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犯行直前の夜
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再びあの曲が彼らのいる宮殿にまで聞こえてくる。皆すっかりどこからともなく聞こえてくるその曲の虜だった。暗い話は切り上げ、そろそろ夕食の時間だと昼食の時と同様にルームサービスで注文する料理を決める。
教団関係者を次々に狙った事件。証拠こそないものの、他殺である可能性の方が高く、遺体となって発見された三人ともとても自殺を図るような動機も理由もない。
そして未だ続いている何者かの犯行は、教団関係者を始末し終えた今、別の者達へとターゲットを変えている。恐らく狙われている者達には何らかの関連性があるのだろうが、まだ新たな犯行はベルヘルムただ一人だけで、繋がりは見えてこない。
次に狙われるのか全く分からない状況の中で、何故かその曲を聴いていると安心して普段通りの何気ない日常を優先してしまう。それがいつ何者かに襲われるとも分からない緊迫した状況であっても。
結局オイゲンは彼らの部屋に戻ってくる事はなく、ニノンの元にも連絡がくる事はなかった。一行は仕方がなく、その日も何をする訳でもなく一夜を過ごす事となるのだが、宮殿で行われていた事件は急展開を迎える事となる。
その日の夜、シン達もいつ何時に狙われるかも分からないということで、時間を決め常に誰かしら複数で起きているように睡眠をとる事にした。まだ子供であるツバキとアカリを除くシン達三人と、ケヴィンとニノンの五人で二つのグループに分かれ朝になるまで交代で起き続けた。
元々仲間であるシン達三人がチーム分けで固まるのは見張りにはならないとし、ケヴィンとニノンがそれぞれ分かれ三人組と二人組に分かれた。チーム分けは単純に男女で分かれる事になり、先にシンとツクヨ、そしてケヴィンの三人が暫く起きている事になった。
心地の良い音楽に熟睡する一行。そんな中、何とか眠気に耐えつつ互いに意識を失わないよう起こし合っていた三人。するとケヴィンは、オイゲンに渡したものとは違うタブレットを取り出し、何やら映像を確認していた。
照明を弱めた薄暗い部屋の中で、ケヴィンの顔がタブレットの明かりに照らされる。シンが何をしているのかと問うと、彼は昼間に仕掛けてきたカメラの映像を確認しているのだと答えた。
特に隠す気もない様子のケヴィンにその映像を見せてもらうと、それは人が入り込めないようなどこか狭い通路の中だった。
「カメラって、一体どこに仕掛けたカメラなんだ?」
「これはベルヘルム氏の部屋にある“通気口“に仕掛けてきたカメラです。安心して下さい、今回はオイゲン氏やベルヘルム氏の護衛の方々にも了承を得ていますので、これが彼らにバレたところで咎められる事はありませんよ」
「でも今更監視カメラなんて役に立つのかい?カメラに映るような犯人ならとっくに特定されているだろ?」
ツクヨの言うように、宮殿内の監視カメラは当然ながら調べ上げられている。だが、どのカメラを調べても怪しい人物などどこにも映っておらず、犯人に繋がる証拠になりそうなものすら何も見つかっていない。
ならば何故そのようなものを今更設置し、確認しているのか。するとケヴィンは、仕掛けてきたカメラの性能についてシンとツクヨに説明し始めた。ケヴィンがベルヘルムの部屋に仕掛けてきたカメラは、パーティーでシンに渡した物と同じらしく、蜘蛛のような形状をしており様々な場所へ潜り込むことが可能になっている。
その他にも、ただ映像を記録するだけではなく、カメラに捉えた物体から放射される赤外線を分析し、熱分布を表示させるサーモグラフィーの機能や、音の振動を読み取り発生源を調べることができるサウンドサーチャーの機能が搭載されているのを、実際の操作と共に見せてくれた。
「しかし、このような捜査も既に教団側でやってくれていたようですね」
「結果は?」
「ご存知の通り何も・・・」
「そこまでしても、何の証拠も出て来ないんだね・・・。本当に迷宮入りって感じだ。これって僕らはいつになったら解放されるのかな?まさか死ぬまで解放されないなんて事には・・・」
「それはありませんよ」
ケヴィンはオイゲンから、捜査の期限について聞いていたらしく、当初の予定では一週間ほどを目安にしていたようだが、ブルースら他の要人達からの要望もあり五日間にまで期限は狭められてしまったらしい。
その上、ブルースらの護衛を大人しくさせる条件として、明日までに事態の進展が見られない場合は強硬手段も辞さないということ告げられたらしい。
「明日までだって!?もう夜だぞ?」
「進展って・・・今夜中に何か犯人に繋がる証拠を掴まなきゃいけないってこと?」
「だからこそオイゲン氏も、このカメラの設置を許容して下さったのでしょう。余裕がないのはみんな同じです。そして恐らく、今夜も誰かが犠牲になる・・・。ターゲットが絞られていたマティアス司祭の時でさえ犯行を止められませんでしたからね。今回で犯人に繋がる証拠を挙げるのは難しそうです」
いつになく弱気な様子を見せるケヴィン。だがシン達にはどうすることもできない。もしブルースらが強硬手段に出るというのなら、それはそれで構わなかった。それで宮殿から解放されるのならシン達にとって何らデメリットはないからだ。
