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空白の時の中で・・・
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妹と大して歳の変わらぬキングの船員達にデイヴィスは、レイチェルのことを尋ねていた。彼女も彼らと同じく奴隷として捕まり、取引されそうになっているところをキングに助けてもらったのだという。
助けてもらうと言っても、意外な事に力技で解決したわけでは無いようだった。キングの力と組織であれば、奴隷交渉の場をそのまま抹消することも可能だっただろう。
だが、敢えて力技に出なかったのは、今後の貿易で何かの役に立つかもしれないからだった。正規の取引では受け渡せないものでも、そのような裏のルートを使えば高額で取引することができる。
そういったルートは幾つも確保しておくに限る。いつ潰れるかも分からぬルートだけでは、心許ない。キングの組織とは、何も綺麗な取引ばかりで大きくなった組織ではないのだから。
彼らはキングに引き渡され、酷く絶望したそうだ。何でも、奴隷となった彼らの中に、キングの組織のことを噂で聞いた者がいたのだという。その者によれば、キングのところに引き渡された奴隷はろくな運命を辿らないと言う。
しかし、実際にキングの元へ来てみればどうだろう。まるで道具のようにこき使われることもなく、きちんとした食事も出された。宛ら客人かのようなもてなしをされた。
確かに雑用はさせられたが、噂に聞くような酷く辛い作業はなく、掃除や食事の準備、学問や武芸の教養など、貧しい家庭に生まれた者にとっては、元の家よりも優れた環境が用意されていたのだ。
それでも、心が落ち着くことはない。見慣れた景色に微笑ましい団欒の光景、それらは彼らにとって二度と戻らぬ日々なのだから。だか、同じ境遇に晒された者同士で、心に空いた穴を埋めることは出来そうだった。
それぞれ個人差はあれど、それは時間が解決してくれる。共に過ごす彼らとの思い出や、キングの語る世界の物語に触れ、徐々に前を向いて足を踏み出して行くのだ。
ある程度の教養と、身を守る手段を身につけた彼らは、実を成した者から、キングの取引した家へと引き渡されていった。このままキングの船に乗せておく訳にもいかず、長居して仕舞えば彼らは“人に使われる“事に慣れてしまう。
それでは何の為に救ったのか分からなくなってしまう。そして取引相手も、キングによって慎重に選ばれた相手であり、彼らの身の安全も保障されていた。
子宝に恵まれぬ家庭へ、事情により後継がいなくなってしまった者達家庭。ただ闇雲に奴隷として引き渡すのではなく、双方の今後にとって実りのある取引をしていたのだ。
キングが奴隷として売り飛ばすのは、他の海賊船で捕らえたどうしようもない者達や、救いようのない者達。そして子供であっても、人の道を外れたような者達へは、容赦なく商品としていた。
レイチェルがキングの船に来た時も、彼女の瞳に輝きはなく、虚な表情で自身の運命にただ絶望しているかのようだった。時間はかかったが、漸く話せるくらいに回復した彼女からは、共に暮らしていた家族の話がよくされていた。
兄がいるようで、よく外を駆け回り共に遊んでいたのが、記憶に残る思い出だったそうだ。その兄は隠れんぼが得意で、毎回彼女は降参を余儀なくされていた。とても面倒見のいい兄で、彼女もそんな兄のことが大好きだった。
キングの船に引き取られた彼らは、互いにそのような立場になった経緯を語らないし聞かない。嫌な記憶という獣を、なるべく表に出さないよう、心の奥底にある牢獄に押し込んでいる。
それはキングや、彼らの面倒を見ていたシー・ギャングの構成員からも、そのように言われていたということもあった。誰よりも彼らはそれを理解している。だからこそ、過去の辛い記憶やトラウマには敏感になり、互いに触れないようにしていた。
レイチェルは兄のように、面倒見のいい子に成長した。後からキングが引き取って来た子供達の面倒を見ては、ここでの生活や決まりごとなどをよく教えてくれたそうだ。
その働きは、構成員達の間でも評判がよく、キングの耳にも届く程だった。そしてある日、キングからこのまま船に残るかという提案が出された。レイチェルは記憶にある唯一の家族である兄を思い出すのだという。どこかで生きているかもしれない兄に、出来ることならもう一度会いたい。
それが彼女の願いだった。ならばこのまま船に乗っていた方が、兄を探しやすいだろうと、キングは自身の船にレイチェルを乗せる事に決めた。
奇しくも、兄妹揃って思いは同じだったのだ。彼らから妹のその後と、成長の過程を聞きながら、極寒の嵐のような辛い日々を過ごしていなかったのだと知り、デイヴィスの表情は優しくホッとしたようなものへと変わっていった。
何より彼らは、傷ついたデイヴィスに対し、とても優しく丁寧に応急処置を施してくれた。その事からも、レイチェルが彼らに慕われていたことが窺える。彼女は自分が思っていた以上に立派だった。いつまでも兄の後ろをついてくるような子ではなかったのだ。
