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音楽の重要性
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事情を聞いたミアは、おじさん達の会話を盗み聞くのにはいい加減に飽きたと、彼の持ってきた話に乗っかり、アカリと共にカタリナの歌を聴きに一階の会場へと向かうことに。
ツクヨは一度シン達のテーブルを離れ、その後ツバキと共に未だ足を踏み入れていなかった宮殿の二階へ行くことを決め、WoFのユーザー特有の機能であるメッセージを使い、シンに報告を入れるところにまで戻ってくる。
「彼らが挨拶回りをしている人物達については、ケヴィンは知っているのか?」
「全員を知っているという訳ではありませんが、マティアス司祭からパーティーの参加者に関する資料をお借りしています。ですがこちらは他の方に公開することは許されておりませんので、私の方から簡単な紹介くらいなら出来ますが・・・。お聞きになりますか?」
「一応聞いておこうかな」
ケヴィンは書類を取り出しながら、シンに映像を切り替えるように指示しながらVIPルームにいる要人達の紹介をしていく。ただ、参加者を片っ端から紹介していては時間がいくらあっても足りなくなってしまうので、ある程度絞っての紹介となる。
初めに切り替えられた映像に写っていたのは、作曲家で指揮者でもあるオペラを極めた楽劇の創始者であることから、“楽劇王“という名で知られる人物である“リヒャルト・ワーグナー“。
元々トランペット奏者として有名になり、多くの著名な指揮者から学ぶことで様々な楽団や劇場の首席指揮者に就任し、今では各国の音楽監督を務めたりしているという、“アンドレイ・ネルソンス“。
生まれのことで差別を受けていたところを教団に救われ、それ以来教団で活躍する事になるピアニストで、指揮や作曲も手掛ける専属の音楽家である“ブルース・ワルター“は、世代を代表する偉大な指揮者にも選ばれ、とある島国では三大巨匠とも呼ばれていた。
独特な指揮法で有名となった指揮者であり作曲家でもある“ベルヘルム・フルトヴェングラー“。音が出る前から指揮棒の先が細かく揺れ始め、アインザッツが非常に分かりにくい。アインザッツとは音楽に関して用いる場合、休止後の歌い始めや奏し始めの瞬間のことを指す言葉。父は考古学者であり、ケヴィンが知っている情報によると、アークシティの資源調査に協力していたことがあるという噂もあるのだとか。
「特に注目すべき方々はこの辺りでしょうね。他の方々は近隣の国や街の私がない要人といった所でしょう。私もあまり注視はしなくていいと考えています」
「全員、音楽関係の人達なんだな・・・」
「中には教団関係者である人物や、アークシティとの繋がりが匂わされている人物もいます。大司教程ではないにしても、何らかの情報が手に入るかも知れませんよ?」
「確かに・・・。ならそっちも見過ごせない訳か。ん?周りのは護衛か?」
映像を動かしてみると、先程名前の上がった要人達の周りには、シン達と同じようにスーツを着こなした様々な体格の者達がピッタリと付き添っている。だが、その様子からはジークベルト大司教を護衛するために送り込まれた騎士団とは全く目的が掴めない。
と、いうのも護衛隊を務める騎士団のように屈強な者達ばかりではなく、華奢な見た目の男や、ミアのようにスーツを着こなした若い女。他にもアカリ程の年齢の青年などもおり、ボディガードとしては些か心細さを感じる。
「その・・・周りの人達は、その要人の家族や友人達だったりでもするのか?」
疑問に思ったシンがケヴィンに尋ねる。すると彼はまさかと言った様子で鼻で笑い、彼らが何者であるかを語り出す。
「彼らも立派な護衛ですよ。アルバの街にいる騎士団や、大司教を守る護衛隊を見て、無意識に護衛といえば強そうなイメージを勝手に印象付けられているのかもしれませんね」
「あんな子供でもか?」
「勿論ですよ。あまり戦闘というイメージとはかけ離れた街ですからね、アルバは。正直見間違えてしまっても無理もないですね。それも彼らの思惑の一つなのですから」
ケヴィンの話では、他国の重要人物が別の土地や街へ向かう際、ジークベルトのように分かりやすい護衛の一団を連れ歩くこともあるが、注目を集めないように親族を装う場合や、とても護衛には見えないような見た目で付き添うことも少なくないのだと言う。
それぞれが異名を持つほどの実力者であり、その本質は肉体的な戦闘能力ではなくクラスやスキルによる強襲や暗殺にも対応できる、柔軟で異質な強力な能力にあるのだそうだ。
しかし、異質な異名こそあるもののその能力については、対峙した者にしか本当のことは分からない。マティアスから受け取ったという資料にも彼らのことは記載されておらず、ケヴィンも詳しくは分からないそうだ。
「そんな護衛を一音楽家にあてがうのか?」
