World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
1,208 / 1,646

期待の結果

しおりを挟む
 目を見て小っ恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなく言い放つミアに、聞かされた方が赤面するという事態に陥っていた。それを真正面から受け止めたアカリの顔は、沸騰しそうなほど真っ赤になっていた。

 「ぁっ・・・ありがとう・・・ございましゅ・・・」

 衣装を着ていないのは残り二人。最後のトリを飾るのは嫌だと先に声を上げたのは、そんな何とも言えない空気を作り出した張本人であるミアだった。

 最後になれば期待度や注目度が集まるのは必然。シンもそんな役割を引き受けるなど当然ながら嫌だったことだろう。だがあまりにも自然な流れに、ミアの強行を止めることなど出来なかった。

 何なら、初めからこうなるのを計算して、あんな恥ずかしい台詞で場を飲み込んだのではないかと思えるほど、ミアは動揺することなく試着室へと向かっていった。

 「あっ・・・。くそ!やられた・・・」

 一人だけいつもの格好で取り残されてしまったシンは、一体どんな衣装が用意されているのかも分からぬまま、妙な空気感を感じながらツクヨと同じオーソドックスなスーツにするべきか、ツバキのような長い裾のある燕尾服にしてみようかと思考を巡らせる。

 「シンが大トリになっちゃったね、ドンマイ」

 「安心しろよ。みんなそんなに期待してねぇって」

 「頑張って下さいね!」

 仲間達から慰めを受けるシン。周りも分かってくれているようで、勝手に重荷になっていたプレッシャーが少しだけ取り除かれる。それでもシンの衣装選びの悩みは消えない。

 不安を取り除くように、ツクヨやツバキに試着室にどんな衣装が並べられていたのかを事細かに聞いていた。

 「いやいや、君のことはいいんだよシン!それよりも重要なことがあるだろう!?」

 「何でそんなにツクヨが興奮してるんだよ・・・?」

 「だってあのミアが衣装を変えるんだよ!?君は気にならないのかい!?どんなものを選ぶのか!」

 前にも記したように、彼らはアバターを変えることはなかった。必要性が無いといえばそれまでだが、WoFのゲームとしての世界でも、見た目の衣装が変わるアバターというものは数多くあった。

 いつも同じ衣装では味気なく感じることもあるだろう。ましてや女性とあらば、見た目の変化を楽しむというのも、男性以上に重要視するものではないかと二人は勝手に思っていた。

 それにも関わらず、ミアがこれまで一切衣装を変えてこなかったのは、そんな暇もないほど様々な事に巻き込まれ、この異変の中でも心の休まることがなかったのかもしれない。

 シンとミアは長い付き合いになるが、今ほど時間があるということも無かった。少しくらい束の間の道楽に身を寄せても、バチは当たらないのではないだろうか。


 そういった中で、初めて見る別衣装のミアの姿にツクヨはテンションを上げていたのだ。彼に言われて初めて意識したシンも、ミアがどんな衣装を選ぶのかが気になり、自分のことをそっちのけで妄想を膨らませる。

 「やっぱりドレスかなぁ~。アカリのドレスも良かったけど、ミアはきっと落ち着いた色合いの大人っぽいドレスにしてくるんじゃないかなぁ?」

 「阿呆か!ミアがそんな肌を出す訳ねぇだろぉ?試着室には男物も女物も、色々置いてあっただろ?どうせお前らの期待するような姿じゃ出てこねぇぞ?」

 「あら?私はミアさんも可愛いドレスを着るんじゃないかなって思いますけど?女の子ならみんな、一度はお姫様とか舞踏会っていうのに憧れるものではありません?」

 「それ、個人の感想な?みんな同じみたいに言うと、角が立つぞ。・・・まぁそんな意外なミアってのも見てみたい気もするが・・・」

 ミアの衣装に勝手に妄想を膨らませる一行。それはさながら最も期待される大トリかのように。かく言う、シンもミアの別衣装には期待していた。彼女がどんなものを選ぶのか。

 その衣装には、普段彼女が押さえ込んでいる感情なども反映されているかもしれない。本当はこんなことを考えていて、もっとなりたい自分がいるのではないか。

 一行が様々な妄想に耽っていると、それほど時間を置かずして試着室の方から音が聞こえてくる。試着が終わり、いよいよミアが皆の前に現れる。一体彼女がどんな衣装を選んだのか、固唾を飲んでその瞬間を待ち侘びる仲間達。

 扉が開いて現れたのは、黒い衣装に身を包んだミアだった。シュッとした足元にウエストがはっきりと分かる腰回り。ビシッと決まった背広を羽織った、男性物と思われるスーツを着たミアがそこにはいた。

 「・・・何だよ。さぁ最後はシン、お前だぞ」

 「・・・・・」

 「・・・だから言っただろ。ミアはそんなキャラじゃねぇって。早く行ってこいよ、シン」

 がっかりと言うよりは、やっぱりといった印象だった事だろう。ツバキはミアの事をよく分かっていたようだ。彼の予想は的中し、男性陣が期待していたような肌の露出は全くと言っていいほど無い。

 その中でも、アカリだけは嬉しそうにミアに駆け寄り、かっこいいとまるで男性アイドルの追っかけのように、興奮しながら彼女を褒めちぎっていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...