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獣の腕
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悍ましく不気味な魔獣は更にその形を異形のものと変え、左右だアンバランスな形態となった身体は獣の腕が生えた一本分片側に傾いている。威嚇するようにアズール達を睨みつける魔獣は、自身の身体の変化に慣れていない様子でふらふらと蛇行しながらアズールを狙う。
「チッ・・・!何だあの姿は!?それにあの動き・・・狙いづらくてしょうがないッ・・・!」
これまでの直線的な動きとは打って変わり、不規則な動きとなった魔獣に狙いを掻き乱されるも、アズールは自分から攻撃を仕掛けるのではなく、再びカウンターを狙って迫る魔獣の動きに集中する。
魔獣は攻撃のタイミングを見定めると、軸足に体重を乗せて身を屈めると力強く地面を蹴り上げてアズールへ向けて飛びかかる。振り上げた前足をアズールの頭上へ振り下ろすと、彼はそれを片手で受けながら横へと流した。
ガラ空きとなった横っ腹に向け、アズールは足の爪で地面を掴むように体幹を固定し上半身の捻りから繰り出す、鋭利な爪を槍のように寄せ集めた突きを放つ。
アズールの爪は魔獣の皮膚を突き破り、体内に深々と突き刺さった。肘まで魔獣の身体を貫いたアズールの攻撃に、流石の魔獣も致命的なダメージが入ったのか酷く苦しそうな悲鳴をあげる。
強化状態になったアズールの攻撃は、一気に戦況を覆す程の迫力と力強さを見せた。流石は獣人族の長だと、それを見ていた負傷した獣人の表情にも希望の色が浮かんだ。
だが、そこでもアズールの感じていた違和感が、魔獣の体内に突き刺さる腕を伝って驚愕の変化という形となって彼らの前に現れた。
腕を引き抜こうとしたアズールだったが、魔獣の体内で何かに掴まれたかのように引っかかり抜けなくなっていた。致命傷を受けても尚、その腕を引き抜かせまいと筋肉に力を入れ引き締めているのか、アズールの腕はどんなに引っ張ろうと抜けることはなかった。
「クソッ・・・!こいつッ・・・逃がさねぇつもりかッ!?」
体内を掻き混ぜられる痛みで筋肉の凝縮を解いてやろうと、指の先や腕を揺さぶろうと力任せに暴れて見せるアズールだが、彼の腕は指の先までしっかりと拘束されており動かすことが出来ない。
どちらも必死の攻防を繰り広げる中、何かがアズールの頭上に暗い影を落とす。僅かに視界が暗くなっていることに気づいたアズールが視線を上げると、そこには先程魔獣の背中から生えた獣の腕が、彼の頭上に大きな手を広げて落ちてきていたのだ。
「しまッ・・・!!」
「アズールッ!!!」
それまでただの付属品のように垂れ下がっていた獣の腕は、しっかり意志を持って動かしているかのようにアズールの頭を鷲掴みにする。彼の頭を掴んだ獣の腕は小さく震えるように力が込められていく。
「ぐぅッ・・・ぉぉぉおおおおあああッ!!」
魔獣の背中から生えた三本目の腕は、アズールの頭部を握り潰さんと力が入っていく。必死に耐えながた腕を引き抜こうとするアズールだが、このままでは腕が抜けるよりも先に、圧迫されたスイカのよう彼の頭部が弾け飛んでしまう。
絶体絶命のアズールを何とか助けようと、負傷している獣人は自身の感じる痛みなどに怯んでいる場合ではないと動かぬ身体を奮い立たせ、腰に携えていたサバイバル用の刃物を取り出し、魔獣に向かって飛び掛かっていった。
魔獣の身体を挟んで向こう側で捕らえられているアズールの元へ向かうには、魔獣を迂回して回るか飛び越えて行くしかない。だが、どちらも今の負傷した獣人には現実的ではなかった。
飛び越えるほどの力は残っておらず、既に迫っている獣人の動きに気づいている魔獣が大人しく回り込んでくるのを待っているとも思えない。そこで彼が思い出したのは、魔獣との戦いでアズールが見せた流れるような戦い方だった。
相手の力を利用し、その勢いすら自分の力に変える巧みな戦闘術。見よう見真似で出来るものでない事は彼が一番分かっていたが、最早彼の脳裏に浮かぶイメージを実現させる他に今のアズールを救う手立てはない。
魔獣はアズールのいる方の前足を地面に固定し、反対の前足で迫る獣人を薙ぎ払おうと、周囲の草木を巻き上げるほど凄まじい勢いで振り抜いた。木の幹のように太い魔獣の前足は、飛び掛かる獣人を見事に捉え命中する。
身体の片側にかまいたちのような突風を巻き起こした魔獣は、姿の消えた獣人から捕らえたアズールの方へと意識を移す。そして負傷した獣人を吹き飛ばした方の前足で、今度はアズールの身体を握り潰さんとするが、そこで初めて自身の前足にきらりと光る何かが刺さっていることに気がついた。
魔獣の前足に刺さっていたのは、小さな刃物だった。何故そんなものが自分の前足に刺さっているのかさえ覚えのない魔獣は、そのまま気にする事もなくアズールの方へ前足を伸ばしていく。
しかし、負傷した獣人は魔獣に吹き飛ばされてなどいなかったのだ。彼は振り抜かれた魔獣の前足に刃物を突き刺し、魔獣の前足を振り抜く勢いを利用して上空へと飛んでいたのだ。
一人の力ではここまで高く飛び上がることなど出来なかった。そして彼は宙を舞っている間に、自身に残された最後の力を振り絞り、負傷していない方の腕を強化した。
