにはなかった。それでもシンのスキルは、直接相手と戦えなくとも、ニノンをサポートすることはできる。
まして夜という時間帯は、彼にとって通常以上の力を与える環境にある。それに影を使ったスキルは何も攻撃メインのスキルではない。相手の不意を突いたり拘束したり、或いは過去の強敵達から学んだ応用スキルを用いることで、以前WoFというゲームでは使用できなかった技を使えるようになった。
当時覚えていたスキルや魔法を、全て元通りに思い出せるのかは分からないが、以前よりもより仲間をアシストするようなスキルが増えたようにシンは感じていた。
あの時のシンは、一人WoFの世界に没頭し様々なプレイヤーと僅かながら交流をとっていた。しかし、彼の求める友情や仲間と呼べるような深い関係があったかというと、数える程度にしかなかった。
それがこの“異変“に巻き込まれてから、WoFの世界でも現実の世界でも、多くの者達と交流し親交を深めてきた。ミアやツクヨは勿論、WoFの世界で行動を共にするようになったツバキやアカリ。
様々な街や場所で出会った者達との繋がりや、壁として立ち塞がった強敵達との交戦により学んだことが、本来WoF上にあったシンというキャラクターデータとは別の道を歩み始めている。
時間を費やし、苦労して手に入れた装備やスキルもあったが、それ以上に今のシンはこのWoFの世界で多くを学び、様々な感情を抱くようになり、人間としてのバックボーンが当時の自分自身よりも深く大きくなりつつあった。
そんなことを考えている内に、二人は宮殿の外に繋がる大きな扉の前にまでやって来ていた。
「準備はいいか?」
「あぁ、行こう!」
扉をゆっくり肩で押して開いていくニノン。シンと共に隙間から徐々に身を乗り出し、外の様子を伺いながら宮殿の外へと足を踏み出していく。周りには警備隊や教団の護衛の姿はない。
それどころか、人の気配が全くといっていいほどしない。僅かに感じるのは宮殿で戦う者達の気配だけ。外に出た二人は周囲を見渡しながら、敷地を隔てる柵に近づいていくと、それまで何も見えなかった風景から生気を感じない不気味な格好とマスクをした謎の人物達が、二人の道を阻むように現れる。
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