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春より参られし桜華様!
第39話 草津奇々騒乱編(7) 暗雲之章
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午後十八時。
草津事件発生まで……残り二時間。
日本警察機構にあたる警界庁は、以前より国家転覆罪の疑いで捜査をしていた四人の尻尾を掴んだ。
その内容は、現実世界と異世界の平和を乱すものであった。
警界庁の調べでは、エルンスト国の外務大臣イラド・テンペリオが、使役した亜種族を日本国へ送り込み各地で暴動を起こさせると言う、日本国内の混乱に続いて、異世界への不信感を誘わせようとするテロ計画であった。
そもそもこの計画は、愚かしくも衆議院議員の小藤満助と、参議院議員の南雲靖成を主犯とする計画であった。
更にこの両名は、異世界に対しての不信感を国民に呼び掛け、手始めに戦犯に仕立てたエルンスト国を侵略した後、帝都、魔界を手中に収め、最後は現実世界までも戦火に晒そうとしていた。
何とも許し難い暴挙に怒りを露わにする警界庁は、草津の某料亭にて密会をしている国賊四人の逮捕に踏み切った。
警界官「弾崎警部、各員配置につきました。」
弾崎「うむ、各員に告ぐ、確保の合図があるまで待機。何かあれば随時報告せよ。最後に、相手は亜種族と繋がりがある可能性がある。周囲の警戒を怠らず、最悪の場合は交戦を許可する。以上。」
四人の国賊逮捕を任せられた警界庁治安部所属、弾崎史門警部は、二百人以上の警界官を率いて某料亭を取り囲んでいた。
物々しい配置ではあるが、異世界からの客人の警備の名目で、周囲にはキープ線が引かれていた。
一方、その頃。
草津の温泉街を満喫した小頼たちが、草津の温泉街でショタ化したギールとジェルドを構っている桃馬を置いて、一足先に妖楼郭に戻っていた。
一旦部屋に戻って荷物を置いた小頼たちは、桃馬が来るまで部屋にいるか、先に夕食会場へ向かうかで迷っていた。
これに対して憲明とディノは、先に小頼たちを夕食会場へ向かわせ様と、自分たちはフロントで桃馬たちを待つ事にした。
それから二十分後。
ようやく、温泉街で二匹の駄犬とイチャついていた桃馬が、満足そうに笑みを浮かべる二匹を連れて戻って来た。
ディノ「あっ、おかえりなさい兄さん。」
ギール「ただいまディノ♪シャルたちは……、先に部屋にでも戻ったのか?」
ディノ「いえ、シャル様でしたら、先に小頼さんたちと一緒に夕食会場へ行って貰いましたよ。」
ギール「何だ、先に下見でもさせたのか。」
ディノ「ま、まあ、お部屋で待たれるのもあれでしたので、憲明さんと私の意見で先に行かせたのですよ。」
ギール「二人して気を使ってるな。」
ディノとギールが、何気ない会話をしている一方で、桃馬たちの方はと言うと……。
憲明「おかえり桃馬、意外と早かった?」
桃馬「あぁ、何か巡回中の警界官に職質されてな、結局何事もなく解放されたんだけど、萎えちゃってな。」
憲明「職質って、何か珍しくまともな警官が居たもんだな。」
桃馬「そう思うだろ?だけど職質した理由が、ショタ化した二匹を愛でていた事じゃなくて、人混みが気になって来たんだとよ。」
憲明「はっ?なんだそれ……。」
桃馬「どうやら近くの料亭で、異世界から来たお偉いさんが居るみたいなんだよ。」
ジェルド「わふぅ、もう少しモフられたかったな~。だけど、人前で"もふもふ"されるのは、想像以上に癖になるよ♪」
二人の会話に気分良く割って入って来るジェルドに対して、少々不完全燃焼な桃馬は思わずため息をついた。
桃馬「はぁ、中断したとは言え、ジェルドとギールは満足したみたいでいいな。」
憲明「ま、まあ、寝る前にショタ化した二人をモフれば、少しくらいは気が晴れるだろ。」
桃馬「……朝起きたら"襲われていました"は、勘弁して欲しいけどな。」
憲明「あはは、まさか~。流石に考え過ぎだよ。そもそも、俺とディノが同じ部屋なんだぞ?もしそんな状態でそんな事したら、本当の淫獣だよ。」
桃馬「その淫獣が隣にいるんだが?」
ジェルド「ニコニコ♪」
憲明「……ま、まあ、そ、その時はその時で。」
桃馬「おいこら、他人事見たいに言うなよ。」
憲明「…はぁ、なあジェルド?」
ジェルド「ふっ、皆まで言うなよ憲明♪」
憲明「悪いんだけど、"俺の居る前"で桃馬を襲うなよ?」