デイヴィスは誰よりも人の痛みを知る彼らに囲まれ、妹レイチェルの過ごした日々の話を聞きながら、静かにその瞳を閉じた。
助けてもらうと言っても、意外な事に力技で解決したわけでは無いようだった。キングの力と組織であれば、奴隷交渉の場をそのまま抹消することも可能だっただろう。
だが、敢えて力技に出なかったのは、今後の貿易で何かの役に立つかもしれないからだった。正規の取引では受け渡せないものでも、そのような裏のルートを使えば高額で取引することができる。
そういったルートは幾つも確保しておくに限る。いつ潰れるかも分からぬルートだけでは、心許ない。キングの組織とは、何も綺麗な取引ばかりで大きくなった組織ではないのだから。
彼らはキングに引き渡され、酷く絶望したそうだ。何でも、奴隷となった彼らの中に、キングの組織のことを噂で聞いた者がいたのだという。その者によれば、キングのところに引き渡された奴隷はろくな運命を辿らないと言う。
しかし、実際にキングの元へ来てみればどうだろう。まるで道具のようにこき使われることもなく、きちんとした食事も出された。宛ら客人かのようなもてなしをされた。
確かに雑用はさせられたが、噂に聞くような酷く辛い作業はなく、掃除や食事の準備、学問や武芸の教養など、貧しい家庭に生まれた者にとっては、元の家よりも優れた環境が用意されていたのだ。
それでも、心が落ち着くことはない。見慣れた景色に微笑ましい団欒の光景、それらは彼らにとって二度と戻らぬ日々なのだから。だか、同じ境遇に晒された者同士で、心に空いた穴を埋めることは出来そうだった。
それぞれ個人差はあれど、それは時間が解決してくれる。共に過ごす彼らとの思い出や、キングの語る世界の物語に触れ、徐々に前を向いて足を踏み出して行くのだ。
ある程度の教養と、身を守る手段を身につけた彼らは、実を成した者から、キングの取引した家へと引き渡されていった。このままキングの船に乗せておく訳にもいかず、長居して仕舞えば彼らは“人に使われる“事に慣れてしまう。
それでは何の為に救ったのか分からなくなってしまう。そして取引相手も、キングによって慎重に選ばれた相手であり、彼らの身の安全も保障されていた。
子宝に恵まれぬ家庭へ、事情により後継がいなくなってしまった者達家庭。ただ闇雲に奴隷として引き渡すのではなく、双方の今後にとって実りのある取引をしていたのだ。
キングが奴隷として売り飛ばすのは、他の海賊船で捕らえたどうしようもない者達や、救いようのない者達。そして子供であっても、人の道を外れたような者達へは、容赦なく商品としていた。
レイチェルがキングの船に来た時も、彼女の瞳に輝きはなく、虚な表情で自身の運命にただ絶望しているかのようだった。時間はかかったが、漸く話せるくらいに回復した彼女からは、共に暮らしていた家族の話がよくされていた。
兄がいるようで、よく外を駆け回り共に遊んでいたのが、記憶に残る思い出だったそうだ。その兄は隠れんぼが得意で、毎回彼女は降参を余儀なくされていた。とても面倒見のいい兄で、彼女もそんな兄のことが大好きだった。
キングの船に引き取られた彼らは、互いにそのような立場になった経緯を語らないし聞かない。嫌な記憶という獣を、なるべく表に出さないよう、心の奥底にある牢獄に押し込んでいる。
それはキングや、彼らの面倒を見ていたシー・ギャングの構成員からも、そのように言われていたということもあった。誰よりも彼らはそれを理解している。だからこそ、過去の辛い記憶やトラウマには敏感になり、互いに触れないようにしていた。
レイチェルは兄のように、面倒見のいい子に成長した。後からキングが引き取って来た子供達の面倒を見ては、ここでの生活や決まりごとなどをよく教えてくれたそうだ。
その働きは、構成員達の間でも評判がよく、キングの耳にも届く程だった。そしてある日、キングからこのまま船に残るかという提案が出された。レイチェルは記憶にある唯一の家族である兄を思い出すのだという。どこかで生きているかもしれない兄に、出来ることならもう一度会いたい。
それが彼女の願いだった。ならばこのまま船に乗っていた方が、兄を探しやすいだろうと、キングは自身の船にレイチェルを乗せる事に決めた。
奇しくも、兄妹揃って思いは同じだったのだ。彼らから妹のその後と、成長の過程を聞きながら、極寒の嵐のような辛い日々を過ごしていなかったのだと知り、デイヴィスの表情は優しくホッとしたようなものへと変わっていった。
何より彼らは、傷ついたデイヴィスに対し、とても優しく丁寧に応急処置を施してくれた。その事からも、レイチェルが彼らに慕われていたことが窺える。彼女は自分が思っていた以上に立派だった。いつまでも兄の後ろをついてくるような子ではなかったのだ。
デイヴィスは誰よりも人の痛みを知る彼らに囲まれ、妹レイチェルの過ごした日々の話を聞きながら、静かにその瞳を閉じた。
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