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「殿下は確かにミリオネアの全体を覆っている。無意識なのかどうかはわかりませんが…」
お兄様は一旦言葉を切った。
どう言おうかと考えているのだろうか。
「無意識に…俺は何をしていた?」
ジャスティンがお兄様をじっと見つめる。
何故、魔法が簡単に破られるのか、その原因を追求したいのだろう。
「…殿下は、ミリオネアの心臓部に他の所よりも強く魔力を纏わせています。そのせいで、その他の箇所に綻びが出来ています」
「心臓…聖女殿の…そんなはずは…」
「…っ!!」
私はびくりとした。
心臓は、私が私に攻撃魔法を叩き込んだ所。
ジャスティンは無意識に私の心臓を守ろうとしたというの…?
記憶は無いはずなのに、魂が覚えているとでも言うの?
「殿下、致命傷を避けるために心臓を守るのはいいです。でも、ムラが出来ては意味がない。するなら全体を強固にして、さらに心臓部に多く魔力を注げるようにコントロールしなければならないのです」
「…わかった。ありがとう」
「いえ、ミリオネアを守りたい気持ちは伝わってきましたから、満足です」
「あ…うん…」
気不味そうに目を逸らすジャスティンに、私に何とも言えない感情が湧く。
罪悪感からなのか、純粋な好意なのかはわからないけれど。
ジャスティンもまた、未だに傷が癒えてないのかも知れない…例え覚えていなくとも。
「今日の訓練はここまでにしましょう。殿下はイメージをしっかり固めて、魔力のコントロールをより精密に出来るようにして下さい。ミリオネアは、魔力コントロールが良い感じにグッと来てるから、あともうちょっとばっと出せるように」
「ありがとうございました」
「ありがとうございます、お兄様」
ジャスティンへの説明のような説明を私にもしてくれないかしら。
相変わらず難解だわ。
グッと来てるからばっと出すの意味がわからない。
「お茶でも飲みましょう、殿下」
「あ、あぁ」
私はジャスティンを誘って、庭園のガゼボへ行った。
お茶が入るまでの間、私達はベンチに座ってゆっくりとしている。
ジャスティンはじっと庭園を見ていて、私はそれを観察していた。
「…やっぱりいいな、この庭園…」
ぽつりと呟くジャスティンが見ているのは、アーチになっている所で。
あの日アダム様が見ていた所と同じだった。
アダム様とジャスティンの横顔が重なる。
「………!」
私は気付いてしまった。
どうして宰相様から何の返事もないのか。
どうして探してもアダムと言う少年は見つからないのか。
「庭師に紹介しましょうか?」
わざと同じ質問をする私は意地が悪いのだろうか。
ジャスティンははっとした様子を見せたが、すぐに表情を戻して「そうだな、庭師の話を聞いてみたい」と笑った。
気付かないフリをしようかどうしようかと思いながら、ダリに庭師のジャンを呼んでもらうように伝える。
「お嬢様、ジャンが参りました」
「お、お嬢様…ワシは何か…」
不安げなジャンににこりと笑いかけ、声を掛ける。
「殿下がこの庭を気に入っていて、ジャンの話が聞きたいそうなの」
「は…こ、光栄な事です!!」
ジャンは青ざめているが、表情は誇らしげだ。
早速ジャスティンに紹介する。
「殿下、庭師のジャンです」
「あぁ、素晴らしい庭園だ。ぜひコンセプトや、こだわりの部分などがあれば聞きたい」
ジャスティンは表情筋があまり動いていないように見えるが、内心はかなりワクワクしているはずだ。
雰囲気でわかる。
「光栄です。まずこだわっている所は…」
ジャンが説明を始めて、ジャスティンは興味深そうに聞いていてたまに質問もしていた。
前から庭園好きだったのかしら?
