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施設の一室へと繋がる扉が開き、中から研究員の男が現れる。すると、扉のすぐ向こう側には二人の同じ白衣姿をした研究員の男が立っていた。
「おぉ、何だお前らどこへ行っていた?」
「すみません、ちょっと息抜きに外へ・・・」
「外・・・?」
部屋の中から出てきた研究員の男は、外にいたという二人の様子に頭を傾げていた。シン達が転移ポータルを起動させ、隠された施設のある場所へやってきていた頃、何でも施設内では警戒態勢に入っていたようだ。
とはいうものの、中の研究員達に何らかの命令が掛かっていた訳ではない。単純に外が騒がしくなった事と、問題を起こさぬようにという警告が出されていた程度だった。
そんな中、何故研究員の二人が外へ出ていたのかを疑問に感じていたようだ。
「あの・・・すみません、私が実験の過程で気分が悪くなってしまい、彼に同行してもらって少し部屋の外へ出ていました」
二人組の研究員の後ろに立っていた方が、怪しむ研究員に対し咄嗟に細かな詳細を話すと、相手の研究員の男は納得したように頷き始めた。
「まぁ、あまり気分のいい実験ではないからな・・・。実験の結果によっては精神を病んでしまう者も少なくない。もう大丈夫なのか?」
「はい、お陰様で・・・」
「それならよかった。お前もいい対応をしたな。それじゃぁな」
「お疲れ様です」
何気ない会話を終え、中から出てきた研究員は通路へ出ると喫煙所と書かれた部屋へと向かっていった。彼を見送り二人の研究員は部屋の中へと入っていく。
中では照明が焚かれておらず、間接照明のみで被検体に対する何らかの実験が行われているようだった。研究員達は実験に使う光から目を守る為、特殊なゴーグルを付けて容器に入れられた植物を摂取したり、土の世話をしている。
部屋へと入った二人も、周りの研究員と同じように首から下げられたゴーグルをし、机や棚を避けながら奥へと進んでいく。そして部屋の片隅へとやって来ると、二人の研究員は周囲を確認し小声で会話を始める。
「どうだ?上手くいっただろ?」
「どういう原理だこれは?幻覚の類なのか?」
部屋へ入ってきた二人の研究員は、施設へ潜入したアズールとエイリルだったのだ。二人がどうして研究員やカメラの認証を掻い潜り、部屋の中へと入り込めたのか。それはエイリルによる特殊なスキルによるものだった。
本来幻覚を見せるスキルは、対象者に掛けるスキルであり、カメラなどの生命体以外の物には効果がない筈。それにスキルを掛けるにしても、出入り口で出会った研究員だけならまだしも、部屋の中にいる研究員にまで気付かれないのはおかしいと、アズール自身妙に感じていた。
「違う違う。幻覚は相手にかけるもので、それではここまでは来れなかった。私がスキルを使ったのは、我々自身にだ」
エイリル曰く、彼の使ったスキルは彼ら自身の認識を変化させるものであり、彼らの姿を見た者には変化した後の姿に見えるようになっていたのだ。要するに変身や擬態といったものに近い。
事前に変化する姿をエイリル自身がその目で確認することで、その対象者と同じ姿形へと認識させることが出来るのだという。
「幸いだったのは、カメラに魔力探知機能が付いていなかった事だな。これは通路に待たせてきたエルフ達に感謝しなければ・・・」
部屋へ向かい前、前もってカメラの機能がどの程度のものなのかを確認するため、探知されても異常が見られないくらいの微量な魔力を、部屋へ出入りする研究員に付与し様子を見ていた。
だが、カメラに異常は現れず、どうやらカメラが認証していたのは研究員の外見状の見た目だけだった事を突き止める。
「さて、長居は無用だな。中を調べて目的のものがなければ、すぐにここを出よう。この調子で虱潰しにしていけば、いずれ目的のものも見つかるだろう。このスキルはいつまで保つ?」
「私の魔力次第だが、二人分なら余裕がある。妙な探知システムでも無い限り気付かれる事もないだろう」
二人は手分けをして部屋の中を探り、破壊すべき機材を探しながら周りに怪しまれぬよう行動を開始する。しかし、その部屋には彼らの想像していたような生物実験の様子は見られず、またそれに関する資料なども見当たらない。
粗方調べ尽くした二人は、タイミングを見計らい順番に部屋を後にする。後に通路で合流した二人は、そのまま次々に同じ階層にある部屋を順次調べて回るが、どこも同じような研究ばかりでこれといった手掛かりは見当たらなかった。
「おい、何か見つけたか?」
「いや・・・何も。何かおかしくないか?アズール」
「あぁ。これではまるで、ただの植物を研究する施設に過ぎない・・・。そんな事はない筈なのに・・・」
彼らの部隊もまた、先行して向かったシン達の部隊と同様に、施設に対する違和感を強めていった。何故こうも何も見つからないのか。彼らの想像していた悍ましい研究の様子は何処にもなく、囚われているかもしれない同族の姿も見当たらなかった。
「だがこんな場所、今まで見つかることはなかったんだ。あの人間もここがその場所だと確信しているようだった・・・。何より捕らえた奴の記憶にあったのがこの場所だったのだから、ここで間違いない筈・・・」
「このまま部屋を一つ一つ調べていってもいいが、これではいつまで掛かるか分からん。それに私の魔力もそう長くは保たない・・・。まずは施設の見取り図的なものを探してみてはどうだろう?何か目に見えぬものが見つかるかもしれない」