ジェルド「うんうん……ん?わふぅ!?ダメなのか!?」
ジェルドの様子を察するに、どうやら憲明の言い分と異なっていた様であった。
これに桃馬は、いつも通り軽蔑の視線を二人に向けた。
桃馬「はぁ、その反応を察するに、何となく何を考えていたか想像がつくけど……、それより、憲明?どさくさに紛れて俺を条件付きで売るなよ。」
憲明「ちっ、バレたか。」
ジェルド「……わふぅ。」
その後桃馬たちは、夕食会場へ向かう前に一旦部屋へと戻るのだが、警戒心を高めている桃馬の姿勢に興奮が落ち着かないジェルドが、とうとう隙を見て桃馬を襲撃。
しかし、甘くみていたジェルドは、逢えなく桃馬に一蹴され、そのままモフられまくった挙句、布団で素巻きにされるのであった。
数分後。
淫獣ジェルドを討伐した桃馬は、蕩けたジェルドを素巻きにすると、そのまま憲明たちと共に、一階にある夕食会場へと向かった。
すると夕食会場には、既に中に入っていると思っていた小頼たちが、夕食会場の入口付近の椅子に腰をかけていた。
桃馬「あれ?桜華たちだ。」
憲明「ほ、本当だ。何でまだ入ってないんだ?」
ディノ「もしかして、混んでいたのでしょうか?」
憲明「まさか、確か指定席だったはずだぞ?」
ギール「となると、俺たちを待ってたんじゃないのか?」
桃馬「いや、まさかの食べ終わった後かも……。」
憲明「ど、どうなんだろう。と、取り敢えず行ってみようか。」
桃馬たちは、シンプルな疑問を持ちつつも小頼たちが待っている夕食会場へと向かった。
憲明「お待たせ小頼?」
小頼「あっ、おかえり憲明。意外と早く戻って来たね?」
憲明「まあ、ちょっとした邪魔が入ったお陰で、無限ループから脱したみたいだけどね。」
小頼「邪魔が入った?」
憲明「まあ、常識のある人に誤解されたって言えばいいかな。」
小頼「もしかして、警察に職質とか?」
憲明「まあ、そんな感じかな。」
桜華「ふぇ!?と、とと、桃馬たち、も、もも、もしかして、つ、捕まったのですか!?」
小頼と憲明の話を耳にした桜華は、思わず声を上げてしまった。
桃馬「っ、ちょっ!?ち、違うよ桜華!?ただ、周辺を警備していた警界官に職質を受けただけだから。」
リフィル「ぷっ、あはは~、まさかの職質って♪まあ、ケモ耳ショタを白昼堂々と愛でていたら、確かに怪しまれますよね♪」
桃馬「うぐっ。」
小頼「ふふっ、まあ、桃馬だけが愛でてるならともかく、子供にも触られてエッチな声を漏らしていたからね~。そりゃあ、止められるよね~。」
ギール「っ!」
リフィルと小頼による言葉のストレートが、桃馬とギールの心にクリンヒットする。
シャル「むぅ?職質とはなんなのだ?」
ディノ「えっと、簡単に言えば、治安を司る役人が、怪しいと思った人に声をかける行為ですね。」
シャル「なるほど、しかし、桃馬は何をしたのだ?」
ディノ「えっと、それは、公衆の面前で幼い姿になった兄さんとジェルドさんを愛でたからでしょうか?」
シャル「なぬ?それだけで止められるのか?」
ディノ「ま、まあ、程度にもよるとは思いますが。」
シャル「ふむぅ、そういう感覚は難しいのだ。」
桃馬の不運を題材に、シャルとディノは現実世界の常識を少し学んだ。
小頼「とまあ、桃馬の職質は置いといて、ジェルドはどうしたの?」
桃馬「それなら、快感に酔いしれて部屋で寝ているよ。」
小頼「あらら、子供たちにモフられて快感に浸ったのかしらね。」
快感に浸っていると言う所は合っているが、実際子供にモフられた事よりも、桃馬によってモフられた事の方が大きな要因であった。
リフィル「でも、ギールは大丈夫だったんだね?」
ギール「ふっ、ジェルドとは心の強さが違うからな。」
淫獣のジェルドとは違い、ディノと言う理性を保つための枷を持っていた事で、桃馬に危害を加えなかったギールは、自慢げに忠犬アピールをした。
ちなみにディノが居なければ、ジェルドと共闘していた事は間違いはなかった。
もし、ifストーリーがあるのなら……。
今頃桃馬は、部屋に備え付けられている浴槽にて、二匹の愛を受け止めていた事であろう。
そんな展開を想像する桃馬は、忠犬アピールをするギールに対して皮肉めいた言葉を投げかける。
桃馬「へぇ~。心が強い‥ねぇ~?」
ギール「おうよ♪俺は桃馬のためなら何だっわふっ!?」
自信満々に語るギールに、桃馬はしれっとギールの尻尾を掴むと優しく撫で始めた。
ギール「きゃふっ!?ふへぇ~♪」