散歩くらいしかした事なかったけれど。
「このアーチはお嬢様が好きな薔薇と緑のバランスを考えて、ここでゆっくり時間を過ごして欲しかったんです…」
「そうか、確かにあのアーチは俺も好きだ。何時間でも見ていられる」
「ありがとうございます。殿下にそう言って頂けるなんて、一生の誇りに出来ます」
「はは…そんな大層なもんじゃない」
私はジャンの気遣いを初めて聞いた。
そんな思いで庭園を作ってくれていたのね…!
ありがとう、ジャン。
「聖女殿、後でもう少し見て回っても良いか?」
「いいですよ、お付き合いします」
「ありがとう」
ジャスティンはゆったりとお茶を飲みながら庭園を眺める。
本当に庭園が好きなんだな、とじっと見てしまった。
私の誕生日パーティーに来ていたアダム様と、ジャスティンが同一人物だとわかった今は、アダム様の顔が私の好みなのも頷けた。
でも、わざわざ髪色と目の色まで変えてここに来たのは、何か理由があったんだろうか。
「聖女殿…」
「なんですか?」
「あの…穴が空きそうだ」
「え、あぁ、見つめてしまっていました。すみません」
「見惚れるのは良いんだが、もう少し隠れて見てくれ」
「もうバレちゃってるので、堂々と見ますわ」
私はニヤリと笑いながら、更にじっとジャスティンを正面から見ている。
ジャスティンはチラリとこちらを見てすぐに目を逸らすが、じわじわと頬が赤くなってくる。
私の悪戯心に火がつくのは仕方ないと思うの、そんなの見たら。
「あら、殿下。顔が赤いですわよ、熱ですか?」
「いや…熱はない…」
「じゃあ何です?」
「……何でもない……」
「えー?本当にぃ?」
「…くそ…意地が悪いぞ…」
「ふふふ…だって可愛いんですもの」
「可愛いって言うな…」
とうとうジャスティンはぷいとそっぽを向いてしまった。
これは、聞いてみても良いんだろうか。
ジャスティンがアダム様でしょって。
あのネックレスはどうしたのって。
「聖女殿、残念ながらもう時間が来てしまったようだ」
「え?あ…」
向こうからジャスティンの付き人が歩いて来るのが見える。
これからまた勉強か、訓練があるんでしょうね。
忙しい人…。
「楽しかった。訓練も課題が出来たし、的確なアドバイスも為になったよ」
「お兄様の説明はわかりにくいですけどね」
「あぁ…グッと来てるからばっと出すで君は不思議そうな顔をしてたな」
「あれの意味がわかりません…」
「くくっ…確かに…」
ジャスティンは笑いを堪えているようだが、堪えきれずに口元が笑っている。
でも、楽しい時間が過ごせて良かった。
付き人が到着したので、馬車まで見送りに行く。
「聖女殿、また来ても良いか?」
「どうぞ、次はあの難解語録を解読して下さいませ」
「ふっ…努力する。じゃあな」
「はい、お気を付けて」
ジャスティンを乗せた馬車はゆっくりと動き出す。
今世の彼はよく笑う。
何かのしがらみが解けたみたいに。
結局、アダム様の事も、ネックレスの事も聞けないままだった。
「…聞かない方が良いのかしらね…」
ジャスティンが隠しているなら、暴かない方が良いのかも知れない。
記憶はないはず。
けれど、私の心臓を無意識に守ろうとする彼をもう責める気はしない。
過去は今のジャスティンには関係がないのだ。
私が…私だけが抱えている事実で。
それだって、幻影だともう知っているのに、嫉妬の黒い靄の中から抜け出せないのも私だけで。
ごめんねとありがとうをこの先、機会があったら伝えよう。
ジャスティンには何の事かわからなくても良い。
彼の魂に聞かせたい。
「ちゃんと嫉妬したわよ、私…」
もう居ないジャスティンにそう聞かせれば良かった。
強がらずに、感情を伝えれば良かった。
他の女に触らないで、私だけを見てって。
これから先、私が恋をしたら今のこの気持ちを忘れずにいたい。
