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神代 コウ

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伝わる力

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 魔力の残量を気にする必要がなくなったツバキは、子供達の負担をなるべく少なく収めるため、早速ガジェットを使い二人のレインコートの少年による魔法で動きを拘束されるモンスターへと、飛び掛かっていく。

 だが、モンスターの方もやられっぱなしではなかった。本来の力を抑えられている子供達の魔法では、長くモンスターを拘束していることは出来ないようで、ツバキの動きに合わせて振り解かれてしまう。

 空中で足のガジェットの力を利用し、身体を回転させて勢いをつけるツバキ。大型のソウルリーパーも、それを迎え撃たんと腕を振りかぶる。

 そしてツバキの強烈な蹴りが放たれると、モンスターの爪と物理的にぶつかり合う。鈍い音を響かせながら、周囲へ衝撃が走る。近くにあった瓦礫が吹き飛ぶ中で、少年達も吹き飛ばされまいと、施設の柱の影に隠れたり、どこか頑丈なところに掴まって耐えている。

 ツバキはすぐにモンスターの大爪を反対の足で蹴り上げ、モンスターの腕との距離を取る。彼は先程の失敗を活かし、モンスターの物理的な攻撃の後に引っ張られるようにやってくる魔力による内部的な攻撃に備えていたのだ。

 案の定、ツバキによって大きく弾かれた空間に、遅れて魔力の具現化した魔力のオーラが炎のようにやってくる。

 触れるだけで体力と魔力を削られるオーラの範囲を見極め、ツバキは即座に次の一手へと動き出す。

 ガジェットで加速したツバキは、床スレスレを拘束で駆け抜け、先程の一撃で弾いたモンスターの腕の裏へ回り込む。そして、目にも止まらぬ足技で霧を払うように、モンスターの腕の付け根あたりへ目掛けて、斬撃のように鋭い衝撃波を放つ。

 「烈風脚ッ!!」

 衝撃波はモンスターの纏う魔力のオーラを切り裂き、狙い通り肩の付け根に命中する。効いているのか、対峙してから初めてモンスターが呻き声を上げて苦しむ。

 チャンスを逃すまいと、ツバキは続けて攻撃をたたみ込もうと、腕のガジェットを使い刀の一閃のように鋭い手刀で、再び魔力のオーラを切り裂く、飛ぶ斬撃を撃ち放った。

 狙うは先程命中した部位。同じ箇所に何度も攻撃を加えることで、耐久や自然回復といった事態にも配慮していたのだ。それに、ガジェットの力で武闘家クラスのスキルを真似てはいるが、威力や消費魔力は本家本元のそれとは異なるもの。

 何処でもいいから撃ち込んでいける程、ツバキには有効なダメージソースがないのだ。限られた手の内で、小さく細かく、鋭い一撃を重ねることで、一点集中の火力に期待していたのだ。

 彼の放った衝撃波は、目論見通り見事に同じ箇所に命中し、身に纏う魔力のオーラと共にモンスターの大きな腕を切り落として見せた。

 「ギャァァァーーーー!!」

 ソウルリーパーの大きな悲鳴が施設内に響き渡る。肩から千切れ落ちた腕は床へと落下し、地面に消えていくように四散して煙を巻き上げる。

 目に見えてダメージを実感できる時ほど、追い風を感じることはない。掃除をする時に、目に見えて汚れが落ちていく時と同じ達成感のようなものを感じていた。

 綺麗に汚れが落ちていくのなら、このまま区切りのいいところまでやってしまおうと、ツバキは厄介なもう片方の腕も切り落としてしまおうと動き出す。

 攻撃に使った箇所の魔石を取りかえ、新たな魔石をはめ込む。そして外した魔石を、魔石に魔力を補充する少年の方へ床を滑らせるように投げる。

 代わりに少年が魔力を補充してくれたであろう、強い光を放つ魔石を拾うと手持ちに加える。少年が魔力を補充した魔石は、他の魔石に比べ強い光を放っている。

 まずは施設で拾った魔石から消費していくツバキ。モンスターの動きを見ながら、爪の届かない位置を見極め周囲を移動する。

 残った方の腕を振るい、ツバキの接近を嫌がるモンスターだったが、それは更にツバキの目を肥やす為の動きでしかなかった。身に纏っている魔力のオーラは、モンスターの腕を追いかけるように靡いており、攻撃後の隙を埋めるように動いている。

 だが先程もツバキがやって見せたように、魔力のオーラは攻撃により振り払うことが可能。ただし、物理的な攻撃では自身の体力と魔力を削られてしまう為、間接的な攻撃、或いは遠距離攻撃に限られる。

 少しずつモンスターの動きと癖を見極めてきたツバキに、片腕のモンスターの攻撃が当たるはずもなく、隙を突いたツバキの連撃により、もう片方の腕も切り落とすことに成功した。

 再び煙を巻き上げる腕を見送り、これで攻撃手段を失ったモンスターへ、トドメを刺すべく少年の補充した魔石へと切り替える。

 すると、ガジェットから溢れる魔力がこれまでの魔石とは明らかに違っていた。漲る力に感謝しつつ、両腕を失い、ただの魔力を放出する出来の棒になったソウルリーパへ、最後の一撃となるであろう攻撃を仕掛ける。

 万全を期して、ツバキはソウルリーパーに近づくことなく仕留められる大技を放つ為、腕に最大出力のエネルギーを集中させる。

 しかし、ソウルリーパーもそこで終わるような見掛け倒しのモンスターではなかった。ツバキによって落とされた腕の煙の中で、雄叫びを上げながら徐々に失った身体の部位を再形成し始めた。

 時間を掛ければ再び厄介な事になる。焦ったツバキは、最大限に力が溜まる前に十分すぎるほど集められたエネルギーを、ソウルリーパーへ撃ち放つ。

 「発勁・双竜波ッ!!」

 突き出した両の腕から、竜の形を模した衝撃波がソウルリーパー目掛けて突き抜けていく。魔力のオーラなど意に介さず食い破り、モンスターの身体へ命中するかと思われたその直後、二匹の竜は新しく生まれ変わったモンスターの腕によって、受け止められてしまう。

 新たな腕はこれまでのものと比べ、逞しく強い光を放っている。魔力もこれまでよりも強まり、ツバキの放った最大級の技にも負けじと競り合っている。
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