一瞬に崩れ落ちたギールは、そのまま床にうつ伏せになった。
桃馬「これじゃあ、説得力ないなギール?」
ギール「ひょぉおまぁ~、ひろいよ~、はへぇ~。」
桜華「と、蕩けちゃってる…ごくり、か、可愛い~♪」
シャル「むぅ、だらしがないお兄ちゃんだな。ほら、起きろ?」
ギールの醜態に見かねたシャルが、乱暴にギールの尻尾を握った。
ギール「いたたっ!?いきなり何するんだよシャル!?」
シャル「むう?余がせっかく正気に戻してやったというのに礼もなしか?」
ギール「っ、うぐぅ、あ、ありがとう‥。」
シャル「‥にしし、ちょろいお兄ちゃんだな~♪」
ギール「その口調でお兄ちゃんって言うな!」
シャル「やぁ~い、お兄ちゃんが怒ったのだ♪桜華助けてくれ♪」
ギールを怒らせたシャルは、足早に桜華の後ろへ回り込んだ。
桜華「ま、まあまあ、ギールもそう起こらないで、それより早く中に入りましょうよ♪」
小頼「うんうん、確かにしょうもない事で、言い争っても仕方ないからね♪」
ギール「うぐぐ‥。」
憲明「諦めろギール?ここで騒いだら、まわりにも迷惑がかかるよ。」
見かねた憲明に頭を撫でられたギールは、徐々に落ち着きを取り戻して大人しくなると、桃馬たちは夕食会場へと入った。
夕食会場の中は、多くのお客でごった返していた。
それは人間や妖怪、異世界の住人など種族は様々であり、誰もが楽しそうに食事をしていた。
シャル「おぉ!ここにいる者たちが食してるのは、凄くうまそうなのだ!」
ディノ「は、はい!私も早く食べてみたいです!」
小頼「二人とも~?席は決まっているから、間違って他の席に座らないようにね?」
シャル「う、うむ、それは分かっているのだ。」
少し不安な返事ではあるが、シャルとディノの背後にはギールがいるため、少しは安心ではあった。
それから、二分くらい経っただろうか。
小頼たちは、番号札を頼りに指定された席を探すも広い会場の中をグルグル回るだけで、一向に目的の席が見つけられなかった。
それもそのはず、小頼たちは番号を頼りにしていた余り、大広間の入り口に貼られていた席の案内板を見逃していたのだ。
そのため小頼たちは、ある意味無限ループの渦に呑まれてしまっていた。、
もはや、たどり着くには困難と思われたその時、思いもよらぬ人物と出会すのであった。
直人「ん?‥えっ?お前たちここで何をしているんだ?」
小頼「ふぇ?えっ!?な、直人!?」
桃馬「っ!?な、直人もここに来ていたのか!?」
直人「お、おぉ、まさか、桃馬たちも妖楼郭に来ていたとはな‥。」
桃馬「もしかして、両津家で来ていたのか?」
直人「いやそれがな、訳あって今は晴斗とリール、エルンの四人で来たんだよ。」
桜華「ふぇ!?リールちゃんもいるのですか!?」
ここで少し小話。
数日前の小頼商会の騒ぎをきっかけに、桜華とリールは交流を始め、共に意気投合し程の仲になっていた。
直人「あぁ、きっとリールも喜ぶだろうよ。それより何だけど、見たところ迷ってないか?」
小頼「あっ、あはは~、実は、中々席が見つからなくて~。」
直人「ちなみに何番だ?」
小頼「四十五番だよ?」
直人「おぉ、それならちょうど、俺たちの近くだな。よかったら案内してやるよ。」
小頼「おぉ!ありがとう!」
桃馬「すまん直人。助かるよ。」
シャル「ほほぅ、お主は直人と言うのか。うむ、誉めてやるぞ♪」
直人「礼には及ばないよ。それより桃馬たちは、おっちょこちょいだな。入り口辺りに座席の案内板が立て掛けてあったのにも関わらず迷うとは……。」
小頼「ふぇ、案内板?」
桃馬「そ、そんなのがあったのか!?」
ここで桃馬たちは、案内板の存在を知らされる。
桃馬たちの反応に、直人の表情も"おいおいマジかよ"っと言わんばかりの顔をしていた。
しかし直人は、敢えてツッコミを入れ様とせず、小さなため息をつくなり、早速桃馬たちを指定された席へと案内をした。
直人「えーっと、ここだな。俺たちの三つ隣か。」
直人に案内されたところは、大広間の一番奥の座敷であった。これに桃馬たちは、もし直人と出会わなかったら到底たどり着けなかったと思った。
桃馬「ありがとう直人、本当に助かったよ。」
直人「またそんな大袈裟な。それより案内板はちゃんと入口にあるから明日の朝はしっかり見ろよ?」
桃馬「あ、あぁ、気をつけるよ。そ、それより直人は、家族と来たのか?」
直人「ん、ま、まあ、本当は親父も来る予定だったんだけど急に来れなくなってな。今は晴斗たちと来てるんだよ。」