落下の勢いと自分で生み出した回転の力を利用し、アズールの頭部を掴む魔獣の三本目の腕目掛けて渾身の一撃をお見舞いする。
「チッ・・・!何だあの姿は!?それにあの動き・・・狙いづらくてしょうがないッ・・・!」
これまでの直線的な動きとは打って変わり、不規則な動きとなった魔獣に狙いを掻き乱されるも、アズールは自分から攻撃を仕掛けるのではなく、再びカウンターを狙って迫る魔獣の動きに集中する。
魔獣は攻撃のタイミングを見定めると、軸足に体重を乗せて身を屈めると力強く地面を蹴り上げてアズールへ向けて飛びかかる。振り上げた前足をアズールの頭上へ振り下ろすと、彼はそれを片手で受けながら横へと流した。
ガラ空きとなった横っ腹に向け、アズールは足の爪で地面を掴むように体幹を固定し上半身の捻りから繰り出す、鋭利な爪を槍のように寄せ集めた突きを放つ。
アズールの爪は魔獣の皮膚を突き破り、体内に深々と突き刺さった。肘まで魔獣の身体を貫いたアズールの攻撃に、流石の魔獣も致命的なダメージが入ったのか酷く苦しそうな悲鳴をあげる。
強化状態になったアズールの攻撃は、一気に戦況を覆す程の迫力と力強さを見せた。流石は獣人族の長だと、それを見ていた負傷した獣人の表情にも希望の色が浮かんだ。
だが、そこでもアズールの感じていた違和感が、魔獣の体内に突き刺さる腕を伝って驚愕の変化という形となって彼らの前に現れた。
腕を引き抜こうとしたアズールだったが、魔獣の体内で何かに掴まれたかのように引っかかり抜けなくなっていた。致命傷を受けても尚、その腕を引き抜かせまいと筋肉に力を入れ引き締めているのか、アズールの腕はどんなに引っ張ろうと抜けることはなかった。
「クソッ・・・!こいつッ・・・逃がさねぇつもりかッ!?」
体内を掻き混ぜられる痛みで筋肉の凝縮を解いてやろうと、指の先や腕を揺さぶろうと力任せに暴れて見せるアズールだが、彼の腕は指の先までしっかりと拘束されており動かすことが出来ない。
どちらも必死の攻防を繰り広げる中、何かがアズールの頭上に暗い影を落とす。僅かに視界が暗くなっていることに気づいたアズールが視線を上げると、そこには先程魔獣の背中から生えた獣の腕が、彼の頭上に大きな手を広げて落ちてきていたのだ。
「しまッ・・・!!」
「アズールッ!!!」
それまでただの付属品のように垂れ下がっていた獣の腕は、しっかり意志を持って動かしているかのようにアズールの頭を鷲掴みにする。彼の頭を掴んだ獣の腕は小さく震えるように力が込められていく。
「ぐぅッ・・・ぉぉぉおおおおあああッ!!」
魔獣の背中から生えた三本目の腕は、アズールの頭部を握り潰さんと力が入っていく。必死に耐えながた腕を引き抜こうとするアズールだが、このままでは腕が抜けるよりも先に、圧迫されたスイカのよう彼の頭部が弾け飛んでしまう。
絶体絶命のアズールを何とか助けようと、負傷している獣人は自身の感じる痛みなどに怯んでいる場合ではないと動かぬ身体を奮い立たせ、腰に携えていたサバイバル用の刃物を取り出し、魔獣に向かって飛び掛かっていった。
魔獣の身体を挟んで向こう側で捕らえられているアズールの元へ向かうには、魔獣を迂回して回るか飛び越えて行くしかない。だが、どちらも今の負傷した獣人には現実的ではなかった。
飛び越えるほどの力は残っておらず、既に迫っている獣人の動きに気づいている魔獣が大人しく回り込んでくるのを待っているとも思えない。そこで彼が思い出したのは、魔獣との戦いでアズールが見せた流れるような戦い方だった。
相手の力を利用し、その勢いすら自分の力に変える巧みな戦闘術。見よう見真似で出来るものでない事は彼が一番分かっていたが、最早彼の脳裏に浮かぶイメージを実現させる他に今のアズールを救う手立てはない。
魔獣はアズールのいる方の前足を地面に固定し、反対の前足で迫る獣人を薙ぎ払おうと、周囲の草木を巻き上げるほど凄まじい勢いで振り抜いた。木の幹のように太い魔獣の前足は、飛び掛かる獣人を見事に捉え命中する。
身体の片側にかまいたちのような突風を巻き起こした魔獣は、姿の消えた獣人から捕らえたアズールの方へと意識を移す。そして負傷した獣人を吹き飛ばした方の前足で、今度はアズールの身体を握り潰さんとするが、そこで初めて自身の前足にきらりと光る何かが刺さっていることに気がついた。
魔獣の前足に刺さっていたのは、小さな刃物だった。何故そんなものが自分の前足に刺さっているのかさえ覚えのない魔獣は、そのまま気にする事もなくアズールの方へ前足を伸ばしていく。
しかし、負傷した獣人は魔獣に吹き飛ばされてなどいなかったのだ。彼は振り抜かれた魔獣の前足に刃物を突き刺し、魔獣の前足を振り抜く勢いを利用して上空へと飛んでいたのだ。
一人の力ではここまで高く飛び上がることなど出来なかった。そして彼は宙を舞っている間に、自身に残された最後の力を振り絞り、負傷していない方の腕を強化した。
落下の勢いと自分で生み出した回転の力を利用し、アズールの頭部を掴む魔獣の三本目の腕目掛けて渾身の一撃をお見舞いする。
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