伝える事がどれだけ大切かって。
思うだけじゃ、すれ違うんだって。
あの時、勇気を出して彼に問い質していればきっと結末は違ったのだろう。
こうなってしまったのは、彼も私も相手の気持ちを聞かなかったからだ。
「今更、だけどね」
女神様は私にこの気持ちを教えたかったのかも知れないな。
ふわりと頬を撫でる風を感じて、そう思えた。
もう一度やり直す事を提案してくれたのは、あまりにも歪んでしまった二人を憐れんでくれたから。
幸せになって欲しかったから。
今現在、私と彼の間には恋も愛も生まれていない。
小さな、ほんの小さな芽が土の中に埋まっているだけ。
それが芽吹くかどうか…。
私は、ジャスティンを…。
「あー…もう…」
どうしていつもこうなるの。
何も変わってないじゃない。
うじうじ、だらだらと先延ばしにしてばかりで。
「女神様…完敗よ。やっぱりジャスティンには勝てないわ」
もう認めた方がすっきりするわね。
運命的な二人を結ぶ赤い糸が実は流した血の色だったとしても、その糸が赤に見えて実は真っ黒だったとしても。
手繰り寄せた糸の先に底なし沼が広がっていようとも。
「好きになるに決まってるじゃないの」
じゃなきゃ命を懸けてまで嫌がらせなんかしないわよ。
何なのよ、一生記憶に居座ってやろうとしたのに逆に居座られてるじゃないのよ。
大体、あんたが私を好きな気持ちより、私があんたを好きな方が重いのよ。
何でわからなかったのよ馬鹿!
「愛されてないかも、なんて私に対する侮辱よ」
今世では絶対試したりさせてやらないんだから!!
そんなに私を手に入れたいなら、今よりもっと落としてみなさいよ!!
「むしろ私に落とされなさい」
これから16歳までの6年で、私はジャスティンをミリオネアという底なし沼に沈めてやる。
何かが吹っ切れた私は、清々しくそう心に誓った。
ひゅうっと爽やかな風が、私の黒髪を優しく撫でたような気がするのはきっと、女神様が踊っているんだと思った。
お兄様は一旦言葉を切った。
どう言おうかと考えているのだろうか。
「無意識に…俺は何をしていた?」
ジャスティンがお兄様をじっと見つめる。
何故、魔法が簡単に破られるのか、その原因を追求したいのだろう。
「…殿下は、ミリオネアの心臓部に他の所よりも強く魔力を纏わせています。そのせいで、その他の箇所に綻びが出来ています」
「心臓…聖女殿の…そんなはずは…」
「…っ!!」
私はびくりとした。
心臓は、私が私に攻撃魔法を叩き込んだ所。
ジャスティンは無意識に私の心臓を守ろうとしたというの…?
記憶は無いはずなのに、魂が覚えているとでも言うの?
「殿下、致命傷を避けるために心臓を守るのはいいです。でも、ムラが出来ては意味がない。するなら全体を強固にして、さらに心臓部に多く魔力を注げるようにコントロールしなければならないのです」
「…わかった。ありがとう」
「いえ、ミリオネアを守りたい気持ちは伝わってきましたから、満足です」
「あ…うん…」
気不味そうに目を逸らすジャスティンに、私に何とも言えない感情が湧く。
罪悪感からなのか、純粋な好意なのかはわからないけれど。
ジャスティンもまた、未だに傷が癒えてないのかも知れない…例え覚えていなくとも。
「今日の訓練はここまでにしましょう。殿下はイメージをしっかり固めて、魔力のコントロールをより精密に出来るようにして下さい。ミリオネアは、魔力コントロールが良い感じにグッと来てるから、あともうちょっとばっと出せるように」
「ありがとうございました」
「ありがとうございます、お兄様」
ジャスティンへの説明のような説明を私にもしてくれないかしら。
相変わらず難解だわ。
グッと来てるからばっと出すの意味がわからない。
「お茶でも飲みましょう、殿下」
「あ、あぁ」