桃馬「へぇ~、そうなんだ。んで、その晴斗たちは?」
直人「先に指定の座敷に入ってるよ。俺はちょっと身内の"挨拶"をしててな、それで遅れた感じだな。」
桃馬「身内?ここで働いてるのか?」
直人「あ、そうか。桃馬は知らないよな。まあ、そう言う事だ。取り敢えずここは、他の旅館と比べてもかなり良いところだから楽しんで行ってくれよ。」
桃馬「あぁ、ありがとう。」
一時の別れの挨拶を交わした直人は、足早に自分の座敷へ入ると、入れ替わるかの様にリールが顔を出した。
リールは、キョロキョロと辺りを見渡し、桃馬たちを見つけると、直ぐに座敷を飛び出して駆け寄って来た。
すると、リールの後ろから慌てた様子の直人が飛び出して来た。
リール「桃馬!桜華ちゃんはどこに!?」
桃馬「お、おぉ、中にいるよ?」
リール「おぉ!」
リールが座敷に入ろうとするも、追い付いた直人に捕まりそのまま脇に抱えられた。
直人「こら、リール!会うのは飯の後だよ!」
リール「そ、そんな~!桜華ちゃんと一緒に食べたいよ~。」
直人「だーめ!」
リール「うわぁ~。」
なんて微笑ましい光景だろうか。
それに、大胆に触れ合える何て本当に羨ましい。
直人に捕まったリールは、抵抗虚しく連行されると、再び座敷から出て来る事はなかった。
その後、小頼たちが全員座敷に着くと豪勢な懐石料理が次々と運ばれて来た。
これにシャルとディノは、キラキラと目を輝かせながら豪勢な懐石料理をむさぼった。
シャル「ぬはぁ~♪うまいのだ!もぐもぐ。」
ディノ「一つ一つの料理が少ないと思いましたけど、意外と満足しますね。」
ギール「懐石料理はそう言うものだよ。まあ、俺もテレビでしか見た事なかったけど、もぐもぐ。うまいな。」
初めての懐石料理に感動する三人。
その分、食べるスピードも早い。
桜華「うーん♪懐石料理も久しぶりですね♪」
リフィル「私も久しぶりです♪」
憲明「意外だなリフィルも食べたことあるのか?」
リフィル「えぇ、県内の温泉地に一度だけ"家族"と一緒に食べた事があるわ。」
憲明「さ、流石、アウトドア派だな。」
ここで再び小話
実はリフィルにはいくつかの謎があり、リフィルの家には、憲明でさえも入ったことがなく、一人暮らしなのか、それとも親と一緒に暮らしているのか、それすらも不明であった。
一応、リフィルが住んでいる家は、至って普通の一軒家であるため、貴族に捉えるのには些か疑問ではある。
しかし、一部の生徒たちからは、無邪気ながらも高貴なオーラを感じさせる面がある事から、実は王族ではないのかと噂されている。
話は戻し。
そうこうしていると騒ぎの種が芽吹き始める。
シャル「お兄ちゃん、その海老を余に寄越すのだ!」
ギール「誰がやるかよ!これは俺のだ!はむ!」
シャル「ぬわぁ!?むぅ~、けち~!」
二人のやり取りに嫌な予感を感じた桃馬と憲明は、こちらに火種が飛んで来ないように、直ぐに海老を口にした。
ギール「俺だって、初めての懐石料理なんだ。最後まで味合わせろよ。」
シャル「むう‥。」
桜華「あはは、シャルちゃん?よかったら私のあげるよ?」
シャル「本当か!?」
桜華「えぇ♪」
シャル「ふぁ~、ありがとうなのだ♪」
桜華の海老フライを箸で掴もうとした瞬間、突然シャルは思い止まった。
シャル「……や、やっぱり、要らなのだ。」
桜華「ふぇ?食べていいんだよ?」
シャル「い、要らないのだ。む、むしろ取ってはいけない気がするのだ。」
ディノ「‥もぐもぐ、ひゃるひゃま?」
この時シャルの心の中では、一つの感情が生まれていた。大雑把に言えば罪悪感だろうか。
不思議と引っ掛かる桜華の優しさ。
その優しさは、普通の優しさとは何か違っていた。
恐らくこれは、気遣いからく来る遠慮と言う雑念であろうか。
しかし今のシャルには、その複雑な感情がうまく理解できず、直感で桜華から受け取ってはいけないと悟ったのであった。
シャルの意外な反応にギールは感心し、どさくさに紛れて自分の苦手な食べ物を渡した。
ギール「‥ほらよ、俺のほたて食って良いぞ?」
シャル「い、いいのか?」
ギール「我慢したご褒美だよ♪」
シャル「うぅ、ありがとうなのだ。」
桃馬たちは、微笑ましい兄妹愛にほっこりとした。
しかし実際は、ギールの苦手な食べ物をシャルに横流ししているだけの、何とも言えない光景であった。
そして、桃馬たちの隣の座敷には……。