ただそうなってしまった場合、アルバで起きた教団関係者の連続殺人事件は未解決のまま終わるだろう。そうなれば折角取り繕った教団との友好関係も崩壊する事になってしまうだろう。
教団関係者を次々に狙った事件。証拠こそないものの、他殺である可能性の方が高く、遺体となって発見された三人ともとても自殺を図るような動機も理由もない。
そして未だ続いている何者かの犯行は、教団関係者を始末し終えた今、別の者達へとターゲットを変えている。恐らく狙われている者達には何らかの関連性があるのだろうが、まだ新たな犯行はベルヘルムただ一人だけで、繋がりは見えてこない。
次に狙われるのか全く分からない状況の中で、何故かその曲を聴いていると安心して普段通りの何気ない日常を優先してしまう。それがいつ何者かに襲われるとも分からない緊迫した状況であっても。
結局オイゲンは彼らの部屋に戻ってくる事はなく、ニノンの元にも連絡がくる事はなかった。一行は仕方がなく、その日も何をする訳でもなく一夜を過ごす事となるのだが、宮殿で行われていた事件は急展開を迎える事となる。
その日の夜、シン達もいつ何時に狙われるかも分からないということで、時間を決め常に誰かしら複数で起きているように睡眠をとる事にした。まだ子供であるツバキとアカリを除くシン達三人と、ケヴィンとニノンの五人で二つのグループに分かれ朝になるまで交代で起き続けた。
元々仲間であるシン達三人がチーム分けで固まるのは見張りにはならないとし、ケヴィンとニノンがそれぞれ分かれ三人組と二人組に分かれた。チーム分けは単純に男女で分かれる事になり、先にシンとツクヨ、そしてケヴィンの三人が暫く起きている事になった。
心地の良い音楽に熟睡する一行。そんな中、何とか眠気に耐えつつ互いに意識を失わないよう起こし合っていた三人。するとケヴィンは、オイゲンに渡したものとは違うタブレットを取り出し、何やら映像を確認していた。
照明を弱めた薄暗い部屋の中で、ケヴィンの顔がタブレットの明かりに照らされる。シンが何をしているのかと問うと、彼は昼間に仕掛けてきたカメラの映像を確認しているのだと答えた。
特に隠す気もない様子のケヴィンにその映像を見せてもらうと、それは人が入り込めないようなどこか狭い通路の中だった。
「カメラって、一体どこに仕掛けたカメラなんだ?」
「これはベルヘルム氏の部屋にある“通気口“に仕掛けてきたカメラです。安心して下さい、今回はオイゲン氏やベルヘルム氏の護衛の方々にも了承を得ていますので、これが彼らにバレたところで咎められる事はありませんよ」
「でも今更監視カメラなんて役に立つのかい?カメラに映るような犯人ならとっくに特定されているだろ?」
ツクヨの言うように、宮殿内の監視カメラは当然ながら調べ上げられている。だが、どのカメラを調べても怪しい人物などどこにも映っておらず、犯人に繋がる証拠になりそうなものすら何も見つかっていない。
ならば何故そのようなものを今更設置し、確認しているのか。するとケヴィンは、仕掛けてきたカメラの性能についてシンとツクヨに説明し始めた。ケヴィンがベルヘルムの部屋に仕掛けてきたカメラは、パーティーでシンに渡した物と同じらしく、蜘蛛のような形状をしており様々な場所へ潜り込むことが可能になっている。
その他にも、ただ映像を記録するだけではなく、カメラに捉えた物体から放射される赤外線を分析し、熱分布を表示させるサーモグラフィーの機能や、音の振動を読み取り発生源を調べることができるサウンドサーチャーの機能が搭載されているのを、実際の操作と共に見せてくれた。
「しかし、このような捜査も既に教団側でやってくれていたようですね」
「結果は?」
「ご存知の通り何も・・・」
「そこまでしても、何の証拠も出て来ないんだね・・・。本当に迷宮入りって感じだ。これって僕らはいつになったら解放されるのかな?まさか死ぬまで解放されないなんて事には・・・」
「それはありませんよ」
ケヴィンはオイゲンから、捜査の期限について聞いていたらしく、当初の予定では一週間ほどを目安にしていたようだが、ブルースら他の要人達からの要望もあり五日間にまで期限は狭められてしまったらしい。
その上、ブルースらの護衛を大人しくさせる条件として、明日までに事態の進展が見られない場合は強硬手段も辞さないということ告げられたらしい。
「明日までだって!?もう夜だぞ?」
「進展って・・・今夜中に何か犯人に繋がる証拠を掴まなきゃいけないってこと?」
「だからこそオイゲン氏も、このカメラの設置を許容して下さったのでしょう。余裕がないのはみんな同じです。そして恐らく、今夜も誰かが犠牲になる・・・。ターゲットが絞られていたマティアス司祭の時でさえ犯行を止められませんでしたからね。今回で犯人に繋がる証拠を挙げるのは難しそうです」
いつになく弱気な様子を見せるケヴィン。だがシン達にはどうすることもできない。もしブルースらが強硬手段に出るというのなら、それはそれで構わなかった。それで宮殿から解放されるのならシン達にとって何らデメリットはないからだ。
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