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呼び起こされる記憶
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自身の記憶を呼び覚まされたツクヨは、思い出したくもない過去を見ることになる。それは彼が現実世界で過ごしていた、いつもと変わらぬ、ある日の出来事のことだった。
街の明かりがすっかり消え、道路の交通量が著しく少なくなる夜の更けった頃に、仕事を終え家路に着くツクヨは、既に眠りについているであろう妻と愛娘の待つ自宅へやって来る。
しかし彼を待っていたのは、日頃の疲れを忘れ安心出来る自宅ではなく、凡そ真っ当な人生を送っていれば想像することもない、妻や愛娘が血を流して倒れているという凄惨な現場だった。
「はぁッ・・・!はぁッ・・・!こッ・・・これは、あの時の・・・!」
トラウマを植え付けられたその光景を前に、ツクヨは上手く呼吸をすることが出来なくなり、息狂いそうに呼吸を乱すと、滝のような汗を流しながら受け入れ難い光景から遠ざかろうと後退りする。
すると突然、家の玄関のドアを強くノックする音が聞こえてくる。心臓が飛び出すほどの衝撃に見舞われるツクヨだったが、如何やらやって来たのは警察だったようで、ドア越しに通報があったことを話すと、マンションの管理人と共に鍵を開け、彼の自宅へと入って来る。
だが彼らは、驚きと戸惑いに震えるツクヨに一切目向きもせず、事件現場へと足を踏み入れていった。不自然なことに動揺しながらも、ツクヨは彼らについて行きリビングへとやって来ると、そこには妻を抱え崩れ落ちる自身の姿があった。
そこで漸くこれが、夢の類であることを知り、触手の女によって見せられている自分の記憶であることを悟る。彼がそれに気づくと、その光景は古いビデオテープのようにザラザラとノイズが走り出すと、所々場面が飛び飛びになり、彼の知らぬ光景や台詞を耳にする。
「大丈夫ですか?・・・しっかりして下さい・・・」
「誰かを見たとか・・・何か思い出しませんか?・・・」
「これは・・・酷いな・・・」
「落ち着いて聞いて下さい・・・た痕があり・・・」
会話も光景もノイズがかかりハッキリとしない。しかしそれは、彼がショックのあまり、気を失う以前の様子なのではないかと思わせるものがあった。徐々に呼吸が出来なかったことも忘れ、見入る様に自身の記憶の光景をその目に焼き付ける。
幾つかの場面と、誰とも分からぬ声を無数に聞き、目まぐるしく次々に変わり始めた光景に、頭が割れそうに痛くなる。頭を抱え、その場で膝から崩れ落ちるツクヨ。
しかし、彼が苦しみ出したところで記憶の映像は切り替わり、見知らぬ真っ暗な光景になる。そこはとても寒く冷たい、殺風景な廃墟のようにも思える古びた一室に見えた。そして彼は、立ち上がろうと首を下げた時、その手が何かに濡れている事に気づく。
ヌルッと滑るそれを顔に近付けるツクヨ。暗闇の中から姿を現した自身の手は、真っ赤な血で濡れていたのだ。思わぬ衝撃に驚いたツクヨは、咄嗟に後ろへ仰反ろうとしたが、頭部に何かが当たる感触を受ける。
恐る恐る首を回し、彼の背後にあるものを確かめると、そこには宙に浮いた誰かの足がある。痛々しい傷跡が無数にある、その足の持ち主へと視線をゆっくり上げていく。
そこには、見知らぬ何者かが吊るされていた。あまりの凄惨な姿に、ツクヨが情けない悲鳴を上げると、その吊るされた身体が突然、無数に刻まれた傷跡から鮮血を吹き出して、彼の視界を真っ赤に染め上げる。
そこでツクヨは目を覚まし、元の船内へと帰って来た。目を見開き、身体は恐怖と緊張にかいた汗で湿っているような感覚に覆われている。ハッと我に返り、周囲の状況を確認すると、ツクヨを捕らえようと触手が彼の周りに迫っていた。
瞬時に剣を握り、追い払うように斬り刻むと、女の姿を探した。すると女は、逃げも隠れもすることなく、彼の少し離れたところで、器用に曲げた自身の触手に座りこちらを見ていた。
その表情は、相手の弱みを握ったかのように、厭らしく悍しい微笑みを浮かべていた。ツクヨは女の方へ身体の向きを変えると、疲れ切ったかのような腕で手にした剣を構える。
そこに先程までの勢いはなく、呼吸も何処か息苦しそうであり、大きく肩を揺らしていた。周囲の船員達には、ツクヨが何をされたのか一切分からなかった。彼らには、女がツクヨに触れ、触手で取り囲もうとした光景にしか写っていなかったのだ。
つまり、ツクヨが先程見た過去の記憶は、外では一瞬の出来事だったようで、何故かツクヨが突然疲労したとしか分からず困惑していた。そして、笑みを浮かべていた触手の女が、何かを観て来たようにゆっくりと口を開く。
「ふふ、そういうことね・・・。もうアナタの攻撃を避けるまでもないわ。アナタが私を斬ることはない・・・」
女の表情が、弱者を嘲笑う厭らしいものから真顔に変わると、彼女はツクヨを無視して船員達の集まる方へ走っていく。
「まッ待て!!」