日中から桃馬たちを付け回していた。
春桜学園の新聞部の奇才。
亀田映果の姿があった。
映果「もぐもぐ‥、まさか、直人たちもいるとは……、これは予想外な展開になりそうね。」
草津事件発生まで……残り二時間。
日本警察機構にあたる警界庁は、以前より国家転覆罪の疑いで捜査をしていた四人の尻尾を掴んだ。
その内容は、現実世界と異世界の平和を乱すものであった。
警界庁の調べでは、エルンスト国の外務大臣イラド・テンペリオが、使役した亜種族を日本国へ送り込み各地で暴動を起こさせると言う、日本国内の混乱に続いて、異世界への不信感を誘わせようとするテロ計画であった。
そもそもこの計画は、愚かしくも衆議院議員の小藤満助と、参議院議員の南雲靖成を主犯とする計画であった。
更にこの両名は、異世界に対しての不信感を国民に呼び掛け、手始めに戦犯に仕立てたエルンスト国を侵略した後、帝都、魔界を手中に収め、最後は現実世界までも戦火に晒そうとしていた。
何とも許し難い暴挙に怒りを露わにする警界庁は、草津の某料亭にて密会をしている国賊四人の逮捕に踏み切った。
警界官「弾崎警部、各員配置につきました。」
弾崎「うむ、各員に告ぐ、確保の合図があるまで待機。何かあれば随時報告せよ。最後に、相手は亜種族と繋がりがある可能性がある。周囲の警戒を怠らず、最悪の場合は交戦を許可する。以上。」
四人の国賊逮捕を任せられた警界庁治安部所属、弾崎史門警部は、二百人以上の警界官を率いて某料亭を取り囲んでいた。
物々しい配置ではあるが、異世界からの客人の警備の名目で、周囲にはキープ線が引かれていた。
一方、その頃。
草津の温泉街を満喫した小頼たちが、草津の温泉街でショタ化したギールとジェルドを構っている桃馬を置いて、一足先に妖楼郭に戻っていた。
一旦部屋に戻って荷物を置いた小頼たちは、桃馬が来るまで部屋にいるか、先に夕食会場へ向かうかで迷っていた。
これに対して憲明とディノは、先に小頼たちを夕食会場へ向かわせ様と、自分たちはフロントで桃馬たちを待つ事にした。
それから二十分後。
ようやく、温泉街で二匹の駄犬とイチャついていた桃馬が、満足そうに笑みを浮かべる二匹を連れて戻って来た。
ディノ「あっ、おかえりなさい兄さん。」
ギール「ただいまディノ♪シャルたちは……、先に部屋にでも戻ったのか?」
ディノ「いえ、シャル様でしたら、先に小頼さんたちと一緒に夕食会場へ行って貰いましたよ。」
ギール「何だ、先に下見でもさせたのか。」
ディノ「ま、まあ、お部屋で待たれるのもあれでしたので、憲明さんと私の意見で先に行かせたのですよ。」
ギール「二人して気を使ってるな。」
ディノとギールが、何気ない会話をしている一方で、桃馬たちの方はと言うと……。
憲明「おかえり桃馬、意外と早かった?」
桃馬「あぁ、何か巡回中の警界官に職質されてな、結局何事もなく解放されたんだけど、萎えちゃってな。」
憲明「職質って、何か珍しくまともな警官が居たもんだな。」
桃馬「そう思うだろ?だけど職質した理由が、ショタ化した二匹を愛でていた事じゃなくて、人混みが気になって来たんだとよ。」
憲明「はっ?なんだそれ……。」
桃馬「どうやら近くの料亭で、異世界から来たお偉いさんが居るみたいなんだよ。」
ジェルド「わふぅ、もう少しモフられたかったな~。だけど、人前で"もふもふ"されるのは、想像以上に癖になるよ♪」
二人の会話に気分良く割って入って来るジェルドに対して、少々不完全燃焼な桃馬は思わずため息をついた。
桃馬「はぁ、中断したとは言え、ジェルドとギールは満足したみたいでいいな。」
憲明「ま、まあ、寝る前にショタ化した二人をモフれば、少しくらいは気が晴れるだろ。」
桃馬「……朝起きたら"襲われていました"は、勘弁して欲しいけどな。」
憲明「あはは、まさか~。流石に考え過ぎだよ。そもそも、俺とディノが同じ部屋なんだぞ?もしそんな状態でそんな事したら、本当の淫獣だよ。」
桃馬「その淫獣が隣にいるんだが?」
ジェルド「ニコニコ♪」
憲明「……ま、まあ、そ、その時はその時で。」
桃馬「おいこら、他人事見たいに言うなよ。」
憲明「…はぁ、なあジェルド?」
ジェルド「ふっ、皆まで言うなよ憲明♪」
憲明「悪いんだけど、"俺の居る前"で桃馬を襲うなよ?」
ジェルド「うんうん……ん?わふぅ!?ダメなのか!?」
ジェルドの様子を察するに、どうやら憲明の言い分と異なっていた様であった。
