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メア
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精霊や機械、召喚されたモンスターや一部の特殊な役割を与えられたモンスターなど、会話する生き物は複数存在する。
だが、シンが驚いたのは上級のモンスターが話している事だった。
召喚士のクラスについて詳しくはなかったが、以前ゲーム内でPVPした時の記憶に、上位召喚士が召喚した大型モンスターは、指示には従っていたが会話をする様な知性はなかったからその影響だろう。
「サラ・・・? これは・・・」
答えを求める様に彼女に問う。
「う・・・ うぅっ!」
両腕を下ろすと、シンの方を振り向き1度だけ頷いた。
その後、彼女はアンデットデーモンの方へと歩き出した。
事態が飲み込めないシンは、その場に膝をつき気が抜けた様に座り込んでしまう。
「ブジ ダッタノダナ・・・」
アンデットデーモンはゆっくりと膝を曲げると、サラを優しく抱きしめた。
しばらく間をおくと、アンデットデーモンは腕を解き、サラの肩へと手を置く。
「シンライ デキル モノ ナンダナ?」
そうサラに問うと、彼女は頷いた。
サラの反応を見た後、アンデットデーモンはシンの方を見た。
「ジジョウ ヲ ハナス。 ツイテ コイ」
ゆっくりと立ち上がると、サラを持ち上げ肩に乗せる。
そして村の方とは逆の方へと歩き出す。
シンの理解はとうに超えていたが、戦闘を避けれるのは幸運だったと思う。
シンも立ち上がると、アンデットデーモンについて行った。
村から少し離れたところに来ると、サラを下ろした。
「コノ ムラハ ノロワレテ イル」
振り返りながらゆっくりと話し出すアンデットデーモンは、そのままシンの方へ向くと、このクエストの目標である大元の事を話した。
「ソシテ ソノ ゲンイン ハ、 ワタシ ノ マスター ダ」
その後、アンデットデーモンはこの村の、そしてある男の話を語ってくれた。
メアという召喚士の男がいた。
彼は冒険者という初期クラスから、やっとの思いで召喚士へとなった。
メアの召喚士としての属性は、珍しい闇属性で彼が初めて召喚したモンスターがデーモン種だったのである。
ただでさえ珍しい闇属性に加え、強力なデーモン種の召喚に成功したのは、彼の内なる才能だったのだろう。
メアは序盤から幸先の良いスタートを切った。
彼もまた、パルディアの街でクエストをこなしてグラテス村の話を耳にした。
街のクエストを消化し終わったメアは、新たなクエストを受ける為、グラテス村へと向かう。
グラテス村では、生活の基盤となるとスキルを学べるクエストが多かった。
WoFは戦うだけのゲームではなかった為、農業のスキルや商業のスキルなども習得出来る。
ある程度のスキルは、クラスに関係なく習得出来る為、戦闘に疲れた人などは農家を営んだり店を出して生活するという遊び方も出来る。
メアはグラテス村で、そういったスキルを身につけると同時に、村の人達とも友好度を高めていった。
「悪いねぇ、冒険者さんにこんな手伝って貰っちゃって」
野菜の入った木箱を馬車へと積み込んで行くメア。
「いえ、構いませんよ。 俺もお世話になってる身なので、これぐらいしないと」
積み込むというだけの作業だが、それなりの数をこなすとなると、かなりの重労働だ。
「メアくんはその・・・何で村に長く居てくれるんだ?」
序盤の街や村に長く居る理由は、普通なら特にないであろう。
行えるクエストには回数やレベルによる制限などあり、一通り必要な装備やアイテム、クエスト報酬などが手に入ったら、次の街や狩場などに移動した方が効率がいいし、何より成長を実感出来る。
しかし、メアは召喚士になる道程で、狩場に篭りひたすら同じモンスターを倒したり、スキルのレベル上げといった作業に等しい戦闘をずっとしてきた。
「こういった生活が新鮮に感じたんです。 召喚士になる前はずっと勉強や戦いばかりでしたから」
「へぇ、大変だったんだね・・・」
メアの話に、自分の知らない世界があるのだとしみじみとしている。
「終わりました! 今日の分はこれで全部ですか?」
ハッと我に帰る村の男。
「あぁ、今日はこれだけだ。 ありがとよ!」
荷物の確認をした後、馬に乗り出発の支度をする。
「報酬は家にいる妻から受け取っておいてくれ」
「いつも通りですね」
表情を和らげて、少し笑いながら返すメア。
一連のやりとりがあった後、手を振り出荷しに街へと向かっていった。
メアは、言われた通り先ほどの男の家へと向かった。
「メアにぃ! あそぼー!」
村の子供達に行く手を阻まれる。
「なんだ、お前たち。 家の手伝いはしたのか?」
しゃがんで目線を合わせる。
「後でやるよ~、それよりさぁ!」
気だるそうに返事を返した後、待ってたと言わんばかりに目を輝かせる。
「わかったわかった。 でもあまり遠くに連れて行くなよ?」
「やったー!」
子供達は大はしゃぎだ。
メアは、子供達がお楽しみにしている召喚の準備をする。
少し離れる様に子供達にいうと、何もないところから魔道士が使うようなロッドを取り出し、体の前で数回くるくると回した後、両腕を伸ばしロッドを構える。
すると、地面に光り走り、魔法陣を描いて行く。
魔法陣が完成すると、光の線は強く輝き出し、デーモンが魔法陣の中からゆっくりと姿を現わす。
「わーい!