ツクヨが静止しようと剣を女に向けるが、女は哀れむような目でツクヨの横を通り過ぎると、減速することはなかった。恐ろしいトラウマを見せられた彼は、震える身体を強引に奮い立たせ、船員達へ向かう女の後を追った。
街の明かりがすっかり消え、道路の交通量が著しく少なくなる夜の更けった頃に、仕事を終え家路に着くツクヨは、既に眠りについているであろう妻と愛娘の待つ自宅へやって来る。
しかし彼を待っていたのは、日頃の疲れを忘れ安心出来る自宅ではなく、凡そ真っ当な人生を送っていれば想像することもない、妻や愛娘が血を流して倒れているという凄惨な現場だった。
「はぁッ・・・!はぁッ・・・!こッ・・・これは、あの時の・・・!」
トラウマを植え付けられたその光景を前に、ツクヨは上手く呼吸をすることが出来なくなり、息狂いそうに呼吸を乱すと、滝のような汗を流しながら受け入れ難い光景から遠ざかろうと後退りする。
すると突然、家の玄関のドアを強くノックする音が聞こえてくる。心臓が飛び出すほどの衝撃に見舞われるツクヨだったが、如何やらやって来たのは警察だったようで、ドア越しに通報があったことを話すと、マンションの管理人と共に鍵を開け、彼の自宅へと入って来る。
だが彼らは、驚きと戸惑いに震えるツクヨに一切目向きもせず、事件現場へと足を踏み入れていった。不自然なことに動揺しながらも、ツクヨは彼らについて行きリビングへとやって来ると、そこには妻を抱え崩れ落ちる自身の姿があった。
そこで漸くこれが、夢の類であることを知り、触手の女によって見せられている自分の記憶であることを悟る。彼がそれに気づくと、その光景は古いビデオテープのようにザラザラとノイズが走り出すと、所々場面が飛び飛びになり、彼の知らぬ光景や台詞を耳にする。
「大丈夫ですか?・・・しっかりして下さい・・・」
「誰かを見たとか・・・何か思い出しませんか?・・・」
「これは・・・酷いな・・・」
「落ち着いて聞いて下さい・・・た痕があり・・・」
会話も光景もノイズがかかりハッキリとしない。しかしそれは、彼がショックのあまり、気を失う以前の様子なのではないかと思わせるものがあった。徐々に呼吸が出来なかったことも忘れ、見入る様に自身の記憶の光景をその目に焼き付ける。
幾つかの場面と、誰とも分からぬ声を無数に聞き、目まぐるしく次々に変わり始めた光景に、頭が割れそうに痛くなる。頭を抱え、その場で膝から崩れ落ちるツクヨ。
しかし、彼が苦しみ出したところで記憶の映像は切り替わり、見知らぬ真っ暗な光景になる。そこはとても寒く冷たい、殺風景な廃墟のようにも思える古びた一室に見えた。そして彼は、立ち上がろうと首を下げた時、その手が何かに濡れている事に気づく。
ヌルッと滑るそれを顔に近付けるツクヨ。暗闇の中から姿を現した自身の手は、真っ赤な血で濡れていたのだ。思わぬ衝撃に驚いたツクヨは、咄嗟に後ろへ仰反ろうとしたが、頭部に何かが当たる感触を受ける。
恐る恐る首を回し、彼の背後にあるものを確かめると、そこには宙に浮いた誰かの足がある。痛々しい傷跡が無数にある、その足の持ち主へと視線をゆっくり上げていく。
そこには、見知らぬ何者かが吊るされていた。あまりの凄惨な姿に、ツクヨが情けない悲鳴を上げると、その吊るされた身体が突然、無数に刻まれた傷跡から鮮血を吹き出して、彼の視界を真っ赤に染め上げる。
そこでツクヨは目を覚まし、元の船内へと帰って来た。目を見開き、身体は恐怖と緊張にかいた汗で湿っているような感覚に覆われている。ハッと我に返り、周囲の状況を確認すると、ツクヨを捕らえようと触手が彼の周りに迫っていた。
瞬時に剣を握り、追い払うように斬り刻むと、女の姿を探した。すると女は、逃げも隠れもすることなく、彼の少し離れたところで、器用に曲げた自身の触手に座りこちらを見ていた。
その表情は、相手の弱みを握ったかのように、厭らしく悍しい微笑みを浮かべていた。ツクヨは女の方へ身体の向きを変えると、疲れ切ったかのような腕で手にした剣を構える。
そこに先程までの勢いはなく、呼吸も何処か息苦しそうであり、大きく肩を揺らしていた。周囲の船員達には、ツクヨが何をされたのか一切分からなかった。彼らには、女がツクヨに触れ、触手で取り囲もうとした光景にしか写っていなかったのだ。
つまり、ツクヨが先程見た過去の記憶は、外では一瞬の出来事だったようで、何故かツクヨが突然疲労したとしか分からず困惑していた。そして、笑みを浮かべていた触手の女が、何かを観て来たようにゆっくりと口を開く。
「ふふ、そういうことね・・・。もうアナタの攻撃を避けるまでもないわ。アナタが私を斬ることはない・・・」
女の表情が、弱者を嘲笑う厭らしいものから真顔に変わると、彼女はツクヨを無視して船員達の集まる方へ走っていく。
「まッ待て!!」
ツクヨが静止しようと剣を女に向けるが、女は哀れむような目でツクヨの横を通り過ぎると、減速することはなかった。恐ろしいトラウマを見せられた彼は、震える身体を強引に奮い立たせ、船員達へ向かう女の後を追った。
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