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希望の再装填
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大きく鋭利な爪がその小さな身体を擦ると、霊体でありながらその衣服を裂き、僅かに覗かせる肌に赤い亀裂のような爪痕を残した。
「いッ・・・!?
それまでのソウルリーパー達の攻撃は、ツバキの身体に外傷を与えるようなものではなく、通り抜ける事によってその魔力や精神を削り取るというものだった。
それが、ダメージが可視化されただけでなく、実際に刀で斬られたかのような外傷が残り、見た目以上のダメージをツバキの身体に与えていた。
外傷こそ、剣先で少し擦った程度だったが、モンスターの爪の周りには身体を模る魔力が放出されており、実際の爪による攻撃に加え、放出されている魔力に触れることで、これまでのように魔力が身体を透過し、その者の体力や魔力を削り取っていたのだ。
つまり、実際に見えている範囲とは大きく異なる距離で攻撃が行われていたのだ。これではとても、ガジェットの力無くして避けることなど不可能。ましてや子供の身体となれば尚の事だろう。
「おいおい・・・嘘だろ?こんなんじゃ・・・避けられッ・・・!」
体力をごっそりと持っていかれてしまったツバキは、その場で膝をつき四つん這いの状態になってしまう。
そこへ休む間もなく、折り返して来た大型のモンスターが、次の一撃を振りかざす。削り取られた体力はすぐには戻らず、震える足は思い通りに動かない。
頼りのガジェットすら起動出来なくなってしまった状態のツバキに、再びモンスターの鋭い爪が襲い掛かる。
決して油断していた訳でも、甘く見ていた訳でもない。それは不意に起きた事故のようなもの。ツバキに落ち度はない。それでも戦闘や勝負事において、予期し得ぬ不測の事態というものは、相応にして起きてしまうもの。
判断に誤りがあったとするならば、それは出し惜しみなどせず、ガジェットの魔力を使い全力でモンスターの攻撃を避けるべきだったのかもしれない。
そうしていれば、少なくとも今窮地に陥ることはなかった。そして、モンスターの攻撃から、このような性質があったことも確認できていた筈。
だがそれを知り、認識したところで魔力を使い果たしてしまえば、ツバキの迎える未来に然程の違いはないのかもしれないが・・・。
しかし、神はまだ彼のことを見放してはいなかった。これも、彼が知らず知らずの内に手繰り寄せた巡り合わせだろう。
突然、モンスターの動きがピタリと止まり、ツバキに向かっていたその巨体は、何かに縛られるように動きを止めていた。
「・・・何だ・・・?」
死を覚悟していたツバキだったが、目前で動きの止まるモンスターを見て、何故動きを止めたのか、モンスターの全身を見渡した後に、周囲の状況を確認する。
モンスターが自発的に攻撃を止めたとは考えられない。ツバキを攻撃対象から外したという線もあり得ない。現に、モンスターの身体は今も、ツバキを攻撃しようと必死にもがいている。
ツバキやモンスター自身によるものではなく、第三者による仕業。周りを見渡した彼の視界に飛び込んできたのは、消えた少年が最後にツバキに伝えた、友軍の姿だった。
そこには二人のレインコートの少年が立っており、両手をモンスターの方へ向け、魔法を放っていた。
「お前らッ・・・!」
駆け付けたのは二人だけではなかった。他にも、ツバキが使い果たして捨てた魔石を拾ってきた子供が、彼の元へ駆けつける。
「コレ・・・コレ・・・」
「それは俺が捨てた・・・ッ!?」
魔力を失い、使い物にならない筈の魔石が、その子供の手の上で再び魔力を感じさせる光を放っていたのだ。
「お前・・・これ・・・。探してきたのか?」
初めツバキは、子供の手にしていた魔石は、施設内に散らばる他の物かと思っていたが、どうやらそうではなかったようだ。
彼らはその身に余る魔力を使って、魔石に魔力の補充を行っていたのだ。これも普通の人間では考えられない事だった。
そもそも、自身で別の物質や生物に魔力を移すことは、そう容易にできることではない。他者が欲する引力と、自身が与えようとする注力を揃えることは難しく、対象が物であれば尚の事。
それも、魔力を集めやすい性質を持つ魔石の場合、想定している以上の魔力を吸い取られてしまうケースが殆どで、同じような実験が行われた際も、死者が出るほどだった。
それをこんな子供が、何の機材や道具を利用することもなく、自分の裁量でやってのけるなど、到底あり得ないことだった。
魔力の補充という想定外の奇跡の技をやってのけた子供達に、ツバキは希望の光を見出した。どれくらいのペースで魔石に魔力を補充出来るか目にした訳ではなかったが、これである程度の残量不足は解消された。
ガジェットが燃料不足を考えずに使えるのであれば、今彼らの目前にいる大型のソウルリーパーとも、十分に渡り合える。
「マセキ・・・ヒロウ・・・マセキ・・・ホジュウスル・・・」
「いいのか・・・?任せちまって・・・」
彼らとて、無限に魔力を補充できる訳ではないだろう。下手をすれば、量を見誤り死んでしまうことも十分あり得る。魂をそれを模るレインコートの副作用により、思考力の低下を受けている状態で、そのコントロールが行えるとも思えないが、そんな危険を前にしても、彼らは先生とそれを助けてくれた恩人であるツバキの為に、できる限りを尽くす覚悟でいたようだ。
ツバキに補充した魔石を手渡すと、彼は再びツバキの捨てた魔石を拾いに行き、魔力を補充し始める。
「なるべく早く、ケリ・・・つけるからッ・・・!!」
渡された魔石を力強く握り締め、再びツバキの目に希望の光と強い力が湧いてくる。命懸けで手助けを行う子供達の姿に、ツバキの闘志も奮い立ち、痛みと疲労に折れる膝で立ち上がる。
「いッ・・・!?