「カッコイイ!」
「すごーい!」
村に迫るモンスター退治のクエストや、村での手伝いで何度か召喚したことがある為、最初は恐がっていたが、今では村中からの信頼を得た。
メアの召喚するデーモンで、名前を“ウルカノ”という。
この名前はダステル村の子供達によって付けられた。
由来は、ダステル村のある土地に伝わる神話からきているのだとか。
冥府から地上を荒らしに来た悪魔ウルカノ。
その悪行に目を余した神が、自分では決して動けない様に地中深くに封印した。
後に、人が神に挑む戦いが起こった際に封印が解かれ、神への復讐のため人と共に神と戦ったという。
そんな話を聞き、メアはウルカノのという名を気に入った。
「いいか? 危ない真似はするなよ。 あと村からあまり離れるな。 俺が怒られるんだからな?」
子供達に言い聞かせるついでに、ウルカノにも指示しておいた。
「わかってるって!」
「メアうるさーい!」
「しつこーい!」
口の減らない子供達だと呆れた。
子供達を頭や肩に乗せ、ゆっくりと動き出すと、そのまま村を歩き出した。
それを見送るとメアは、先程の報酬を受け取りに居候させてもらっている民家へ向かう。
「マーサさん、積荷終わりました」
メアがダステルの村へ街から通っているのを知って、マーサさんが泊まる部屋を用意してくれた、先程の村の男はマーサさんの夫でハワード・マクブライドという。
「ありがとうメアさん。 いつも悪いわね」
手伝いを終えて帰ってくると、マーサさんはいつも温かく迎えてくれる。
「いえ、こちらこそいつも食べる物まで頂いてしまって・・・」
これもいつものやりとりで、メアは直ぐ謙遜をする。
「夫も喜んでいるのよ、まるで息子が出来たみたいだなんて」
メアにとってマクブライド家は第2の家族の様なものになった。
それも本当の家族よりも“家族の温もり”というものを教えてくれた。
メアの家族は、お世辞にも温かい家族ではなかった。
父親は召喚士ギルドで研究に没頭し、殆ど家には帰らず、母親はメアが物心ついた頃から外出が多くなり、ある日出掛けてくると言い残し、それ以来帰って来ることはなかった。
メアは母親の帰りを待ちながら、家にあった父親の書庫に篭り本を読む様になる、それが召喚士というクラスに関わる本だったのだ。
日を重ねる毎に、召喚士への憧れと外の世界への興味でメアの気持ちはいっぱいになっていった。
それからメアは、父の書庫で読み漁った知識と日々の訓練で、やっとの思い出召喚士へとなった。
それを機にメアは、誰も帰らぬ家を飛び出し冒険者としての人生を送る様になる。
「俺も・・・嬉しいです。 本当の家族みたいで」
色々と思い返しているだろうメアの表情を見て、マーサは微笑んだ。
2人は夕飯に向けて食事の準備を進めていく、その内に日はゆっくりと沈んでいった。
「そろそろ子供達が帰ってくる時間かしら?」
「俺、迎えにいってきます」
そういうと作業を引き上げ、手を洗うと準備を始める。
「それじゃお願いね」
「はい! 行ってきます」
木製の床を軽く軋ませ、ドアノブを回すとキーと落ち着く音がする。
村の中央広場で子供達の帰りを待つ。
しばらくすると大きな体に、子供を乗せて歩いて来るウルカノの姿が見えた。
「 あ! メアだ!」
「おーい!」
「ただいまー!」
笑顔で元気よく腕を振る子供達を見ると、楽しんできたのがよくわかる。
ウルカノを戻し、子供達もそれぞれ自分の家へと帰っていき、メアは残った少女の方を振り返る。
「それじゃぁ帰ろうか、サラ」
メアは微笑みながら、サラに手を差し出す。
その手を握り、少女は嬉しそうな表情をした。
「うん!