これに桃馬は、いつも通り軽蔑の視線を二人に向けた。
桃馬「はぁ、その反応を察するに、何となく何を考えていたか想像がつくけど……、それより、憲明?どさくさに紛れて俺を条件付きで売るなよ。」
憲明「ちっ、バレたか。」
ジェルド「……わふぅ。」
その後桃馬たちは、夕食会場へ向かう前に一旦部屋へと戻るのだが、警戒心を高めている桃馬の姿勢に興奮が落ち着かないジェルドが、とうとう隙を見て桃馬を襲撃。
しかし、甘くみていたジェルドは、逢えなく桃馬に一蹴され、そのままモフられまくった挙句、布団で素巻きにされるのであった。
数分後。
淫獣ジェルドを討伐した桃馬は、蕩けたジェルドを素巻きにすると、そのまま憲明たちと共に、一階にある夕食会場へと向かった。
すると夕食会場には、既に中に入っていると思っていた小頼たちが、夕食会場の入口付近の椅子に腰をかけていた。
桃馬「あれ?桜華たちだ。」
憲明「ほ、本当だ。何でまだ入ってないんだ?」
ディノ「もしかして、混んでいたのでしょうか?」
憲明「まさか、確か指定席だったはずだぞ?」
ギール「となると、俺たちを待ってたんじゃないのか?」
桃馬「いや、まさかの食べ終わった後かも……。」
憲明「ど、どうなんだろう。と、取り敢えず行ってみようか。」
桃馬たちは、シンプルな疑問を持ちつつも小頼たちが待っている夕食会場へと向かった。
憲明「お待たせ小頼?」
小頼「あっ、おかえり憲明。意外と早く戻って来たね?」
憲明「まあ、ちょっとした邪魔が入ったお陰で、無限ループから脱したみたいだけどね。」
小頼「邪魔が入った?」
憲明「まあ、常識のある人に誤解されたって言えばいいかな。」
小頼「もしかして、警察に職質とか?」
憲明「まあ、そんな感じかな。」
桜華「ふぇ!?と、とと、桃馬たち、も、もも、もしかして、つ、捕まったのですか!?」
小頼と憲明の話を耳にした桜華は、思わず声を上げてしまった。
桃馬「っ、ちょっ!?ち、違うよ桜華!?ただ、周辺を警備していた警界官に職質を受けただけだから。」
リフィル「ぷっ、あはは~、まさかの職質って♪まあ、ケモ耳ショタを白昼堂々と愛でていたら、確かに怪しまれますよね♪」
桃馬「うぐっ。」
小頼「ふふっ、まあ、桃馬だけが愛でてるならともかく、子供にも触られてエッチな声を漏らしていたからね~。そりゃあ、止められるよね~。」
ギール「っ!」
リフィルと小頼による言葉のストレートが、桃馬とギールの心にクリンヒットする。
シャル「むぅ?職質とはなんなのだ?」
ディノ「えっと、簡単に言えば、治安を司る役人が、怪しいと思った人に声をかける行為ですね。」
シャル「なるほど、しかし、桃馬は何をしたのだ?」
ディノ「えっと、それは、公衆の面前で幼い姿になった兄さんとジェルドさんを愛でたからでしょうか?」
シャル「なぬ?それだけで止められるのか?」
ディノ「ま、まあ、程度にもよるとは思いますが。」
シャル「ふむぅ、そういう感覚は難しいのだ。」
桃馬の不運を題材に、シャルとディノは現実世界の常識を少し学んだ。
小頼「とまあ、桃馬の職質は置いといて、ジェルドはどうしたの?」
桃馬「それなら、快感に酔いしれて部屋で寝ているよ。」
小頼「あらら、子供たちにモフられて快感に浸ったのかしらね。」
快感に浸っていると言う所は合っているが、実際子供にモフられた事よりも、桃馬によってモフられた事の方が大きな要因であった。
リフィル「でも、ギールは大丈夫だったんだね?」
ギール「ふっ、ジェルドとは心の強さが違うからな。」
淫獣のジェルドとは違い、ディノと言う理性を保つための枷を持っていた事で、桃馬に危害を加えなかったギールは、自慢げに忠犬アピールをした。
ちなみにディノが居なければ、ジェルドと共闘していた事は間違いはなかった。
もし、ifストーリーがあるのなら……。
今頃桃馬は、部屋に備え付けられている浴槽にて、二匹の愛を受け止めていた事であろう。
そんな展開を想像する桃馬は、忠犬アピールをするギールに対して皮肉めいた言葉を投げかける。
桃馬「へぇ~。心が強い‥ねぇ~?」
ギール「おうよ♪俺は桃馬のためなら何だっわふっ!?」
自信満々に語るギールに、桃馬はしれっとギールの尻尾を掴むと優しく撫で始めた。
ギール「きゃふっ!?ふへぇ~♪」
一瞬に崩れ落ちたギールは、そのまま床にうつ伏せになった。
桃馬「これじゃあ、説得力ないなギール?」