私はジャスティンを誘って、庭園のガゼボへ行った。
お茶が入るまでの間、私達はベンチに座ってゆっくりとしている。
ジャスティンはじっと庭園を見ていて、私はそれを観察していた。
「…やっぱりいいな、この庭園…」
ぽつりと呟くジャスティンが見ているのは、アーチになっている所で。
あの日アダム様が見ていた所と同じだった。
アダム様とジャスティンの横顔が重なる。
「………!」
私は気付いてしまった。
どうして宰相様から何の返事もないのか。
どうして探してもアダムと言う少年は見つからないのか。
「庭師に紹介しましょうか?」
わざと同じ質問をする私は意地が悪いのだろうか。
ジャスティンははっとした様子を見せたが、すぐに表情を戻して「そうだな、庭師の話を聞いてみたい」と笑った。
気付かないフリをしようかどうしようかと思いながら、ダリに庭師のジャンを呼んでもらうように伝える。
「お嬢様、ジャンが参りました」
「お、お嬢様…ワシは何か…」
不安げなジャンににこりと笑いかけ、声を掛ける。
「殿下がこの庭を気に入っていて、ジャンの話が聞きたいそうなの」
「は…こ、光栄な事です!!」
ジャンは青ざめているが、表情は誇らしげだ。
早速ジャスティンに紹介する。
「殿下、庭師のジャンです」
「あぁ、素晴らしい庭園だ。ぜひコンセプトや、こだわりの部分などがあれば聞きたい」
ジャスティンは表情筋があまり動いていないように見えるが、内心はかなりワクワクしているはずだ。
雰囲気でわかる。
「光栄です。まずこだわっている所は…」
ジャンが説明を始めて、ジャスティンは興味深そうに聞いていてたまに質問もしていた。
前から庭園好きだったのかしら?
散歩くらいしかした事なかったけれど。
「このアーチはお嬢様が好きな薔薇と緑のバランスを考えて、ここでゆっくり時間を過ごして欲しかったんです…」
「そうか、確かにあのアーチは俺も好きだ。何時間でも見ていられる」
「ありがとうございます。殿下にそう言って頂けるなんて、一生の誇りに出来ます」
「はは…そんな大層なもんじゃない」
私はジャンの気遣いを初めて聞いた。
そんな思いで庭園を作ってくれていたのね…!
ありがとう、ジャン。
「聖女殿、後でもう少し見て回っても良いか?」
「いいですよ、お付き合いします」
「ありがとう」
ジャスティンはゆったりとお茶を飲みながら庭園を眺める。
本当に庭園が好きなんだな、とじっと見てしまった。
私の誕生日パーティーに来ていたアダム様と、ジャスティンが同一人物だとわかった今は、アダム様の顔が私の好みなのも頷けた。
でも、わざわざ髪色と目の色まで変えてここに来たのは、何か理由があったんだろうか。
「聖女殿…」
「なんですか?」
「あの…穴が空きそうだ」
「え、あぁ、見つめてしまっていました。すみません」
「見惚れるのは良いんだが、もう少し隠れて見てくれ」
「もうバレちゃってるので、堂々と見ますわ」
私はニヤリと笑いながら、更にじっとジャスティンを正面から見ている。
ジャスティンはチラリとこちらを見てすぐに目を逸らすが、じわじわと頬が赤くなってくる。
私の悪戯心に火がつくのは仕方ないと思うの、そんなの見たら。
「あら、殿下。顔が赤いですわよ、熱ですか?」
「いや…熱はない…」
「じゃあ何です?」
「……何でもない……」
「えー?本当にぃ?」
「…くそ…意地が悪いぞ…」
「ふふふ…だって可愛いんですもの」
「可愛いって言うな…」
とうとうジャスティンはぷいとそっぽを向いてしまった。
これは、聞いてみても良いんだろうか。
ジャスティンがアダム様でしょって。
あのネックレスはどうしたのって。
「聖女殿、残念ながらもう時間が来てしまったようだ」
「え?あ…」
向こうからジャスティンの付き人が歩いて来るのが見える。
