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一章/俺と駆け落ちして下さい。

4.お友達

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(三日月side)



「………!」



昨日の子がいた。



「や……弥生、弥生、見て、昨日の子…!」
「昨日…?……ってあれ、同じクラスの蜂須賀実乃じゃない」


……えっ



「お……同じクラスだったの……?!」
「ほんとに人に関心無いね、三日月ちゃんって」



会ったのが昨日や今日だから仕方ない………




「あの子は無腰で戦うタイプだね、昨日三日月ちゃんが言ってた子はあの子の事ね。」
「そう、……まぁ、友達にはなれないけど。」




見た目と年齢が変わらない私は中学生に上がることが出来ない。


見た目だけなら誤魔化せるかもしれないけど、知力や魔力、体力は時を止められた小学生現在から発達することは無く、何かを覚えることすら難しいため中学高校にはあがれないのだ。



バレないように戸籍をいじり他校を転々としながら数年。今は本当の母校に在籍しているけど………中等部に上がる前にはまた転校しなければならない。



だから、友達なんて作れなかった。




(まぁ………でも)


「三日月ちゃんがしたいようにしなよ、いい結果でも悪い結果でも私は三日月ちゃんの傍にいるから。」



この人は、弥生だけは、





それを隠し通してでも友達でいたいと思った。







「弥生…………」
「…まぁ、結構寂しいんだけどね、三日月ちゃんが他の人の所に行っちゃうの」


そう言って少し眉を下げで笑う弥生。



「大丈夫、私は弥生と、離れたりしないから」



この発言が後にどれだけ彼女を苦しめてしまうのか、想像するのは簡単だった。



「……!…そっか。…嬉しい…っ!」



弥生は本当に嬉しそうに笑ったあと、




「ねぇ、少しいいかしら?」



そのまま嬉しそうな雰囲気で蜂須賀さんに話しかけにいった。



(や…弥生……!!)



まだ心の準備が出来てないのに………


弥生は嬉しくなると周りが見えなくなる事がある。




「みの?」
「えぇ!蜂須賀実乃さん、あなたです」
「みのになにか用ー?」
 

腰まで伸びた綺麗なツインテールを揺らして、不思議そうにこちらを向いた。



「っ…ぁ、」



無理、緊張する



「…こんにちは!みの、蜂須賀実乃と言います!」


にこにこしながら挨拶してくれる蜂須賀さん。

とりあえず私も笑顔のつもりで挨拶してみる。


(相手は一回りくらい年下、一回りくらい年下…………)


なんて心の中で何度も自分を安心させながら、一度深呼吸する。…そして、




「こ、こんにちはぁー………」



……とりあえず、次は自己紹介。



「み…御子柴三日月って言います、その…昨日の放課後の………、すごかったね…………」



そう言うと蜂須賀さんは本当に嬉しそうににこっと笑った。




「ありがとうっ…!!三日月って呼んでもいい?」
「…!…ぅ、うん…!えっと、実乃……?」



名前を呼ぶと実乃は嬉しそうに頷いた。




「よろしくね……っ、三日月…!」






ーーー


「あ、私は若菜弥生と言います、私も仲間に入っていいですか?」
「弥生!皆でお友達、なろ!」


笑顔が眩しいな…………



「……私が、弥生以外の友達を………」


なんて感動していた矢先、



「……勢いで友達になるよう後押ししてしまったけど、不覚だわ…………本当三日月ちゃんに弱いのよね、気を付けないと…………」


何かぶつぶつ話していた弥生の声が私に届くことは無かった。






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