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レースの洗礼
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少年の承諾と協力を得ることが出来た三人は、セレモニーで必要な情報を男から得ると、早速レースへのエントリーに向かう。まだ正午にならない明るいグラン・ヴァーグは、夜の賑わいから少し落ち着きを取り戻し、酒に酔った者達の騒ぎ声から、港町で仕事をする者達の声に変わり、観光客やゴロツキだけではない商業都市としての一面を覗かせる。
エントリーの仕方は至って簡単で、まずはゴールの際の基準となる乗り物を登録する。会場にある端末からツバキの船の画像データと内蔵されているボードの登録を行う。そして後は出場する者達の登録をし、エントリーが終了した。
後は後日のレース直前に、現在の経験値、及びステータスデータの確認を行い、スタートからゴールまでに得た経験値量やステータスの成長から。モンスター討伐ポイントの換算がされるのだという。
無事、フォリーキャナルレースへのエントリーを終えた一行が会場を後にしようとしたところで、同じく会場に来ていたと思われるある団体が目に入ってきた。他にもレースの参加者だと思われる人々はいたが、その中でも一際目につく団体がおり、その中心には、オーガと呼ばれる種族と見紛うほど大きな体格をした、立派な髭を蓄え豪華な装飾の施された海賊マントを羽織った男の姿があった。
「あれは・・・?」
シンがその大男の方を見ながら呟くと、それを聞いたツバキが視線をシンの方から彼の見つめる方へと向ける。少年は見慣れた様子でその大男を確認すると、レースで上位を目指すなら、その大男は最大の壁になる相手だと話してくれた。
「あぁ・・・あれはエイヴリー海賊団だな。このレースに出る以上、必ずと言って良いほど奴らの船団に邪魔されるだろうよ。ましてや俺らみてぇな無名の弱小チームは、開始早々洗礼を受けることになるから、ある程度覚悟しておいた方がいい」
彼らがその目に映していた大男こそ、噂に名高いエイヴリーであった。しかし、情報収集の際やグレイスから聞いた話では、ツバキの言うような交戦的な海賊団ではなかったと聞いていた三人。少年の言う覚悟や洗礼といったものとは、一体何のことなのだろうか。
「洗礼?覚悟?一体何のことだ?」
ツバキにシンが尋ねると彼は大きく息を吐き、情報収集は何だったのかといった様子で呆れながら、エイヴリー海賊団の行う洗礼について簡単に説明してくれた。
「はぁ・・・いいか?レースには数多の参加者がいる。その中には記念や面白半分で参加するような奴もいる。そんな有象無象の奴らを選別する意味で、エイヴリーやキングのところの部下達が、レース開始と共に襲い始めるんだよ。まぁレースを越えていけるかどうかの線引きと思えばいいな。差し向けられるのは大した奴らじゃない、だがその洗礼すら越えられない様じゃ、途中のモンスターや戦利品目当ての やつらに酷い目に合わされるのが関の山だ」
数の多い参加者を選別して、ある程度の数まで減れしてしまおうというのが彼らのいう洗礼と言われる儀なのだろう。だが、それは同時に彼らなりの優しさなのかもしれない。何の気無しに、ただ運が良かっただけでレアなアイテムや貴重な財宝を手にしてしまえば、強豪の参加者や、ロロネーやロッシュのような極悪非道な者達に狙われることになる。
そんな運だけでレースを進んできた者達は、このレースを完走することなく途中でリタイヤに追いやられたり、行方不明になったりするのだという。中には偶然見つかる者もいるようだが、五体満足で生存することはないなどといった話もあるのだとか。
そういった意味では、洗礼による襲撃で、出鼻を挫かれた方が身の為だと思えてくる。確かに心底悪い人間であれば、わざわざそんなことをせずとも、アイテムを集めるだけ集めさせて、ゴール付近で一網打尽にしてしまえば済む話だろう。実際ロロネーが過去にその様なことを行い、あまりに酷い惨状に後続の者達が次々に降参するもそれを受け入れず、正に血の海を築き上げたことがあったという。
