World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
1,063 / 1,646

警報と防衛システム

しおりを挟む
 そんな折、アズール達が施設のマップを探しに動き出そうとしたところで、彼らとは違う方法で潜入していたエルフ達が、何かを伝えにアズール達へ合図を送っていた。

 何事かと周囲の目に注意しながら物陰に隠れると、そこで別行動をしていたシン達が施設のマップを見つけるためにとある行動に移すという報告だった。

 話を聞くには施設の警報を鳴らし、モニターに映し出されるであろう内部のマップを盗み見るというものだった。

 「警報だと・・・?待て、俺らはその間どうする?」

 「いや、これは我々にとっても好都合なんじゃないか?警報で機材のモニターにマップが表示されるのなら、堂々とそれを確認することが出来る。エルフ達にはその間、何処かに隠れていてもらう事になるけど」

 現状のアズール達は、エイリルのスキルによって他の者達には研究員の姿として見えている。幸い、彼らのいる階層の研究員達は殆ど魔力を持たないただの人間に過ぎない。

 そのお陰で、怪しまれても彼らの魔力やその存在を探られる心配は今の所なさそうだった。まだ施設にはどんな仕掛けが隠されているか分からないが、警報による警戒態勢への移行中は大人しく施設のマップを頭に叩き込む事に集中するのがいいだろう。

 「なるほど、了解した。いつでも大丈夫だと伝えてくれ。後はお前達が身を隠すだけだ」

 アズールらの確認を得たエルフ族は、もう一つの部隊について行ったエルフ達に向けて、警報に対する作戦の了解の意思を伝える。



 場面はシン達の方へと移り変わり、アズールらの部隊から返事をもらったエルフ達が、彼らの現状と作戦の了解を伝えた。

 「どうやら向こうは、ゆっくり機材の確認ができる状態らしいね」

 「問題は俺達の方だな・・・。警報を鳴らすとして、どうやってそれを実行する?影のスキルで脱出できる俺が押しに行くのが妥当だとは思うが・・・」

 ふと彼の脳裏に思い浮かんだのは、今や見方側についているダマスクを瓶の中から解放し、その特異な身体を持ってして警報を鳴らし、気体となって姿を消せば気付かれることなく事を成せるのではないかというものだった。

 シンの眼差しに気付いたのか、ダマスクは閉じ込められている小瓶の中から、彼の期待を打ち砕く言葉を口にする。

 「残念だが、俺に頼るのは諦めた方がいい。記憶を取り戻す為に協力しちゃいるが、この弱った身体じゃぁ何もできん」

 まるで心を見透かされたかのような感情に陥ったシンは、唖然とした表情で手にしていた小瓶を見つめる。

 「・・・まだ何も言ってないが・・・」

 「そうか?俺には何か言いたそうな目をしていたように思えてな。気を利かせて教えてやったんだ」

 シンとダマスクのやり取りを、まるで意に介せずといった様子で考えていたツクヨが、以前に施設の研究者だったらしいというダマスクに、とある確認をとる。それは警報装置を鳴らす事による、防衛システムの起動についての話だった。

 「ねぇダマスク。警報装置を鳴らす事による防錆や警戒の仕様はどうなっているんだ?」

 「仕様?」

 「警報装置が起動したら部屋にロックが掛かるとか、外部の関係者にも知らせがいって増援が来るとか・・・」

 内部的な警戒にばかり気を取られていたシンは、ツクヨの言葉で防衛のシステムや増援という危険性についても視野に入れて考え始める。

 「そうか、そうだよな・・・。警報を鳴らした後の行動にばかり気を取られていたが、警報を鳴らせば防衛システムも起動する筈・・・」

 考えを改め、作戦の内容について考え直そうとするシンに、意外にもダマスクはまるで記憶が残っているのではないかと言う程に、警報装置を鳴らした後の出来事について言葉を連ねる。

 「こっちの兄ちゃんの言う通り、警報装置を起動させれば、その部屋自体にロックが掛かり生体認証を通過できる研究員以外脱出出来なくなる。だがそれは一時的なものだ。機材によって部屋に起きた異常が調べられ、問題がないと判断されればすぐにそれも解除される」

 ダマスクが言うには、手動で警報装置を鳴らすような状況なら、増援や厳重な防衛システムの起動はあり得ないと語る。緊急事態とは意図せず起こるもの。もし危機的な状況と判断されたのであれば、機材に組み込まれた独自の警報装置がその警戒レベルに応じて自動で状況を判断し、部屋に対する防衛システムを起動させるのだという。

 実際、彼らは単純に警報装置を鳴らそうとしているだけで、装置が起動すると同時に、警報装置が起動した部屋にロックが掛かり、機材による状況判断がなされる。

 警報が鳴らされただけで、実際には問題がないと判断されれば、増援や厄介な防衛システムが起動することもないと彼は語った。

 つまり、大きな異常がなければ人為的な確認だけで処理されるということだ。

 「じゃぁそこまで深く考える心配はない・・・と?」

 「そう言うことだ。実際に異常が起きてねぇのに警報を鳴らすんだ。すぐに人為的に鳴らされたものだと判断されるだろう。他の部屋にある機材にも、何処で警報が鳴ったのかと、その部屋の状態が表示される筈だ。強いて俺らが警戒するなら、誰が警報を鳴らしたかと騒ぎになる事くらいだろうな」

 アズール達の部隊とは異なり、姿を隠して潜入している彼らは、警報装置を鳴らした時点で施設の関係者以外によって警報の誤作動を起こされたと警戒するだろう。

 そうなれば何者かが既に施設内にまで侵入していると警戒される。外の騒ぎのこともある為、既に警戒心を持っているとはいえ、研究員の者達も気付かぬ間に施設に侵入されたと分かれば、それこそ未知なる者への恐怖心でパニックになりかねない。

 「それなら、実験の対象に異常を起こさせたらどうだろう?」

 ツクヨが提案したのは、騒ぎにならぬ程度の異常を、容器に入れられた植物に引き起こすというものだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...