これからまた勉強か、訓練があるんでしょうね。
忙しい人…。
「楽しかった。訓練も課題が出来たし、的確なアドバイスも為になったよ」
「お兄様の説明はわかりにくいですけどね」
「あぁ…グッと来てるからばっと出すで君は不思議そうな顔をしてたな」
「あれの意味がわかりません…」
「くくっ…確かに…」
ジャスティンは笑いを堪えているようだが、堪えきれずに口元が笑っている。
でも、楽しい時間が過ごせて良かった。
付き人が到着したので、馬車まで見送りに行く。
「聖女殿、また来ても良いか?」
「どうぞ、次はあの難解語録を解読して下さいませ」
「ふっ…努力する。じゃあな」
「はい、お気を付けて」
ジャスティンを乗せた馬車はゆっくりと動き出す。
今世の彼はよく笑う。
何かのしがらみが解けたみたいに。
結局、アダム様の事も、ネックレスの事も聞けないままだった。
「…聞かない方が良いのかしらね…」
ジャスティンが隠しているなら、暴かない方が良いのかも知れない。
記憶はないはず。
けれど、私の心臓を無意識に守ろうとする彼をもう責める気はしない。
過去は今のジャスティンには関係がないのだ。
私が…私だけが抱えている事実で。
それだって、幻影だともう知っているのに、嫉妬の黒い靄の中から抜け出せないのも私だけで。
ごめんねとありがとうをこの先、機会があったら伝えよう。
ジャスティンには何の事かわからなくても良い。
彼の魂に聞かせたい。
「ちゃんと嫉妬したわよ、私…」
もう居ないジャスティンにそう聞かせれば良かった。
強がらずに、感情を伝えれば良かった。
他の女に触らないで、私だけを見てって。
これから先、私が恋をしたら今のこの気持ちを忘れずにいたい。
伝える事がどれだけ大切かって。
思うだけじゃ、すれ違うんだって。
あの時、勇気を出して彼に問い質していればきっと結末は違ったのだろう。
こうなってしまったのは、彼も私も相手の気持ちを聞かなかったからだ。
「今更、だけどね」
女神様は私にこの気持ちを教えたかったのかも知れないな。
ふわりと頬を撫でる風を感じて、そう思えた。
もう一度やり直す事を提案してくれたのは、あまりにも歪んでしまった二人を憐れんでくれたから。
幸せになって欲しかったから。
今現在、私と彼の間には恋も愛も生まれていない。
小さな、ほんの小さな芽が土の中に埋まっているだけ。
それが芽吹くかどうか…。
私は、ジャスティンを…。
「あー…もう…」
どうしていつもこうなるの。
何も変わってないじゃない。
うじうじ、だらだらと先延ばしにしてばかりで。
「女神様…完敗よ。やっぱりジャスティンには勝てないわ」
もう認めた方がすっきりするわね。
運命的な二人を結ぶ赤い糸が実は流した血の色だったとしても、その糸が赤に見えて実は真っ黒だったとしても。
手繰り寄せた糸の先に底なし沼が広がっていようとも。
「好きになるに決まってるじゃないの」
じゃなきゃ命を懸けてまで嫌がらせなんかしないわよ。
何なのよ、一生記憶に居座ってやろうとしたのに逆に居座られてるじゃないのよ。
大体、あんたが私を好きな気持ちより、私があんたを好きな方が重いのよ。
何でわからなかったのよ馬鹿!
「愛されてないかも、なんて私に対する侮辱よ」
今世では絶対試したりさせてやらないんだから!!
そんなに私を手に入れたいなら、今よりもっと落としてみなさいよ!!
「むしろ私に落とされなさい」
これから16歳までの6年で、私はジャスティンをミリオネアという底なし沼に沈めてやる。
何かが吹っ切れた私は、清々しくそう心に誓った。
ひゅうっと爽やかな風が、私の黒髪を優しく撫でたような気がするのはきっと、女神様が踊っているんだと思った。
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