ギール「ひょぉおまぁ~、ひろいよ~、はへぇ~。」
桜華「と、蕩けちゃってる…ごくり、か、可愛い~♪」
シャル「むぅ、だらしがないお兄ちゃんだな。ほら、起きろ?」
ギールの醜態に見かねたシャルが、乱暴にギールの尻尾を握った。
ギール「いたたっ!?いきなり何するんだよシャル!?」
シャル「むう?余がせっかく正気に戻してやったというのに礼もなしか?」
ギール「っ、うぐぅ、あ、ありがとう‥。」
シャル「‥にしし、ちょろいお兄ちゃんだな~♪」
ギール「その口調でお兄ちゃんって言うな!」
シャル「やぁ~い、お兄ちゃんが怒ったのだ♪桜華助けてくれ♪」
ギールを怒らせたシャルは、足早に桜華の後ろへ回り込んだ。
桜華「ま、まあまあ、ギールもそう起こらないで、それより早く中に入りましょうよ♪」
小頼「うんうん、確かにしょうもない事で、言い争っても仕方ないからね♪」
ギール「うぐぐ‥。」
憲明「諦めろギール?ここで騒いだら、まわりにも迷惑がかかるよ。」
見かねた憲明に頭を撫でられたギールは、徐々に落ち着きを取り戻して大人しくなると、桃馬たちは夕食会場へと入った。
夕食会場の中は、多くのお客でごった返していた。
それは人間や妖怪、異世界の住人など種族は様々であり、誰もが楽しそうに食事をしていた。
シャル「おぉ!ここにいる者たちが食してるのは、凄くうまそうなのだ!」
ディノ「は、はい!私も早く食べてみたいです!」
小頼「二人とも~?席は決まっているから、間違って他の席に座らないようにね?」
シャル「う、うむ、それは分かっているのだ。」
少し不安な返事ではあるが、シャルとディノの背後にはギールがいるため、少しは安心ではあった。
それから、二分くらい経っただろうか。
小頼たちは、番号札を頼りに指定された席を探すも広い会場の中をグルグル回るだけで、一向に目的の席が見つけられなかった。
それもそのはず、小頼たちは番号を頼りにしていた余り、大広間の入り口に貼られていた席の案内板を見逃していたのだ。
そのため小頼たちは、ある意味無限ループの渦に呑まれてしまっていた。、
もはや、たどり着くには困難と思われたその時、思いもよらぬ人物と出会すのであった。
直人「ん?‥えっ?お前たちここで何をしているんだ?」
小頼「ふぇ?えっ!?な、直人!?」
桃馬「っ!?な、直人もここに来ていたのか!?」
直人「お、おぉ、まさか、桃馬たちも妖楼郭に来ていたとはな‥。」
桃馬「もしかして、両津家で来ていたのか?」
直人「いやそれがな、訳あって今は晴斗とリール、エルンの四人で来たんだよ。」
桜華「ふぇ!?リールちゃんもいるのですか!?」
ここで少し小話。
数日前の小頼商会の騒ぎをきっかけに、桜華とリールは交流を始め、共に意気投合し程の仲になっていた。
直人「あぁ、きっとリールも喜ぶだろうよ。それより何だけど、見たところ迷ってないか?」
小頼「あっ、あはは~、実は、中々席が見つからなくて~。」
直人「ちなみに何番だ?」
小頼「四十五番だよ?」
直人「おぉ、それならちょうど、俺たちの近くだな。よかったら案内してやるよ。」
小頼「おぉ!ありがとう!」
桃馬「すまん直人。助かるよ。」
シャル「ほほぅ、お主は直人と言うのか。うむ、誉めてやるぞ♪」
直人「礼には及ばないよ。それより桃馬たちは、おっちょこちょいだな。入り口辺りに座席の案内板が立て掛けてあったのにも関わらず迷うとは……。」
小頼「ふぇ、案内板?」
桃馬「そ、そんなのがあったのか!?」
ここで桃馬たちは、案内板の存在を知らされる。
桃馬たちの反応に、直人の表情も"おいおいマジかよ"っと言わんばかりの顔をしていた。
しかし直人は、敢えてツッコミを入れ様とせず、小さなため息をつくなり、早速桃馬たちを指定された席へと案内をした。
直人「えーっと、ここだな。俺たちの三つ隣か。」
直人に案内されたところは、大広間の一番奥の座敷であった。これに桃馬たちは、もし直人と出会わなかったら到底たどり着けなかったと思った。
桃馬「ありがとう直人、本当に助かったよ。」
直人「またそんな大袈裟な。それより案内板はちゃんと入口にあるから明日の朝はしっかり見ろよ?」
桃馬「あ、あぁ、気をつけるよ。そ、それより直人は、家族と来たのか?」
直人「ん、ま、まあ、本当は親父も来る予定だったんだけど急に来れなくなってな。今は晴斗たちと来てるんだよ。」
桃馬「へぇ~、そうなんだ。んで、その晴斗たちは?」