それまでのソウルリーパー達の攻撃は、ツバキの身体に外傷を与えるようなものではなく、通り抜ける事によってその魔力や精神を削り取るというものだった。
それが、ダメージが可視化されただけでなく、実際に刀で斬られたかのような外傷が残り、見た目以上のダメージをツバキの身体に与えていた。
外傷こそ、剣先で少し擦った程度だったが、モンスターの爪の周りには身体を模る魔力が放出されており、実際の爪による攻撃に加え、放出されている魔力に触れることで、これまでのように魔力が身体を透過し、その者の体力や魔力を削り取っていたのだ。
つまり、実際に見えている範囲とは大きく異なる距離で攻撃が行われていたのだ。これではとても、ガジェットの力無くして避けることなど不可能。ましてや子供の身体となれば尚の事だろう。
「おいおい・・・嘘だろ?こんなんじゃ・・・避けられッ・・・!」
体力をごっそりと持っていかれてしまったツバキは、その場で膝をつき四つん這いの状態になってしまう。
そこへ休む間もなく、折り返して来た大型のモンスターが、次の一撃を振りかざす。削り取られた体力はすぐには戻らず、震える足は思い通りに動かない。
頼りのガジェットすら起動出来なくなってしまった状態のツバキに、再びモンスターの鋭い爪が襲い掛かる。
決して油断していた訳でも、甘く見ていた訳でもない。それは不意に起きた事故のようなもの。ツバキに落ち度はない。それでも戦闘や勝負事において、予期し得ぬ不測の事態というものは、相応にして起きてしまうもの。
判断に誤りがあったとするならば、それは出し惜しみなどせず、ガジェットの魔力を使い全力でモンスターの攻撃を避けるべきだったのかもしれない。
そうしていれば、少なくとも今窮地に陥ることはなかった。そして、モンスターの攻撃から、このような性質があったことも確認できていた筈。
だがそれを知り、認識したところで魔力を使い果たしてしまえば、ツバキの迎える未来に然程の違いはないのかもしれないが・・・。
しかし、神はまだ彼のことを見放してはいなかった。これも、彼が知らず知らずの内に手繰り寄せた巡り合わせだろう。
突然、モンスターの動きがピタリと止まり、ツバキに向かっていたその巨体は、何かに縛られるように動きを止めていた。
「・・・何だ・・・?」
死を覚悟していたツバキだったが、目前で動きの止まるモンスターを見て、何故動きを止めたのか、モンスターの全身を見渡した後に、周囲の状況を確認する。
モンスターが自発的に攻撃を止めたとは考えられない。ツバキを攻撃対象から外したという線もあり得ない。現に、モンスターの身体は今も、ツバキを攻撃しようと必死にもがいている。
ツバキやモンスター自身によるものではなく、第三者による仕業。周りを見渡した彼の視界に飛び込んできたのは、消えた少年が最後にツバキに伝えた、友軍の姿だった。
そこには二人のレインコートの少年が立っており、両手をモンスターの方へ向け、魔法を放っていた。
「お前らッ・・・!」
駆け付けたのは二人だけではなかった。他にも、ツバキが使い果たして捨てた魔石を拾ってきた子供が、彼の元へ駆けつける。
「コレ・・・コレ・・・」
「それは俺が捨てた・・・ッ!?」
魔力を失い、使い物にならない筈の魔石が、その子供の手の上で再び魔力を感じさせる光を放っていたのだ。
「お前・・・これ・・・。探してきたのか?」
初めツバキは、子供の手にしていた魔石は、施設内に散らばる他の物かと思っていたが、どうやらそうではなかったようだ。
彼らはその身に余る魔力を使って、魔石に魔力の補充を行っていたのだ。これも普通の人間では考えられない事だった。
そもそも、自身で別の物質や生物に魔力を移すことは、そう容易にできることではない。他者が欲する引力と、自身が与えようとする注力を揃えることは難しく、対象が物であれば尚の事。
それも、魔力を集めやすい性質を持つ魔石の場合、想定している以上の魔力を吸い取られてしまうケースが殆どで、同じような実験が行われた際も、死者が出るほどだった。
それをこんな子供が、何の機材や道具を利用することもなく、自分の裁量でやってのけるなど、到底あり得ないことだった。
魔力の補充という想定外の奇跡の技をやってのけた子供達に、ツバキは希望の光を見出した。どれくらいのペースで魔石に魔力を補充出来るか目にした訳ではなかったが、これである程度の残量不足は解消された。
ガジェットが燃料不足を考えずに使えるのであれば、今彼らの目前にいる大型のソウルリーパーとも、十分に渡り合える。
「マセキ・・・ヒロウ・・・マセキ・・・ホジュウスル・・・」
「いいのか・・・?任せちまって・・・」
彼らとて、無限に魔力を補充できる訳ではないだろう。下手をすれば、量を見誤り死んでしまうことも十分あり得る。魂をそれを模るレインコートの副作用により、思考力の低下を受けている状態で、そのコントロールが行えるとも思えないが、そんな危険を前にしても、彼らは先生とそれを助けてくれた恩人であるツバキの為に、できる限りを尽くす覚悟でいたようだ。
ツバキに補充した魔石を手渡すと、彼は再びツバキの捨てた魔石を拾いに行き、魔力を補充し始める。
「なるべく早く、ケリ・・・つけるからッ・・・!!」
渡された魔石を力強く握り締め、再びツバキの目に希望の光と強い力が湧いてくる。命懸けで手助けを行う子供達の姿に、ツバキの闘志も奮い立ち、痛みと疲労に折れる膝で立ち上がる。
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