要するにこのレースは、運だけでは決してゴールすることすら出来ず、半端な実力では強者に食い物にされる、そういう覚悟を問われるものだとツバキは語る。
「移動ポータルっていうのは、どのくらいの危険度なんだ?やっぱりみんな狙うんだろうか・・・」
より高価な品や、強力な武具を手に入れたのであれば間違いなく奪いに来る者がいるだろう。ふとしたツクヨの疑問は、彼らにとっても重要なことだった。異世界への移動ポータルという胡散臭いアイテムを、どの程度高価な物として見られるのか、少なくともシン達よりレースに詳しい少年に尋ねてみる。
「どうだろうな・・・。正直なところ俺にも分からねぇなぁ。移動ポータル自体は高価な代物だよ。例え移動先が既に登録されていても、それを欲しがる人はいるだろうし、特定のクラスであれば移動先の変更が可能だったりもする。移動先が未登録であれば尚更高価になる。だが・・・あの男の言っていた異世界へのポータルっつうのは俺が聞いても胡散臭せぇ・・・。移動先を変更できるクラス持ちの船団であれば狙ってくるかもな」
「そんなことが出来るクラスって・・・」
「時間や次元といった概念を司る、時魔道士や時魔術師のことさ。ポータルの移動先を変更出来るのは、その中でも移動に特化した奴だけだ」
話だけ聞けば非常に強力なクラスである時魔道士だが、その強力なスキルを使用するためには、それ相応のデメリットもある。
そもそも、そのクラスに就くこと自体が困難であり、スキルの発動には膨大な魔力を使うため必要最低限の魔力量のハードルが非常に高い。そして一度スキルを使えば、再度使用可能になるまでのクールタイムが非常に長いこと、そしてスキルを発動出来たとしても、消費魔力が多過ぎるため、他の魔力を使うスキルが殆ど使い物にならなくなってしまう。それ程扱いの難しいクラスとスキルなのだ。
ポータルやその移動先の変更を行えるクラスについて話をしていると、何かに気づいた様子でシンの肩を叩くツクヨ。その後彼はミアにも手招きをし、見せたいものがある方角を指差した。
「シン!ミア!あそこ!エイヴリー海賊団のいる方を見てくれ!あれ・・・ヘラルトじゃないか?」
ツクヨが指差した先には、エイヴリー海賊団の輪の中にいる、ツクヨと別れ彼らのパーティーを外れたヘラルトの姿があった。
エントリーの仕方は至って簡単で、まずはゴールの際の基準となる乗り物を登録する。会場にある端末からツバキの船の画像データと内蔵されているボードの登録を行う。そして後は出場する者達の登録をし、エントリーが終了した。
後は後日のレース直前に、現在の経験値、及びステータスデータの確認を行い、スタートからゴールまでに得た経験値量やステータスの成長から。モンスター討伐ポイントの換算がされるのだという。
無事、フォリーキャナルレースへのエントリーを終えた一行が会場を後にしようとしたところで、同じく会場に来ていたと思われるある団体が目に入ってきた。他にもレースの参加者だと思われる人々はいたが、その中でも一際目につく団体がおり、その中心には、オーガと呼ばれる種族と見紛うほど大きな体格をした、立派な髭を蓄え豪華な装飾の施された海賊マントを羽織った男の姿があった。
「あれは・・・?」
シンがその大男の方を見ながら呟くと、それを聞いたツバキが視線をシンの方から彼の見つめる方へと向ける。少年は見慣れた様子でその大男を確認すると、レースで上位を目指すなら、その大男は最大の壁になる相手だと話してくれた。
「あぁ・・・あれはエイヴリー海賊団だな。このレースに出る以上、必ずと言って良いほど奴らの船団に邪魔されるだろうよ。ましてや俺らみてぇな無名の弱小チームは、開始早々洗礼を受けることになるから、ある程度覚悟しておいた方がいい」
彼らがその目に映していた大男こそ、噂に名高いエイヴリーであった。しかし、情報収集の際やグレイスから聞いた話では、ツバキの言うような交戦的な海賊団ではなかったと聞いていた三人。少年の言う覚悟や洗礼といったものとは、一体何のことなのだろうか。
「洗礼?覚悟?一体何のことだ?」