直人「先に指定の座敷に入ってるよ。俺はちょっと身内の"挨拶"をしててな、それで遅れた感じだな。」
桃馬「身内?ここで働いてるのか?」
直人「あ、そうか。桃馬は知らないよな。まあ、そう言う事だ。取り敢えずここは、他の旅館と比べてもかなり良いところだから楽しんで行ってくれよ。」
桃馬「あぁ、ありがとう。」
一時の別れの挨拶を交わした直人は、足早に自分の座敷へ入ると、入れ替わるかの様にリールが顔を出した。
リールは、キョロキョロと辺りを見渡し、桃馬たちを見つけると、直ぐに座敷を飛び出して駆け寄って来た。
すると、リールの後ろから慌てた様子の直人が飛び出して来た。
リール「桃馬!桜華ちゃんはどこに!?」
桃馬「お、おぉ、中にいるよ?」
リール「おぉ!」
リールが座敷に入ろうとするも、追い付いた直人に捕まりそのまま脇に抱えられた。
直人「こら、リール!会うのは飯の後だよ!」
リール「そ、そんな~!桜華ちゃんと一緒に食べたいよ~。」
直人「だーめ!」
リール「うわぁ~。」
なんて微笑ましい光景だろうか。
それに、大胆に触れ合える何て本当に羨ましい。
直人に捕まったリールは、抵抗虚しく連行されると、再び座敷から出て来る事はなかった。
その後、小頼たちが全員座敷に着くと豪勢な懐石料理が次々と運ばれて来た。
これにシャルとディノは、キラキラと目を輝かせながら豪勢な懐石料理をむさぼった。
シャル「ぬはぁ~♪うまいのだ!もぐもぐ。」
ディノ「一つ一つの料理が少ないと思いましたけど、意外と満足しますね。」
ギール「懐石料理はそう言うものだよ。まあ、俺もテレビでしか見た事なかったけど、もぐもぐ。うまいな。」
初めての懐石料理に感動する三人。
その分、食べるスピードも早い。
桜華「うーん♪懐石料理も久しぶりですね♪」
リフィル「私も久しぶりです♪」
憲明「意外だなリフィルも食べたことあるのか?」
リフィル「えぇ、県内の温泉地に一度だけ"家族"と一緒に食べた事があるわ。」
憲明「さ、流石、アウトドア派だな。」
ここで再び小話
実はリフィルにはいくつかの謎があり、リフィルの家には、憲明でさえも入ったことがなく、一人暮らしなのか、それとも親と一緒に暮らしているのか、それすらも不明であった。
一応、リフィルが住んでいる家は、至って普通の一軒家であるため、貴族に捉えるのには些か疑問ではある。
しかし、一部の生徒たちからは、無邪気ながらも高貴なオーラを感じさせる面がある事から、実は王族ではないのかと噂されている。
話は戻し。
そうこうしていると騒ぎの種が芽吹き始める。
シャル「お兄ちゃん、その海老を余に寄越すのだ!」
ギール「誰がやるかよ!これは俺のだ!はむ!」
シャル「ぬわぁ!?むぅ~、けち~!」
二人のやり取りに嫌な予感を感じた桃馬と憲明は、こちらに火種が飛んで来ないように、直ぐに海老を口にした。
ギール「俺だって、初めての懐石料理なんだ。最後まで味合わせろよ。」
シャル「むう‥。」
桜華「あはは、シャルちゃん?よかったら私のあげるよ?」
シャル「本当か!?」
桜華「えぇ♪」
シャル「ふぁ~、ありがとうなのだ♪」
桜華の海老フライを箸で掴もうとした瞬間、突然シャルは思い止まった。
シャル「……や、やっぱり、要らなのだ。」
桜華「ふぇ?食べていいんだよ?」
シャル「い、要らないのだ。む、むしろ取ってはいけない気がするのだ。」
ディノ「‥もぐもぐ、ひゃるひゃま?」
この時シャルの心の中では、一つの感情が生まれていた。大雑把に言えば罪悪感だろうか。
不思議と引っ掛かる桜華の優しさ。
その優しさは、普通の優しさとは何か違っていた。
恐らくこれは、気遣いからく来る遠慮と言う雑念であろうか。
しかし今のシャルには、その複雑な感情がうまく理解できず、直感で桜華から受け取ってはいけないと悟ったのであった。
シャルの意外な反応にギールは感心し、どさくさに紛れて自分の苦手な食べ物を渡した。
ギール「‥ほらよ、俺のほたて食って良いぞ?」
シャル「い、いいのか?」
ギール「我慢したご褒美だよ♪」
シャル「うぅ、ありがとうなのだ。」
桃馬たちは、微笑ましい兄妹愛にほっこりとした。
しかし実際は、ギールの苦手な食べ物をシャルに横流ししているだけの、何とも言えない光景であった。
そして、桃馬たちの隣の座敷には……。
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