「音楽家は国やその土地、或いは大陸や時代にまで影響を残す偉大な者ですよ。人々の生に彩りや癒し、または躍動を与える貴重なものなのです。私もさして詳しい訳ではありませんが、音楽に癒されたり勇気付けられたりなどはよくありますよ。シンさんにもないですか?そんな時が・・・」
ツクヨは一度シン達のテーブルを離れ、その後ツバキと共に未だ足を踏み入れていなかった宮殿の二階へ行くことを決め、WoFのユーザー特有の機能であるメッセージを使い、シンに報告を入れるところにまで戻ってくる。
「彼らが挨拶回りをしている人物達については、ケヴィンは知っているのか?」
「全員を知っているという訳ではありませんが、マティアス司祭からパーティーの参加者に関する資料をお借りしています。ですがこちらは他の方に公開することは許されておりませんので、私の方から簡単な紹介くらいなら出来ますが・・・。お聞きになりますか?」
「一応聞いておこうかな」
ケヴィンは書類を取り出しながら、シンに映像を切り替えるように指示しながらVIPルームにいる要人達の紹介をしていく。ただ、参加者を片っ端から紹介していては時間がいくらあっても足りなくなってしまうので、ある程度絞っての紹介となる。
初めに切り替えられた映像に写っていたのは、作曲家で指揮者でもあるオペラを極めた楽劇の創始者であることから、“楽劇王“という名で知られる人物である“リヒャルト・ワーグナー“。
元々トランペット奏者として有名になり、多くの著名な指揮者から学ぶことで様々な楽団や劇場の首席指揮者に就任し、今では各国の音楽監督を務めたりしているという、“アンドレイ・ネルソンス“。
生まれのことで差別を受けていたところを教団に救われ、それ以来教団で活躍する事になるピアニストで、指揮や作曲も手掛ける専属の音楽家である“ブルース・ワルター“は、世代を代表する偉大な指揮者にも選ばれ、とある島国では三大巨匠とも呼ばれていた。
独特な指揮法で有名となった指揮者であり作曲家でもある“ベルヘルム・フルトヴェングラー“。音が出る前から指揮棒の先が細かく揺れ始め、アインザッツが非常に分かりにくい。アインザッツとは音楽に関して用いる場合、休止後の歌い始めや奏し始めの瞬間のことを指す言葉。父は考古学者であり、ケヴィンが知っている情報によると、アークシティの資源調査に協力していたことがあるという噂もあるのだとか。
「特に注目すべき方々はこの辺りでしょうね。他の方々は近隣の国や街の私がない要人といった所でしょう。私もあまり注視はしなくていいと考えています」
「全員、音楽関係の人達なんだな・・・」
「中には教団関係者である人物や、アークシティとの繋がりが匂わされている人物もいます。大司教程ではないにしても、何らかの情報が手に入るかも知れませんよ?」
「確かに・・・。ならそっちも見過ごせない訳か。ん?周りのは護衛か?」
映像を動かしてみると、先程名前の上がった要人達の周りには、シン達と同じようにスーツを着こなした様々な体格の者達がピッタリと付き添っている。だが、その様子からはジークベルト大司教を護衛するために送り込まれた騎士団とは全く目的が掴めない。
と、いうのも護衛隊を務める騎士団のように屈強な者達ばかりではなく、華奢な見た目の男や、ミアのようにスーツを着こなした若い女。他にもアカリ程の年齢の青年などもおり、ボディガードとしては些か心細さを感じる。
「その・・・周りの人達は、その要人の家族や友人達だったりでもするのか?」
疑問に思ったシンがケヴィンに尋ねる。すると彼はまさかと言った様子で鼻で笑い、彼らが何者であるかを語り出す。
「彼らも立派な護衛ですよ。アルバの街にいる騎士団や、大司教を守る護衛隊を見て、無意識に護衛といえば強そうなイメージを勝手に印象付けられているのかもしれませんね」
「あんな子供でもか?」
「勿論ですよ。あまり戦闘というイメージとはかけ離れた街ですからね、アルバは。正直見間違えてしまっても無理もないですね。それも彼らの思惑の一つなのですから」
ケヴィンの話では、他国の重要人物が別の土地や街へ向かう際、ジークベルトのように分かりやすい護衛の一団を連れ歩くこともあるが、注目を集めないように親族を装う場合や、とても護衛には見えないような見た目で付き添うことも少なくないのだと言う。
それぞれが異名を持つほどの実力者であり、その本質は肉体的な戦闘能力ではなくクラスやスキルによる強襲や暗殺にも対応できる、柔軟で異質な強力な能力にあるのだそうだ。
しかし、異質な異名こそあるもののその能力については、対峙した者にしか本当のことは分からない。マティアスから受け取ったという資料にも彼らのことは記載されておらず、ケヴィンも詳しくは分からないそうだ。
「そんな護衛を一音楽家にあてがうのか?」
「音楽家は国やその土地、或いは大陸や時代にまで影響を残す偉大な者ですよ。人々の生に彩りや癒し、または躍動を与える貴重なものなのです。私もさして詳しい訳ではありませんが、音楽に癒されたり勇気付けられたりなどはよくありますよ。シンさんにもないですか?そんな時が・・・」
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