自ずと彼らもシン達と同じく、施設の全体像を測る為何処かにあるであろう施設のマップを探すことにした。
「おぉ、何だお前らどこへ行っていた?」
「すみません、ちょっと息抜きに外へ・・・」
「外・・・?」
部屋の中から出てきた研究員の男は、外にいたという二人の様子に頭を傾げていた。シン達が転移ポータルを起動させ、隠された施設のある場所へやってきていた頃、何でも施設内では警戒態勢に入っていたようだ。
とはいうものの、中の研究員達に何らかの命令が掛かっていた訳ではない。単純に外が騒がしくなった事と、問題を起こさぬようにという警告が出されていた程度だった。
そんな中、何故研究員の二人が外へ出ていたのかを疑問に感じていたようだ。
「あの・・・すみません、私が実験の過程で気分が悪くなってしまい、彼に同行してもらって少し部屋の外へ出ていました」
二人組の研究員の後ろに立っていた方が、怪しむ研究員に対し咄嗟に細かな詳細を話すと、相手の研究員の男は納得したように頷き始めた。
「まぁ、あまり気分のいい実験ではないからな・・・。実験の結果によっては精神を病んでしまう者も少なくない。もう大丈夫なのか?」
「はい、お陰様で・・・」
「それならよかった。お前もいい対応をしたな。それじゃぁな」
「お疲れ様です」
何気ない会話を終え、中から出てきた研究員は通路へ出ると喫煙所と書かれた部屋へと向かっていった。彼を見送り二人の研究員は部屋の中へと入っていく。
中では照明が焚かれておらず、間接照明のみで被検体に対する何らかの実験が行われているようだった。研究員達は実験に使う光から目を守る為、特殊なゴーグルを付けて容器に入れられた植物を摂取したり、土の世話をしている。
部屋へと入った二人も、周りの研究員と同じように首から下げられたゴーグルをし、机や棚を避けながら奥へと進んでいく。そして部屋の片隅へとやって来ると、二人の研究員は周囲を確認し小声で会話を始める。
「どうだ?上手くいっただろ?」
「どういう原理だこれは?幻覚の類なのか?」
部屋へ入ってきた二人の研究員は、施設へ潜入したアズールとエイリルだったのだ。二人がどうして研究員やカメラの認証を掻い潜り、部屋の中へと入り込めたのか。それはエイリルによる特殊なスキルによるものだった。
本来幻覚を見せるスキルは、対象者に掛けるスキルであり、カメラなどの生命体以外の物には効果がない筈。それにスキルを掛けるにしても、出入り口で出会った研究員だけならまだしも、部屋の中にいる研究員にまで気付かれないのはおかしいと、アズール自身妙に感じていた。
「違う違う。幻覚は相手にかけるもので、それではここまでは来れなかった。私がスキルを使ったのは、我々自身にだ」
エイリル曰く、彼の使ったスキルは彼ら自身の認識を変化させるものであり、彼らの姿を見た者には変化した後の姿に見えるようになっていたのだ。要するに変身や擬態といったものに近い。
事前に変化する姿をエイリル自身がその目で確認することで、その対象者と同じ姿形へと認識させることが出来るのだという。
「幸いだったのは、カメラに魔力探知機能が付いていなかった事だな。これは通路に待たせてきたエルフ達に感謝しなければ・・・」
部屋へ向かい前、前もってカメラの機能がどの程度のものなのかを確認するため、探知されても異常が見られないくらいの微量な魔力を、部屋へ出入りする研究員に付与し様子を見ていた。
だが、カメラに異常は現れず、どうやらカメラが認証していたのは研究員の外見状の見た目だけだった事を突き止める。
「さて、長居は無用だな。中を調べて目的のものがなければ、すぐにここを出よう。この調子で虱潰しにしていけば、いずれ目的のものも見つかるだろう。このスキルはいつまで保つ?」
「私の魔力次第だが、二人分なら余裕がある。妙な探知システムでも無い限り気付かれる事もないだろう」
二人は手分けをして部屋の中を探り、破壊すべき機材を探しながら周りに怪しまれぬよう行動を開始する。しかし、その部屋には彼らの想像していたような生物実験の様子は見られず、またそれに関する資料なども見当たらない。
粗方調べ尽くした二人は、タイミングを見計らい順番に部屋を後にする。後に通路で合流した二人は、そのまま次々に同じ階層にある部屋を順次調べて回るが、どこも同じような研究ばかりでこれといった手掛かりは見当たらなかった。
「おい、何か見つけたか?」
「いや・・・何も。何かおかしくないか?アズール」
「あぁ。これではまるで、ただの植物を研究する施設に過ぎない・・・。そんな事はない筈なのに・・・」
彼らの部隊もまた、先行して向かったシン達の部隊と同様に、施設に対する違和感を強めていった。何故こうも何も見つからないのか。彼らの想像していた悍ましい研究の様子は何処にもなく、囚われているかもしれない同族の姿も見当たらなかった。
「だがこんな場所、今まで見つかることはなかったんだ。あの人間もここがその場所だと確信しているようだった・・・。何より捕らえた奴の記憶にあったのがこの場所だったのだから、ここで間違いない筈・・・」
「このまま部屋を一つ一つ調べていってもいいが、これではいつまで掛かるか分からん。それに私の魔力もそう長くは保たない・・・。まずは施設の見取り図的なものを探してみてはどうだろう?何か目に見えぬものが見つかるかもしれない」
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