2人は沈みゆく夕日を眺めながら家路へ向かう。
サラ・マクブライド。
ハワードさんとマーサさんの1人娘だ。
だが、シンが驚いたのは上級のモンスターが話している事だった。
召喚士のクラスについて詳しくはなかったが、以前ゲーム内でPVPした時の記憶に、上位召喚士が召喚した大型モンスターは、指示には従っていたが会話をする様な知性はなかったからその影響だろう。
「サラ・・・? これは・・・」
答えを求める様に彼女に問う。
「う・・・ うぅっ!」
両腕を下ろすと、シンの方を振り向き1度だけ頷いた。
その後、彼女はアンデットデーモンの方へと歩き出した。
事態が飲み込めないシンは、その場に膝をつき気が抜けた様に座り込んでしまう。
「ブジ ダッタノダナ・・・」
アンデットデーモンはゆっくりと膝を曲げると、サラを優しく抱きしめた。
しばらく間をおくと、アンデットデーモンは腕を解き、サラの肩へと手を置く。
「シンライ デキル モノ ナンダナ?」
そうサラに問うと、彼女は頷いた。
サラの反応を見た後、アンデットデーモンはシンの方を見た。
「ジジョウ ヲ ハナス。 ツイテ コイ」
ゆっくりと立ち上がると、サラを持ち上げ肩に乗せる。
そして村の方とは逆の方へと歩き出す。
シンの理解はとうに超えていたが、戦闘を避けれるのは幸運だったと思う。
シンも立ち上がると、アンデットデーモンについて行った。
村から少し離れたところに来ると、サラを下ろした。
「コノ ムラハ ノロワレテ イル」
振り返りながらゆっくりと話し出すアンデットデーモンは、そのままシンの方へ向くと、このクエストの目標である大元の事を話した。
「ソシテ ソノ ゲンイン ハ、 ワタシ ノ マスター ダ」
その後、アンデットデーモンはこの村の、そしてある男の話を語ってくれた。
メアという召喚士の男がいた。
彼は冒険者という初期クラスから、やっとの思いで召喚士へとなった。
メアの召喚士としての属性は、珍しい闇属性で彼が初めて召喚したモンスターがデーモン種だったのである。
ただでさえ珍しい闇属性に加え、強力なデーモン種の召喚に成功したのは、彼の内なる才能だったのだろう。
メアは序盤から幸先の良いスタートを切った。
彼もまた、パルディアの街でクエストをこなしてグラテス村の話を耳にした。
街のクエストを消化し終わったメアは、新たなクエストを受ける為、グラテス村へと向かう。
グラテス村では、生活の基盤となるとスキルを学べるクエストが多かった。
WoFは戦うだけのゲームではなかった為、農業のスキルや商業のスキルなども習得出来る。
ある程度のスキルは、クラスに関係なく習得出来る為、戦闘に疲れた人などは農家を営んだり店を出して生活するという遊び方も出来る。
メアはグラテス村で、そういったスキルを身につけると同時に、村の人達とも友好度を高めていった。
「悪いねぇ、冒険者さんにこんな手伝って貰っちゃって」
野菜の入った木箱を馬車へと積み込んで行くメア。
「いえ、構いませんよ。 俺もお世話になってる身なので、これぐらいしないと」
積み込むというだけの作業だが、それなりの数をこなすとなると、かなりの重労働だ。
「メアくんはその・・・何で村に長く居てくれるんだ?」
序盤の街や村に長く居る理由は、普通なら特にないであろう。
行えるクエストには回数やレベルによる制限などあり、一通り必要な装備やアイテム、クエスト報酬などが手に入ったら、次の街や狩場などに移動した方が効率がいいし、何より成長を実感出来る。
しかし、メアは召喚士になる道程で、狩場に篭りひたすら同じモンスターを倒したり、スキルのレベル上げといった作業に等しい戦闘をずっとしてきた。
「こういった生活が新鮮に感じたんです。 召喚士になる前はずっと勉強や戦いばかりでしたから」
「へぇ、大変だったんだね・・・」
メアの話に、自分の知らない世界があるのだとしみじみとしている。
「終わりました! 今日の分はこれで全部ですか?」
ハッと我に帰る村の男。
「あぁ、今日はこれだけだ。 ありがとよ!」
荷物の確認をした後、馬に乗り出発の支度をする。
「報酬は家にいる妻から受け取っておいてくれ」
「いつも通りですね」
表情を和らげて、少し笑いながら返すメア。
一連のやりとりがあった後、手を振り出荷しに街へと向かっていった。
メアは、言われた通り先ほどの男の家へと向かった。
「メアにぃ! あそぼー!」
村の子供達に行く手を阻まれる。
「なんだ、お前たち。 家の手伝いはしたのか?」
しゃがんで目線を合わせる。
「後でやるよ~、それよりさぁ!」
気だるそうに返事を返した後、待ってたと言わんばかりに目を輝かせる。
「わかったわかった。 でもあまり遠くに連れて行くなよ?」
「やったー!」
子供達は大はしゃぎだ。
メアは、子供達がお楽しみにしている召喚の準備をする。
少し離れる様に子供達にいうと、何もないところから魔道士が使うようなロッドを取り出し、体の前で数回くるくると回した後、両腕を伸ばしロッドを構える。
すると、地面に光り走り、魔法陣を描いて行く。
魔法陣が完成すると、光の線は強く輝き出し、デーモンが魔法陣の中からゆっくりと姿を現わす。
「わーい!
