World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
509 / 1,646

船長としての道と景色

しおりを挟む
 予期せぬ事態が立て続けに起き、判断に困っていたロバーツ。彼はデイヴィスとは違い守らねばならない多くの部下がいる。下手に全滅を招くような危険な真似はしたくない筈。

 しかし、慎重になる彼とは反対に、このチャンスを無駄には出来ないと焦りを見せるデイヴィス。計画の邪魔をしていた蟒蛇の弱体化は、彼の追い続けてきた陰る真実への道を再び導き出す追い風となっていた。

 「ロバーツ!このチャンスがいつまで続くか分からない・・・。今こそ計画を実行する時だ!」

 「いや、まだだデイヴィス!何が起こるか分からない現状で、キングんとこの戦力を削ぐのは危険だ。もう少し様子を見てからでも遅くないだろ!?」

 「次に起こるかもしれない変化が、必ずしも俺達にとってプラスに働くとは限らないだろ!?今起きているチャンスは今しかないんだぞ!俺は一人でもッ・・・」

 下を俯き野心に燃えるデイヴィス。このままでは本当に一人で乗り込んでしまいそうな勢いだった。熱くなるデイヴィスの肩を両手で掴み、必死に冷静さを取り戻させようとするロバーツ。

 「ここで無茶をすれば、全員の命が危うくなるんだ!・・頼むよ、デイヴィス。また俺達を振り回すのか・・・?」

 ロバーツの切実な声に、漸く頭を冷やしたデイヴィス。過去の過ちを再び再現してしまいそうになる彼は、残された船員達のことを思い出し、その胸中を想像し思いとどまる。

 自分勝手な理由で船を降り、散々船員達を振り回してきたデイヴィス。それでも彼らは、デイヴィスの望みを叶えてやろうと再び集まってくれた。そんな彼らの思いを無碍には出来ない。できる筈がなかった。

 「俺はまた同じ過ちを・・・。すまないロバーツ。お前の協力なくして、ここまで人員を集めることなど出来なかったというのに・・・」

 「分かってるよ、デイヴィス。お前のはやる気持ちも分からなくはない。俺だってここまで来るのに、大切な人や仲間を大勢失ってきた・・・。それでも立ち止まらなかったのは、アイツらがいるからだ。俺個人で見る世界と、アイツらと共に見る世界はまるで別ものだったからな・・・」

 思い出に耽るような遠い目をするロバーツ。大所帯となった海賊団の船長である重圧は、それ相応のものだった。それはデイヴィス海賊団の時代から、彼の背中を見て分かっていた。

 どんなに下っ端の船員の命も救い上げようとしていたデイヴィス。その決断で何度も危険な橋を渡ってきた。中にはついて行けない者もいたが、それでも仲間思いのデイヴィスだったからこそ、彼らもまたこうして集まってくれたのだろう。

 そんなデイヴィスの背中を見て、船長としての未来の道の一つを見届けたロバーツ。全ての命を平等に扱い、全てを助けようとするのはとても素晴らしく胸を打たれるものがあった。実際に命を救われた場面を経験したロバーツには、それが痛いほど分かる。

 だが、デイヴィスの後任を任される時、ロバーツは彼とは違うやり方で船長をしていくことを選んだ。デイヴィスのやり方に疑問や不満を持っていた訳ではない。

 ただ純粋に、一人の海賊の道を行く末を見たロバーツは、同じ道を歩きたいと思うのではなく、別の道で別の景色を見てみたいと思ったのだ。そこでロバーツが目指したのが、より多くの命を救う決断を下すというものだった。

 少数の犠牲で多くの命が救われるのなら、ロバーツは迷うことなく多くの命を選んできた。元デイヴィス海賊団であった彼らからしたら全く真逆の、心のない決断を下すロバーツのやり方に不満を抱く者が多かったのだ。

 それ故、デイヴィスのいなくなった後の新生ロバーツ海賊団は、幾つもの海賊団に枝分かれしていき、別々の道を歩んでいく結果となった。それでもロバーツは、自分が間違っているとは思わなかった。少なくとも、彼のやり方で救われた命も多くある。

 彼が自分のやり方を貫き通したのは、いつか自分もデイヴィスのように船長の座から降りた時、デイヴィスに会いに行き自分の見てきた道の景色を肴に、全てを忘れるくらい酔っ払って過去を語らえる日を夢見ていたからだ。

 そんな他愛のない未来の為に、道を踏み外す訳にはいかなかった。このままではきっと、望んだ未来が来たとしても、胸を張って語らえないと思ったからこそ、デイヴィスに無茶をさせる訳にはいかなかった。

 「だが、お前の言うことも一理ある。だからこそもう少しだ。もう少しだけ様子を見た後、その間に俺が他の連中と連携を取るから。そうしたらお前は、信号弾で合図をくれ。俺達は直ぐにレイド戦から手を引き、キング暗殺を優先する・・・」

 何もデイヴィスの気持ちを、ただ単に押さえ込んでいた訳ではない。ロバーツには混乱している他の海賊達と連携を取る時間が欲しかったのだ。蟒蛇の様子を見つつ、フィリップスや彼の掻き集めた政府に与する海賊達に連絡を取り、息を合わせる必要があった。

 それだけキングの組織は協力で、油断ならないからだ。なるべく被害を採取源に抑えつつ、最大限の力を発揮できる体勢で不意打ちを仕掛けることが、この計画が成就する何よりのポイントなのだから。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...