ツバキにシンが尋ねると彼は大きく息を吐き、情報収集は何だったのかといった様子で呆れながら、エイヴリー海賊団の行う洗礼について簡単に説明してくれた。
「はぁ・・・いいか?レースには数多の参加者がいる。その中には記念や面白半分で参加するような奴もいる。そんな有象無象の奴らを選別する意味で、エイヴリーやキングのところの部下達が、レース開始と共に襲い始めるんだよ。まぁレースを越えていけるかどうかの線引きと思えばいいな。差し向けられるのは大した奴らじゃない、だがその洗礼すら越えられない様じゃ、途中のモンスターや戦利品目当ての やつらに酷い目に合わされるのが関の山だ」
数の多い参加者を選別して、ある程度の数まで減れしてしまおうというのが彼らのいう洗礼と言われる儀なのだろう。だが、それは同時に彼らなりの優しさなのかもしれない。何の気無しに、ただ運が良かっただけでレアなアイテムや貴重な財宝を手にしてしまえば、強豪の参加者や、ロロネーやロッシュのような極悪非道な者達に狙われることになる。
そんな運だけでレースを進んできた者達は、このレースを完走することなく途中でリタイヤに追いやられたり、行方不明になったりするのだという。中には偶然見つかる者もいるようだが、五体満足で生存することはないなどといった話もあるのだとか。
そういった意味では、洗礼による襲撃で、出鼻を挫かれた方が身の為だと思えてくる。確かに心底悪い人間であれば、わざわざそんなことをせずとも、アイテムを集めるだけ集めさせて、ゴール付近で一網打尽にしてしまえば済む話だろう。実際ロロネーが過去にその様なことを行い、あまりに酷い惨状に後続の者達が次々に降参するもそれを受け入れず、正に血の海を築き上げたことがあったという。
要するにこのレースは、運だけでは決してゴールすることすら出来ず、半端な実力では強者に食い物にされる、そういう覚悟を問われるものだとツバキは語る。
「移動ポータルっていうのは、どのくらいの危険度なんだ?やっぱりみんな狙うんだろうか・・・」
より高価な品や、強力な武具を手に入れたのであれば間違いなく奪いに来る者がいるだろう。ふとしたツクヨの疑問は、彼らにとっても重要なことだった。異世界への移動ポータルという胡散臭いアイテムを、どの程度高価な物として見られるのか、少なくともシン達よりレースに詳しい少年に尋ねてみる。
「どうだろうな・・・。正直なところ俺にも分からねぇなぁ。移動ポータル自体は高価な代物だよ。例え移動先が既に登録されていても、それを欲しがる人はいるだろうし、特定のクラスであれば移動先の変更が可能だったりもする。移動先が未登録であれば尚更高価になる。だが・・・あの男の言っていた異世界へのポータルっつうのは俺が聞いても胡散臭せぇ・・・。移動先を変更できるクラス持ちの船団であれば狙ってくるかもな」
「そんなことが出来るクラスって・・・」
「時間や次元といった概念を司る、時魔道士や時魔術師のことさ。ポータルの移動先を変更出来るのは、その中でも移動に特化した奴だけだ」
話だけ聞けば非常に強力なクラスである時魔道士だが、その強力なスキルを使用するためには、それ相応のデメリットもある。
そもそも、そのクラスに就くこと自体が困難であり、スキルの発動には膨大な魔力を使うため必要最低限の魔力量のハードルが非常に高い。そして一度スキルを使えば、再度使用可能になるまでのクールタイムが非常に長いこと、そしてスキルを発動出来たとしても、消費魔力が多過ぎるため、他の魔力を使うスキルが殆ど使い物にならなくなってしまう。それ程扱いの難しいクラスとスキルなのだ。
ポータルやその移動先の変更を行えるクラスについて話をしていると、何かに気づいた様子でシンの肩を叩くツクヨ。その後彼はミアにも手招きをし、見せたいものがある方角を指差した。
「シン!ミア!あそこ!エイヴリー海賊団のいる方を見てくれ!あれ・・・ヘラルトじゃないか?」
ツクヨが指差した先には、エイヴリー海賊団の輪の中にいる、ツクヨと別れ彼らのパーティーを外れたヘラルトの姿があった。
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