「カッコイイ!」
「すごーい!」
村に迫るモンスター退治のクエストや、村での手伝いで何度か召喚したことがある為、最初は恐がっていたが、今では村中からの信頼を得た。
メアの召喚するデーモンで、名前を“ウルカノ”という。
この名前はダステル村の子供達によって付けられた。
由来は、ダステル村のある土地に伝わる神話からきているのだとか。
冥府から地上を荒らしに来た悪魔ウルカノ。
その悪行に目を余した神が、自分では決して動けない様に地中深くに封印した。
後に、人が神に挑む戦いが起こった際に封印が解かれ、神への復讐のため人と共に神と戦ったという。
そんな話を聞き、メアはウルカノのという名を気に入った。
「いいか? 危ない真似はするなよ。 あと村からあまり離れるな。 俺が怒られるんだからな?」
子供達に言い聞かせるついでに、ウルカノにも指示しておいた。
「わかってるって!」
「メアうるさーい!」
「しつこーい!」
口の減らない子供達だと呆れた。
子供達を頭や肩に乗せ、ゆっくりと動き出すと、そのまま村を歩き出した。
それを見送るとメアは、先程の報酬を受け取りに居候させてもらっている民家へ向かう。
「マーサさん、積荷終わりました」
メアがダステルの村へ街から通っているのを知って、マーサさんが泊まる部屋を用意してくれた、先程の村の男はマーサさんの夫でハワード・マクブライドという。
「ありがとうメアさん。 いつも悪いわね」
手伝いを終えて帰ってくると、マーサさんはいつも温かく迎えてくれる。
「いえ、こちらこそいつも食べる物まで頂いてしまって・・・」
これもいつものやりとりで、メアは直ぐ謙遜をする。
「夫も喜んでいるのよ、まるで息子が出来たみたいだなんて」
メアにとってマクブライド家は第2の家族の様なものになった。
それも本当の家族よりも“家族の温もり”というものを教えてくれた。
メアの家族は、お世辞にも温かい家族ではなかった。
父親は召喚士ギルドで研究に没頭し、殆ど家には帰らず、母親はメアが物心ついた頃から外出が多くなり、ある日出掛けてくると言い残し、それ以来帰って来ることはなかった。
メアは母親の帰りを待ちながら、家にあった父親の書庫に篭り本を読む様になる、それが召喚士というクラスに関わる本だったのだ。
日を重ねる毎に、召喚士への憧れと外の世界への興味でメアの気持ちはいっぱいになっていった。
それからメアは、父の書庫で読み漁った知識と日々の訓練で、やっとの思い出召喚士へとなった。
それを機にメアは、誰も帰らぬ家を飛び出し冒険者としての人生を送る様になる。
「俺も・・・嬉しいです。 本当の家族みたいで」
色々と思い返しているだろうメアの表情を見て、マーサは微笑んだ。
2人は夕飯に向けて食事の準備を進めていく、その内に日はゆっくりと沈んでいった。
「そろそろ子供達が帰ってくる時間かしら?」
「俺、迎えにいってきます」
そういうと作業を引き上げ、手を洗うと準備を始める。
「それじゃお願いね」
「はい! 行ってきます」
木製の床を軽く軋ませ、ドアノブを回すとキーと落ち着く音がする。
村の中央広場で子供達の帰りを待つ。
しばらくすると大きな体に、子供を乗せて歩いて来るウルカノの姿が見えた。
「 あ! メアだ!」
「おーい!」
「ただいまー!」
笑顔で元気よく腕を振る子供達を見ると、楽しんできたのがよくわかる。
ウルカノを戻し、子供達もそれぞれ自分の家へと帰っていき、メアは残った少女の方を振り返る。
「それじゃぁ帰ろうか、サラ」
メアは微笑みながら、サラに手を差し出す。
その手を握り、少女は嬉しそうな表情をした。
「うん!
2人は沈みゆく夕日を眺めながら家路へ向かう。
サラ・マクブライド。
ハワードさんとマーサさんの1人娘だ。
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