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最終章 全ての元凶

強大な力を持つ魔女

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「……な、なにを言って……」

 あまりのスケールのでかさに、結衣は言葉を失った。
 ――ループ? 滅びを防ぐ?
 疑問が脳の中で渋滞を起こし、言葉が出てこない。
 それはみんなも同じようで、口を出すものはいなかった。

「……む? ちょっと難しすぎたかのう? んむむ。どう言ったらいいか……」

 そうやって、顎に手を当てて何か考え込んでいる様子を見せるルリ。
 ウロウロと同じ場所を行ったり来たりしている。
 そして、「あっ」と言って何か思いついたようだ。

「そうじゃのう。こんな昔話……いや、童話か? それがあるのは知っておるかの?」

 ――むかしむかしあるところに、一人の魔女がいました。
 その魔女はたいそう大きな力を持っており、その力でいつも人々を助けていました。
 魔女は人々に喜ばれ、とても幸せな生活を送っていました。
 だけどある日。
 魔女のことを悪者だという人が現れだしたのです。
 その噂はどんどん広まり、魔女はたいそう悲しみました。
 人々のために尽くしてきたのに、その人間たちからは悪口を言われ、時には石を投げられるのです。
 それからしばらく経ったある日。
 魔女は世界を滅ぼす決心をします。
 人々に見放された魔女は、その命を持って、世界に終わりを告げようとしたのです。――

「……と、こんな感じのストーリーじゃ」

 綺麗に話し終えたようで、やけにスッキリとした表情を浮かべている。
 だが、結衣の疑問は深まるばかりだ。

「……それが、今の私たちとなんの関係が……?」
「むぅ? まだわからんのか? これが――現実の話ということじゃよ」

 童話が現実の話になるなんて起こりうるのだろうか。
 結衣は本気でそう思ったが、その思考を読み取ったようにルリが笑う。

「まあ、童話調にはなっているが……この話はフィクションではない、ということじゃよ」

 つまり……その魔女は実在し、本当に世界を滅ぼそうとしているということになる。
 それほどまでの強大な力を持った魔女ということは……まさか……!?

 結衣は咄嗟にルリの方を見るが、“違う”と断言する。
 ルリはさっき、世界をループさせたいと言った。
 つまり、その魔女はとっくに亡くなっていて、世界を滅ぼす魔法が発動していることになる。
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