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神代 コウ

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代用の利く人生

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 自分は何をやっても、結果を残せない人間なのだと悟った。

 学生時代に励んだ学業では、クラスや学年に自分よりどの教科でも出来てしまうような人間がいた。自分がいくら遅くまで勉強しようと、他の人間が遊んでいる時間を勉強に注ぎ込もうと、中には遊びも勉学も両立出来てしまう人間もいた。

 スポーツにしてもそうだった。どんなに身体を動かそうと、どんなに基礎を叩き込もうと、才能というのはあるのだと思い知らされるだけだった。

 勿論、才能という言葉だけで片付くような、簡単な話ではない。彼らは才能を持ち合わせながらも、他の人間に負けないくらいの努力をしていた。ただ私は知らなかっただけなのだ。

 彼らの活躍にばかり目がいきがちだが、彼らも彼らで周りの人間が知らないところで努力を重ねていた。

 鬼神のような鬼気迫る身体能力に加え、血の滲むような努力という磨き上げた武器まで持っているのだ。平均的かそれ以上くらいの人間に、追いつける筈がない領域だったのだ。

 “鬼に金棒“とは正にこの事なのだと、私は幼いながらも、ことわざとは人生の教訓のようなものなのだと理解した。

 ならば私には一体何が出来るのか。そう考えた時、私には他の人間よりも優れていると言えるものが、何一つ無かった。

 特技や技量、奇抜性のない平均的な人間。

 それが、“天沢武臣あまさわ たけおみ“という人間だ。

 ゲームの世界ならば、身体能力や知識に関係なく、何か個性を身につけることが出来るのではないかと、話題のVR MMO RPG“WoF“を始めたのがきっかけだった。

 天臣あまおみという名前で世界に飛び込み、全てが初めての新鮮な体験の中、手探りで徐々に技量や知識を身につけていくのは、勉強や運動で培うものとはまた違った経験だった。

 ステータスという目に見えて成長しているというのが、自分自身のモチベーションにも繋がった。時間をかけで頑張った分が、ちゃんと反映されているのだと、喜びを感じた時期もあった。

 しかし、ゲームの中にもサークルやチームといったものがあり、私はその中で自分がどんな人間なのかを知ることになる。

 私を受け入れてくれたサークルは、厳しいノルマや条件などなく、ただ純粋に楽しむといった方針の穏やかなサークルだった。

 ログイン時に挨拶をし、誰かがログインになれば挨拶をする。話題を振られればそれに応答し、協力する際は一緒に向かう。そして、ログアウトする時にお別れの挨拶をする。

 ただ何も変わらぬ普通の日常。おかしなところはなく、誰かに迷惑をかけることもない。そんな日々を送る中で、私はあることに気がついたのだ。

 これでは現実世界と何ら変わらないのではないか?

 確かに私は、悪行も迷惑行為もしない善良な一般ユーザーだった事だろう。しかし、WoFの世界でも私は、何をしても誰かに誇れるようなものは身につかなかったのだ。

 それが悪い事とは言わない。しかし、それは私でなくても“代用“が利く存在なのではないか。

 協力して大型モンスターを討伐する時も、私よりも強い人間はいくらでもいた。私はあくまで戦力の内の、一つの歯車だった。

 ましてや回復をメインにするヒーラーや、仲間に援護を行う支援系のクラスと違い、私は前線で戦う火力タイプのクラス。

 タンクのような明確な役割もない、ただモンスターの体力を減らす削り役。

 あぁ、世界が変わろうと私は私なのだ・・・。

 結局は自分が変わらなければこの考えも変わらないし、見える世界を変えることも出来ない。

 それは人生をつまらなくし、安らぎや快楽を見出せないつまらない人生になってしまう。

 大きな刺激はいらない。人生を一変させるようなスリルも望んではいない。

 ただ、何事に対しても無気力になってしまうような、起伏のない人生になるのが恐ろしかったのだ。

 自分が必要ないと思ってしまうということは、いずれ生きる価値すら見失ってしまいそうになり、時々眠れなくなってしまう事がある。それが加速していったら、私はどうなってしまうのだろう。

 いつか、自分でも意図せず命を絶ってしまうのではないかと、恐くて堪らなかった。

 WoFを始めたのは、私にとっても大きな転機となった。

 サークル内で協力し合う中で、私はヒーラーや援護するクラスに魅力を感じた。チームの中に多くは必要ないが、なくてはならない存在。それは自分自身が強くならなくとも、前線で戦う者をサポートし、エースを輝かせる謂わば縁の下の力持ちというやつだ。

 これを現実世界でも活かせないだろうかと考えた時、人々に希望を与え、一人一人の世界に辛い出来事や、悲しい出来事を忘れさせる時間を作れるアイドルという存在に目をつけた。

 人々にエンターテイメントを提供する彼ら彼女らは、世界に明かりを灯す無くてはならないもの。私がその光になることは出来ない。それならばせめて、それをサポートすることは出来ないだろうか。

 彼らの成功が私の成功に、達成感に繋がる。喜びや歓喜の共有。それこそ私の人生のに必要なものなのかも知れない。

 すぐに私は勤めていた会社を辞め、アイドルをプロデュースする事務所へと駆け込んだ。何をするにも初めてだった私に、最初の担当アイドルが付いた。



 それが“岡垣友紀“というアイドルとの出会いだった。
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